life goes on slowly

或る大阪近鉄バファローズファンの
偏愛と放浪の記録

「死の鳥」(著:ハーラン・エリスン/訳:伊藤 典夫)

2021-11-24 22:39:55 | 【書物】1点集中型
 ケン・リュウ「もののあはれ」巻末広告から、エリスン初読。安定の伊藤氏訳。「北緯38度54分、西経77度0分13秒 ランゲルハンス島沖を漂流中」だの、「「悔い改めよ、ハーレクィン!」とチクタクマンはいった」だの、タイトルが面白いものが多かった。

 世界観が特に好きなのは「~ランゲルハンス島沖~」。映像化できちゃいそうな気もする。巻頭作はチクタクマンとかネーミングが子供向け漫画みたいなのに、話の中身はディストピア。ディストピアもの大好きなので、そういうアンバランスさはなかなか癖になるかも。同じくディストピア系といえば、「死の鳥」は一種円城塔的な文庫版編集泣かせだなあ、と思いながら人類と地球の終わりを見届ける。
 あと「竜討つものにまぼろしを」とか「おれには口がない、それでもおれは叫ぶ」「プリティ・マギー・マネーアイズ」などなど、本の中頃の作品群は、なんつーか、アメリカっぽい(独断と偏見)ちょっとわざとらしいくらいの下世話さというか露悪趣味というか。まあまあどぎついと言ってもいいのかもしれない。そういう雰囲気で言うと全体的な好き嫌いはまだ判断しにくいけど、見せてもらっている世界は面白かったと思う。「ヒトラーの描いた薔薇」や「愛なんてセックスの書き間違い 」なんてタイトルだけで引き込まれる作品がまだまだあるようなので、もうちょっと読んでみたい気もしないでもない。

「厭な小説」(著:京極 夏彦)

2021-11-02 22:05:20 | 【スポーツ】素人感覚
 「厭な物語」の解説から。いやーほんとに見事にどれもこれも「厭」だ。さすがは京極作品。
 SFやミステリに偏りがちな読書癖のせいで、ついつい謎解きを求めそうになって、いやこれはそういう話じゃないぞと踏みとどまった。この感じはホラー系っ実はてことでいいのかな。理不尽で非現実的で、しかしその不気味さは人が感じるリアルな不快と恐怖そのもの。グロテスクな生々しさ。その醜怪さは決して好みじゃないのにそれが何故か癖になって引き込まれていくのは、キング作品に近い。
 尋常の人間とは思えない子供、何者か知っていたつもりがそうでなかった老人、繰り返されるヴァレンタインデーの夜、などなど、どれもこれもが「厭」なのに抜け出せない、だからこそ「厭」になる無限ループ。最後はすべてがメタ小説に収束し(という展開は、登場人物から示唆されてもいるわけだが)、ループはブラックホールに飲み込まれる。

 そして巻末には「厭な解説(もっと厭な読書案内)」が。ほぼ、「厭な味わい」の小説の紹介であるが、肝心の京極作品を読んだあとだからまんまとここにあるもの全部読みたくなってしまう(笑)。「厭な物語」にも入っていた「くじ」も紹介されていたし、フレドリック・ブラウンもあるし、そういえばカフカもサキもラヴクラフトもちゃんと読んでないし、乱歩も実はドラマ観ただけで原作読んでないものばっかりだったし、夢野久作は読みたいリストに入れっぱだし、もうそれ以外にもあるわあるわ。どれもこれも読みたいけど、一気に何冊も続けて読むとやばい気がするので(笑)気長に何かしら読んでいこうかなと。