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或る大阪近鉄バファローズファンの
偏愛と放浪の記録

「特捜部Q ―吊された少女―(上)(下)」(著:ユッシ・エーズラ・オールスン/訳:吉田 奈保子)

2020-02-24 20:37:22 | 【書物】1点集中型
 「知りすぎたマルコ」に続いてシリーズ6作目。今回はあまり間を空けずに読んでみた。

 とあるベテラン警官が、退官式で拳銃自殺。しかもなぜかQ(というかカール)をご指名で未解決事件の解明を託すような言葉を残して。その事件はと言えば、「吊るされた」ってそういう意味なのか! という、ショッキングな轢き逃げ事件。木の上までなんて、なんでそんな撥ね飛ばされちゃったんだ、という疑問へのヒントはなかなか出てこないまま、怪しげな〈センター〉の内幕と指導者の右腕たる女性の犯罪が展開していく。
 とはいえ、そんな不穏な中でもアサドの謎っぷりとローセの猛烈っぷりはいつも通り。それにハーディがますます捜査に意欲を出して、前作に続いて生き生きしてきてるのも読んでて楽しい。

 ただ、肝心の謎の解明は下巻に入ってもじわじわな進み具合で、いったいいつになったら〈センター〉の実権者たるピルヨにたどり着くのか、たどり着く前にまた次の殺人が起きようとしているのに! と、限りなくじりじりさせられる。
 かと思えばその一方ではカールの実家周りに不穏があったり、ヒプノセラピーで何故かあのローセの調子が狂ったり。そしてようやく〈センター〉までは到達するものの、カールとアサドに史上最大の危機が。終わってみれば生きていたのが不思議なくらいだが、文字通り自らの一部を犠牲にしてカールを護るアサドが鬼気迫る。「自分を救いたかった」とアサドは言ったけど、彼をそこまで駆り立てるものはいったい何なんだろうと思わされずにはいられない。おそらくそれが、彼の過去にかかわってくることなんだろうけれど。
 しかし話の肝は〈センター〉がああなってからで、じゃあいったいもともとの轢き逃げ事件の犯人は誰なのか? 最後の謎が残り10%くらいで怒涛のように明らかになっていく。近いけど遠かったその答えには、家族の間のすれ違いが最も忌まわしい悲劇を呼んでしまったというやるせなさが残された。そして結局は、誰もいなくなってしまった。カールと彼の家族の関係もこの先、どうなってしまうのだろう。メインキャラクターそれぞれの謎がいつか全部明かされるのを楽しみにしつつ、次回作へ。って、いつ読むことになるかわからないけど(笑)