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或る大阪近鉄バファローズファンの
偏愛と放浪の記録

「暗殺者の追跡(上)(下)」(著:マーク・グリーニー/訳:伏見 威蕃)

2021-10-10 23:18:23 | 【書物】1点集中型
 実はこっちを見落としてて先に次作に行ってしまった。なので慌てて借りてみた。

 任務中に別の作戦に巻き込まれたらしいジェントリー。盗んだアウディでのカーチェイス&銃撃戦はほとんど曲芸なんだが、盛り上がるなあ。そしてCIAの「資産」となるべく準備中のゾーヤのいる隠れ家が襲撃されて、ゾーヤはそのまま出奔。さらにまた別の筋では、別の筋では北朝鮮の細菌兵器研究者とロシアとの接触があり、得体の知れない人物が暗躍中。
 特にゾーヤの家族についてはそれなりに重い話のはずなのに、まず再会したジェントリーとゾーヤが思った以上にラブラブで、なんかニヤニヤしてしまう。いや、過去、他の案件でもちょっとした恋愛モードがなかったわけではないけど、今回はある意味ちゃんとイチャイチャしてるので。上巻終盤ではゾーヤがジェントリーに身の上話をしてくれるし。

 一方ではザックも、ちゃんと(スーザンをおちょくりながら)絡んでくる。当のスーザンは、なんでいつまでたってもそこまで「資産」を嫌悪できるのかねえ、とある意味呆れちゃうくらいなんだけど(笑)。まあどっちにしてもザックが出てきて面白くならないはずがないので(もちろん、グレイマンの活躍ありきでのプラスアルファの話)、何はともあれ下巻へ進むと、舞台はロンドンへ。
 マーズの策略はやっぱり単純ではなく、そこに最初に気づくのはこれまたやっぱりゾーヤ。それが父を思う娘だからなのか、これ以上ないほどに優秀な諜報員だからなのか。しかし下巻に入っちゃったらもう、ジャニス・ウォンの影がほとんどなくなっちゃって(笑)。もっとマッド・サイエンティストな感じをエスカレートさせてみてほしかったところもあるが。
 とはいえ今作のいちばんのポイントは人外魔境なハインズとジェントリーの肉弾戦であろう。やられっぱなしだったジェントリー、最終的には作戦勝ち。相手がこうならこう終わらせるしかないって感じだ。腕力で勝っちゃったら漫画になっちゃうもんなあ。

 結局、うまくいきそうだったジェントリーとゾーヤの関係にもまだ、簡単には突き崩せない障害が残った作戦にはなる。スーザンの悪意に気づいてジェントリーを守ろうとしたゾーヤなので、きっと時間が解決してくれることではあるんだろうけど、つかず離れず想い合う、というのが「ポイズン・アップル」の間はいいのかもしれないね。いやしかしジェントリーがこんなに一途だとはなあ、とページをめくるたびに認識を新たにしたものですよ、今回は。
 まあそれにしてもザックが出てくると本当に楽しくなる。ジェントリーが個人的に変えてあげるのはいいとして、公的には面白いのでずっと「ロマンティック」のままで嫌がらせをしたい(笑)。


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