今年のナツイチをチェックしてて気になったので借りてみた本。
恵まれた環境で育ち、優秀な成績で大学を卒業したその夏、青年クリスは周囲のすべてに訣別した。そしてひとりアメリカを横断し、カナダからアラスカの荒野に分け入り、やがて命を落とした。ただのアウトドア生活ではない、装備らしい装備も持たない中で、土地与えてくれるものだけで生きていくことを目指したのである。
彼は荒野に向かう旅の中で、それでも彼はまったく人間を拒絶していたわけではない。アレックスと名乗っていた当時のクリスと触れ合ったさまざまな人々の言葉から、単に「世捨て人」の一言では片付かない姿が浮かび上がる。多くの人々は彼に好感を持ち、クリス自身もそうした人々に折に触れて便りを出してもいて、その場限りではない交流もうかがえる。
自分だったら、最初の考えがどうであれそんな人々の中で居心地の良い場所を見つけたら、そこにそのまま留まりたくなるだろうと思うのだが、クリスはそうではなかった。文字通りすべてを捨てて荒野に向かった青年の心中を、完全に汲み取ることはできないし、ほとんど無謀な行動には違いないけれども、そんなこと本人は9割方承知だっただろう。自分の価値観を自分が本当に納得できる形で実現することを目指したというか……。
本来、それはある意味自分の可能性や限界を知ることにも繋がっていて、2カ月を過ぎた荒野での生活を経て、何かしら自分自身への確信のようなものが生まれたのではないかと感じられる。そうした時期に自然が彼の行く手を阻むことになった(結果的に)のは、皮肉と言えるかもしれない。また、彼を批判する側からしてみれば、事前にこの地域について学ぶなりせめて地図を備えておくなりしておけば回避できたことであった、という話にもなる。
通りかかるかもしれな人々に宛てたSOSのメッセージから受ける死への恐怖は幾分生々しい。ただ、彼の残したさまざまなメモや日記には後悔の言葉は見当たらないのが、彼の思いを象徴している気もする。
彼の行動を美化しようとは思わない。ただ、自分なら発想もしないこと、したとしても取り組もうとは思えないことを彼が実行したことは紛れもない事実である。
恵まれた環境で育ち、優秀な成績で大学を卒業したその夏、青年クリスは周囲のすべてに訣別した。そしてひとりアメリカを横断し、カナダからアラスカの荒野に分け入り、やがて命を落とした。ただのアウトドア生活ではない、装備らしい装備も持たない中で、土地与えてくれるものだけで生きていくことを目指したのである。
彼は荒野に向かう旅の中で、それでも彼はまったく人間を拒絶していたわけではない。アレックスと名乗っていた当時のクリスと触れ合ったさまざまな人々の言葉から、単に「世捨て人」の一言では片付かない姿が浮かび上がる。多くの人々は彼に好感を持ち、クリス自身もそうした人々に折に触れて便りを出してもいて、その場限りではない交流もうかがえる。
自分だったら、最初の考えがどうであれそんな人々の中で居心地の良い場所を見つけたら、そこにそのまま留まりたくなるだろうと思うのだが、クリスはそうではなかった。文字通りすべてを捨てて荒野に向かった青年の心中を、完全に汲み取ることはできないし、ほとんど無謀な行動には違いないけれども、そんなこと本人は9割方承知だっただろう。自分の価値観を自分が本当に納得できる形で実現することを目指したというか……。
本来、それはある意味自分の可能性や限界を知ることにも繋がっていて、2カ月を過ぎた荒野での生活を経て、何かしら自分自身への確信のようなものが生まれたのではないかと感じられる。そうした時期に自然が彼の行く手を阻むことになった(結果的に)のは、皮肉と言えるかもしれない。また、彼を批判する側からしてみれば、事前にこの地域について学ぶなりせめて地図を備えておくなりしておけば回避できたことであった、という話にもなる。
通りかかるかもしれな人々に宛てたSOSのメッセージから受ける死への恐怖は幾分生々しい。ただ、彼の残したさまざまなメモや日記には後悔の言葉は見当たらないのが、彼の思いを象徴している気もする。
彼の行動を美化しようとは思わない。ただ、自分なら発想もしないこと、したとしても取り組もうとは思えないことを彼が実行したことは紛れもない事実である。