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或る大阪近鉄バファローズファンの
偏愛と放浪の記録

「マギの聖骨(上)(下)」(著:ジェームズ・ロリンズ/訳:桑田 健)

2017-07-30 21:31:56 | 【書物】1点集中型
 アメリカ国防総省にある、科学技術の訓練を受けた隊員から構成された、機密活動を行う軍事集団「シグマフォース」のシリーズ第1作。かなり前に、先に2作目「ナチの亡霊」を読んでいたのだった。良く行くの書店で新作が出るたびに面出しされてたり、端境期でもシリーズ全体が新館の棚に並べられていたりするという……(笑)。
 そんなわけで、次に何を読もうか迷ったときに、存在をなんとなく思い出したのでせっかくだからと一応1作目に手を出してみた。

 ドイツの聖堂での虐殺、盗まれた「骨」の秘密、そこに見え隠れするある組織。シグマフォースの面々はヴァチカンからの要請によって、イタリア国防省警察とともに虐殺をの犯人との手段となったものの正体を探ることになる。
 今回の、科学技術面でのキーになるのは当然この「マギの聖骨」なわけだけれども、タイトルがタイトルだけに聖書の内容にヒントが隠れていることも。他にもヴァチカンの在り方とか、キリスト教のことをよく知っていたら、ある程度推理なんかもできるのかもしれない。とはいえ、全然わからなくても全く問題なく読めるけど。

 しかし、のっけからいきなりグレイの家族の問題の話が出てきて面食らったが、人格の背景描写と捉えていいのかな。それとキャットがまだグレイとモンクに対してよそよそしいというか、あんまり近づいてない感じがするんだけど、これが2作目にしてだいぶ変化することを思い出すと不思議な感じ。まだ上巻だからか? 下巻ではまた雰囲気が変わるのかな? 上下巻ものはたいていそうだけど、上巻はまだ起承転結の「起」止まりな感じ。
 なので、下巻の追い上げがさてどうなるかと思いつつ進んでみると、さすがにここからは諸々の展開が待っていた。謎解きも謎解きでいろいろあるのだけれども、もともと真意が不明なセイチャンはともかく、あの人やあの人が! といういくつかの転回が起こる。そういう動きがあって、やっとスピード感が出てきたかなと。

 に、しても、グレイがレイチェルに気を散らす描写やあるいはその逆が多いので(笑)、そんなにちょいちょい盛り込まなくても良かったのになぁ。せっかくのアクションの雰囲気をぶった切るように小さいのをちまちま入れるより、ここぞのタイミングで大きめに入れてくれるだけでいいのに、と思いつつ読んでいたものだった。っていうか、シグマの隊長としてのグレイの芯がまだちょっと定まってない? なんとなく迷いや頼りなげなところが多かったような。わざとかな。「ナチの亡霊」ではそんなに気にならなかったような気がするんだが。
 あとどうしても引っかかったのが、「皇帝閣下」という表現かなー。表の職位がアレだったから? それがヒントだったということなのかな? まあ、どうでもいいといえばいいんだけど(笑)

 「ナチの亡霊」はあんまり細かい突っ込みどころとか気にしてなかったんだけど、今回はこんな感じでけっこう気になった。また3作目を読んだら違っているかもしれないので、読んでみたい気はしている。モンクとキャットがどうなるか、2作目で気になったまま終わってたし(笑)