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或る大阪近鉄バファローズファンの
偏愛と放浪の記録

「1922」(著:スティーヴン・キング/訳:横山 啓明・中川 聖)

2013-05-22 23:59:58 | 【日常】些事雑感
 「Full Dark, No Stars」という中編集から2作を収録したもの。残り2編は「ビッグ・ドライバー」という別冊で出ているらしい。

 「1922」はこれぞキングという印象を受けるホラーだった。妻殺しの描写と、ウィルフレッド(と息子ヘンリー)の底なし沼のような転落ぶりには圧倒される。実のところ、スプラッタ的な描写は私自身あんまり好みじゃないのだが、そういう好き嫌いとは全く別のところで「読ませる」力がものすごい。画を想起させる部分と、ウィルフレッドの精神がどんどん蝕まれていく様子が相乗効果を起こして、眼が釘づけになってしまう。
 「公正な取引」は作中に示唆がある通り、まさに「悪魔との取引」である。でも、主人公=悪魔(であるかもしれない何者か)と取引をした人間にとっての最高の状態でエンディングを迎えているというのが、ちょっと独特な雰囲気を残すところ。これを因果応報ととることもできるし、でももしトムがその後エルビッドに出会い、ストリーターと同じことを願うとしたらどうなるのか? と考えてみたりもできる。さらには、ストリーターに共感するのか反発を覚えるのか、そしてなぜ自分がそう思うのかを考えると……むしろ熟した毒があるのは、こちらの物語の方かもしれないなと思う。

 こうしてある意味対照的な2作を読むと、じゃあ「ビッグ・ドライバー」はどんななんだ、って気分にどうしてもなっちゃうなぁ。なので、折を見て読んでみようと思う。


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