当たり前のことだけど、水族館の展示内容は立地によってある程度推測できる部分もある。また、新えのすいのクラゲやアクアスのシロイルカ、旭山動物園(水族館ではないけど紹介されている。「哲学」ってことだろう)「行動展示」のように、メディアで多く取り上げられる特徴はなんとなく知っているものもあって、実際それを目当てに訪問することも当然、ある。
ただそういったものは部分的な話であって、その施設の魅力のうちのひとつでしかない。それ以外の部分でどういう考え方あるいは制約のもとに全体の展示構成がなされているか、ということはあまり深く考えたことはなかった。この本は、そういうことに気づかせてくれる1冊である。
自然の水中世界を上手に再現し、そこにある魅力を余すところなく表現する水槽を、水族館プロデューサーである著者は「水塊」と呼ぶ。この水塊を見ていて何が楽しいって、その生物に応じた環境がそこに再現されていること、自分の知らない生物世界を知ることができるという点。もうひとつ、クラゲの展示だとよくあるちょっと凝ったライティングなんかも楽しい。これはどっちかというとアクアリウムの世界かもしれないけど。
それはさておき、海獣ショーやタッチングプールに関しても単にそれぞれの言葉でひとくくりにはならなくて、実はその館の特性に基づいたものなんだなということも、こうして各館を並べてみるとよくわかる。今までなんとなく見てきたものも、こういうことを知ってからもう一度見てみると一層面白く感じられそうな気がしてきて、行ったことのない館はもちろん、行ったことのある館にもまた行って確かめたいなぁと思わされた。あとはやっぱり「逆境からの進化」を遂げた各館の話が面白い。端緒をどう逆手に取るか。もしくは、絶対に頑張るべきポイントはどこか。その創意工夫にはやはり拍手を贈りたくなるし、その魅力を実際に体験してみたいとも思う。
最後に著者は「展示することが大目的の動物園や水族館が行うべき調査と研究」を「生物の魅力を引き出し、人々に好奇心を起こさせる『展示』を開発するため」のものでなくてはならないと述べている。この本がフルカラー書き下ろしにもかかわらず文庫判という、読者にとって手軽なものであることも、その考えに通じているような気がする。
ただそういったものは部分的な話であって、その施設の魅力のうちのひとつでしかない。それ以外の部分でどういう考え方あるいは制約のもとに全体の展示構成がなされているか、ということはあまり深く考えたことはなかった。この本は、そういうことに気づかせてくれる1冊である。
自然の水中世界を上手に再現し、そこにある魅力を余すところなく表現する水槽を、水族館プロデューサーである著者は「水塊」と呼ぶ。この水塊を見ていて何が楽しいって、その生物に応じた環境がそこに再現されていること、自分の知らない生物世界を知ることができるという点。もうひとつ、クラゲの展示だとよくあるちょっと凝ったライティングなんかも楽しい。これはどっちかというとアクアリウムの世界かもしれないけど。
それはさておき、海獣ショーやタッチングプールに関しても単にそれぞれの言葉でひとくくりにはならなくて、実はその館の特性に基づいたものなんだなということも、こうして各館を並べてみるとよくわかる。今までなんとなく見てきたものも、こういうことを知ってからもう一度見てみると一層面白く感じられそうな気がしてきて、行ったことのない館はもちろん、行ったことのある館にもまた行って確かめたいなぁと思わされた。あとはやっぱり「逆境からの進化」を遂げた各館の話が面白い。端緒をどう逆手に取るか。もしくは、絶対に頑張るべきポイントはどこか。その創意工夫にはやはり拍手を贈りたくなるし、その魅力を実際に体験してみたいとも思う。
最後に著者は「展示することが大目的の動物園や水族館が行うべき調査と研究」を「生物の魅力を引き出し、人々に好奇心を起こさせる『展示』を開発するため」のものでなくてはならないと述べている。この本がフルカラー書き下ろしにもかかわらず文庫判という、読者にとって手軽なものであることも、その考えに通じているような気がする。