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偏愛と放浪の記録

「細木数子 魔女の履歴書」(著:溝口 敦)

2016-07-13 21:38:35 | 【日常】些事雑感
 本屋で面出ししてあるのをたまたま見かけた。細木数子という人や占いには特に興味はなかったけど、そういえばこの人いつの間にかいなくなってたのは何故? と、その点にちょっと興味を持ったので借りてみた。
 著者は裏社会、特に山口組周辺のドキュメントなどを数多く手掛けているジャーナリストだそうだ。そういう人が何故細木数子ネタなのかというと、それ自体は「週刊現代」編集部の連載企画に著者が乗ったというものである。当初は特に批判目的で始めたわけではなかったそうだが、連載開始前から既に暴力団の関与を匂わせる動きがあったらしい。かつ、連載開始後は細木が講談社に対して損害賠償訴訟を起こしたという経緯があったそうだ。

 本文に詳細に記されているが、細木自身が生来、裏社会との繋がりを持って生きてきている。戦前はまだ妻妾同居が珍しくなかったという話からして実感がなく、隔世の感も大きい。ポン引きから水商売、その自店絡みの売春などなど、延々とその手の商売を続けつつ、ほんの少しかじっただけの占星術にどんどん尾ひれをつけて、「六占星術」なるものを看板に据えた……という感じのようだ。ざっくり言うと。
 金の臭いのする人を嗅ぎつけて、とにかく利用しまくる。ヤクザの女におさまり、果ては自ら「女ヤクザ」のごとき振る舞い。そして「神水から墓石まで」という絵に描いたような霊感商法。TV出演から墓石ビジネスを含めた占い関係の収入まで年収ざっと24億円というから恐れ入る。そんな細木は著者曰く「時代の持つ貧しさと低俗性の象徴」であるが、これはまさに言い得て妙だろう。しかもそんな細木と裏社会の諸々の繋がりを承知していながら、祀り上げていたTV局もまた低俗の極みである。

 しかし世間は細木の番組を面白がって(信じているかどうかは全く別の問題として)観賞してもいたわけで、TV局も低俗なら、その仕掛けにしたり顔で乗ってみせる側もまた十分に低俗だ。細木数子という存在があまりにも大きすぎて目を眩ませられるが、そうした低俗さは誰の中にも存在する。細木のように表出するかどうかは別として。だから自制も自省も必要なのだ。
 ……って、そんな人生訓みたいな話をしている本ではないが。ただ「あとがき」にあったように、細木数子に「あまりに敵が多すぎ」、多くの関係者が著者へ取材協力を惜しまなかったことを考えると、やはり細木数子のような「魔女」の所業に対して、何かを感じておくべきだとは思うのだ。


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