life goes on slowly

或る大阪近鉄バファローズファンの
偏愛と放浪の記録

「琉球の風(一)(二)(三)」(著:陳 瞬臣)

2011-02-27 23:38:51 | 【書物】1点集中型
 陳舜臣氏初読み。沖縄行きの時期はなんとなく関連のものを読みたくなってくる、というわけでこれは島津の琉球侵攻前後の沖縄の姿を描いた物語。
 第1巻「怒涛の巻」はほんのプロローグという感じで、まさに琉球を呑み込まんとする時代の波が迫ってくるところが描かれている。大和と明、徳川と島津の思惑の間で、琉球がどう立ち回っていくのか……その物語の(だいたい)中心となる啓泰・啓山の兄弟が、各々どんな道を歩むことになるのかに注目していた。ただ琉球と明だけでもたくさん出てくる人物の相関と、それぞれの行動範囲を把握するのがちょっと大変かも(笑)。

 第2巻「疾風の巻」は、薩摩の琉球侵攻。武力では薩摩に敵わぬことを前提に、いかにして「琉球」を守るか。単に独立国としての体裁だけを指すのではなく、存在意義と琉球人としての誇りを守り抜くことに、さまざまな角度から挑んでいった人々の姿がある。戦を含めた外交上の駆け引きの中に、人間同士の信義の交わし合いも垣間見られる。
 琉球が生き残るためには、体面上江戸に屈せざるを得ない。けれど、それが決して真実ではないと後世に伝える人柱となって、謝名親方は斬られる道を選んだ。それが第3巻「雷雨の巻」。啓泰がついに母・真鶴と名乗りあい、そして別れる場面がちょっと沁みた。

「琉球人が、台湾へ、福建へ、いや天竺であろうと、南蛮であろうと、出て行けばよい。出て行ったところが難解の民の土地ではないか。そう思えばよい」
(琉球の風[三]雷雨の巻/「落日を浴びて」文中より)

 その謝汝烈の言葉が、「琉球人」が生き続けていくための本質を突いているのだろう。そして真鶴や啓山・羽儀が育てた芸能は、琉球ここにありと無言で語り続けている。

 人物を深く掘り下げていくというより、歴史の流れの中でそれぞれの「国」や「人の考えや行動」がどうぶつかり合い、方向づけられていくのかが語られている感じなので、「あれっ、そこそんなあっさりですか」という箇所もある(啓泰・啓山が父・楊邦義と再会するシーンとか)んだけど、今までほとんど意識したことのなかった明国と琉球の繋がりが見えてきて、沖縄の歴史を知る上で興味深かった。
 なので、沖縄が、琉球という国が本当はどこから来たのか、どういう歴史を経てきたのか、もっと知りたくなった。恥ずかしながら、奄美大島が現在、鹿児島県に属する理由もこの物語で初めて知ったようなものだし……

 それにしても茶屋四郎次郎、好きだなあ(笑)。山岡荘八氏の「徳川家康」でも好きなキャラ(って実在の人物なわけだが)だったんですが、この物語でも(作者は違うのに)いい味が出てます。そういう意味では、切れ者すぎる(切れ者すぎて最後は残念なことになった)本多正純も意外に好きだったりする。
 琉球方(と言っていいかどうかわからないけど)では何気に影佐が好きです。啓泰の生真面目さもいいですけどね(笑)。

本日の宜野湾 多分オール室内。

2011-02-14 15:46:51 | 【野球】オフにキャンプにOP戦
 夜に雨が降ったらしい。
 今は降ってないけど、降りそうだし、この時間でビニールシートかけっぱなので今日は中じゃないかと思われる。
 なので、ゆっくり荷造り。

 そういえば今朝、ホテルのレストランでごはん食べてたら古木がいた(笑)。←友人に言われるまで気がつきませんでしたが……。同じく格闘技系の方々ですか? という感じの人たちと一緒だった。
 で、とりあえず練習メニューだけもらっておこうと球場まで出かけたらまたまた古木が、なんの取材かわからんが、球場への道の途中でプレスに囲まれていた。このときは連れの方々はいなかったけど。
 結局この日は野手は9時に嘉手納へ出発していて、バッテリーが宜野湾室内で練習になっていた。嘉手納組の投手も宜野湾に来ていたらしい。

 そんなわけでもうほとんど選手の姿は見られないので、まあ昨日充実したしね! ってことで今日はあっさり宜野湾を発ちました。そんで、こぺんぎん食堂でお昼食べてラー油買って、あとはやちむん通りから国際通り、県庁前まで戻って空港へ。
 そしたら2次キャンプへ移動するらしい燕2軍(と広島?)の面々が空港のあちこちをうろうろしていました。誰が誰やらほとんどわかりませんでしたが(笑)。だってマスクしてる人多いんだもの……
 でも、目の前を通っていった古久保の親分だけは、多分見間違えてないと思う!(笑)←何故笑う??

晩ごはんは那覇で

2011-02-13 23:21:32 | 【旅】ぼちぼち放浪
 本当は、去年も寄った加藤食堂さんに行きたかったんだけど今回はタイミング悪く、電話したら予約でいっぱいだった。
 なので、急遽別の店を探すことになったものの、、気持ちが加藤食堂から離れなかったので(笑)洋食系で探して、結局那覇まで出てみた(だって宜野湾バイパス周辺て夜に食事できる店がほんと数えるほどしか見つけられないのですよ……特に、酒が飲めないと)。ちょうど、コミュニティバスの最終便があったのでそれに乗って。

 それで見つけたお店が、「ha-na」です。国際通りを、JALシティのあるあたりから1本向こうに渡ってちょっと降りたとこ(わかりにくい)。
 外人住宅ぽい建物をリノベーションしたような雰囲気のお店で、食事はイタリアン。温野菜をバルサミコ酢とオリーブオイルのドレッシング(多分ガーリックとかも入ってる)で和えたものと、締めに頼んだ生ハムとポルチーニとエリンギのリゾットが絶品だった!!
 リゾット以外はけっこういい量なので、本来は4人くらいでいただくのがちょうどいいかも。でもおいしかった! 居心地も悪くないし、お昼とか、暇つぶしにお茶しながら本読むのなんかいいなぁと思うお店でした。

宜野湾→浦添→北谷 キャンプ地巡りのバスがありがたし。

2011-02-13 23:14:06 | 【野球】オフにキャンプにOP戦
 朝は宜野湾でスタート。昨日と比べて風がほとんどなくなったので、それだけでずいぶんあったかくなった感じ。
 アップ終わって、今日は午前中ランダウンプレイ等々あったので投手陣のキャッチボールもメイングラウンドでやっていた。ので、やっと、省吾がボールを投げてるのを見られた……
 が、その後、スライディング練習チーム(昨日練習回ったのとほぼ同じ面子)に入ってたのに、1人だけやってなかった。何故?? キャッチボールはやってたし……下半身とか何かあるのか?

 ちなみにこのころにはだいぶ雲も晴れて、日射しがあったかくなってきてました。上着なくてもいい感じ。
 ……というところで、今日はとりあえずあとはシートバッティングだけ見れればいいかな~ということもあり、ちょっと抜け出して浦添に行ってきた。今年、試験運行? みたいに無料で各キャンプ地(と、那覇市内を結んで)を巡って走っているバスを使って。

 今日の燕は午後から練習試合の予定だったので、居残っているであろう主力組が見れるかな、という目論見で行った。
 ランチごろということもあって、あまりたくさんの選手は見れてないんだけど、ブルペンで由規と石川かつおが投げていた。由規は相川が受けていて、相変わらずストレートが浮き気味だった。(笑)
 ちなみにかつおは、受けてたのは選手ではなかったようなんだけど、何故か来ていたらしい若松さんが打席に立ってたよー!

 そんなこんなで、いいもの見たね~とか思いつつ、恒例のヤクルトラーメンを食して(笑)またまたキャンプ地巡りバスに乗り込みました。
 当初は、そのまま宜野湾に戻ればシートバッティングにちょうどいい時間なのでそうするつもりだったんだけど、よく考えたら6勤1休の竜が明日休みになるから、北谷に行くなら今日じゃん! ということに気づき、結局北谷に行ってみることにした。ちょっと、ナマ浅尾を見てみたかったので。(笑)

 で北谷に着いたら、まずサブで谷繁が守備練習(ノックだけど)やってたのでちらっと見て、スタンドに上がる途中の階段の踊り場的なところからもう1回眺めてみたら(上から見た方が見やすかったので)、なんか隣に見覚えのあるでかい男の人がいた。……国分寺のもつ鍋屋の店主だった……(笑)
 思わずじろじろ見つめそうになり、同行の友人と一緒にとても困ったのだが、ちょっとしたらワタリは先に降りてってくれたので助かった(笑)。←で、サブに行って谷繁見てた。
 わざわざキャンプにまで谷繁に会いに来てたのかー! 明日はゴルフかー! 最愛の人・木塚(って本人が「散歩の達人」の取材で言ってた)には会ってきたのかー! と、その背中にこっそり叫んでみたりした我々である。お店は休んで来たのか、弟さんに託してきたのか。余計なお世話ですけど。

 おかげさまで妙なテンションの上がり方をして(笑)、浅尾見たさに投手陣を探しに陸上競技場に向かったら、みんなユニフォーム着てないしハーフパンツだしサングラス多いしで誰が誰だかわからない。(笑)
 でもま、最終的になんとか浅尾を判別できて(笑)上がりの岩瀬がファンにひたすらサインしてあげる姿を見られて、とりあえず満足した。本当はピッチングしてるところが見たかったけど、メイングラウンドでは井端、荒木、森野あたりの打撃練習もちょこっと見れたし、まぁいいか。何故かベンちゃんの肉声(当然グラウンドにいる時なんだけど、なんか声が大きかった)も聞けたし。

 そしてこのあたりで北谷を引き揚げて宜野湾へ。着いた時にはもう15時だったんでシートは当然終わっていた。
 でもブルペンに人がいたので覗いてみたら、あれ? 省吾投げてるやんっ! というわけで少しだけど見てました。体は結局なんてもなさそう? わけわかんないけど(笑)とりあえず良かった。楽しそうに投げてたし。

 そのあとの個別練習、野手はメニューには載ってなかったんだけど、まず雄洋が現れた。
 昨日も今日もかー。がんばるねー! と思っていたら、続いて直人と藤田も登場。セカンド2ショート1で本格的にノックが始まりました。
 とにかく直人と藤田は賑やかで、明るく楽しく! な感じ。雄洋はそんな2人に比べたらちょっとおとなしかったかな。疲れも見えてたし。でも昨日今日と良く頑張ってたと思う。
 最後のノーミス30本がなかなか終わらなくて(笑)結局100本近くやってたんじゃないかと思うけど、なんとか終了したところでこちらも今日の練習見学は終了。

 ……で、とりあえず宿に戻ってきたら、なんか実は午前の練習中にも参加してたらしい(全然気づかなかった、っていうか異質な存在には気づいてたんだけど顔がわからなくてわからなかった)ジャ●ーズの某アイドルに出くわした。名前入りのユニフォーム着たまんま車に乗ってった。あんな小さい人だったんだ、へー。って感じだった。
 そういや昨日から日テレの車がいたところを見ると、どうも持ち番組のスポーツニュースか何かの企画らしい。ついでに言うと夕方、ホテルの庭に恐らく撮影用と思われる椅子が3つ4つ並べてあってスタッフとおぼしき人が何人かいたので、今日、まさに今ごろ? 生中継してるのかもしんない。
 でも実はこの辺、日テレ入らないんだよね……(笑)←ホテルでくれる番組表にもない

6年ぶり? 7年ぶり?

2011-02-12 23:22:49 | 【野球】オフにキャンプにOP戦
 ……に、山本省吾の姿を見れた!@宜野湾。
 とは言え、アップ中だけだからかなり遠目だけど。投手陣の午後メニュー、サブグラウンドで守備練習が入ってたんだけど場所変更になったのか全然見当たらなかったし……メイングラウンドで紅白戦見ながらずーっと様子伺ってたのに~。そもそも、何でか紅白戦出ないのに紅白戦出るチームに1人だけ混ざってたのが今日のわけわからなさの始まりだった。(笑)
 とりあえず練習の様子を見るのは明日仕切り直すとして、でも本当――に久々に姿を見られてほっとした。自分の都合で見てなかっただけとも言うが、そのツッコミはご容赦いただく方向で。(笑)

 そんなわけで今、日は必然的に野手&紅白戦をメインに観てたんだけど、こっちもとりあえず、いや何と言っても渡辺直人が無事に、元気でやってる姿を確認できたことが何より。初っぱなから空港に置いてきぼり食ったと聞いて、若干心配になったから(笑)。
 紅白戦ではセカンドに入ってました。同じチームで雄洋がショートに入ってたので、直人は藤田に競わせる形にして、雄洋をショート固定で使う方向になるのかな。
 バッティングは今日は目立った結果は出なかったけど、まぁ今はまだまだそこまで求められる時期でも立場でも(多分)ないように思うので、出すべき時に結果が出るようにちゃんと体を整えてくれたらいいかなと。表情は悪くなさそうだったし。
 なんつっても直人と言えば私は、勝ち試合のゲームセットの時のあの誰にも負けないくらい表情の豊かな笑顔がいちばん印象に残ってるのでね。「満面の笑み」ってまさにあれだなと思うなぁ。ああいう笑顔が、1回でも多く見られるといいなーと思う。

 そういや、雄洋は今日は紅白戦の後に特打やって(直人・将・下園が一緒。後から別口で稲田も来た。)、さらにその後1人特守を30分。何か取材も入ってたし、頑張ってたねぇ。捕れなかった時に1回、馬場さんにバットで小突かれてたけど(笑)。

 それにしても今日は寒かった!!
 風が強いのがしんどかった。お陰で、紅白戦座って観てるの4回までが限度でしたよ(笑)。前半は投手が若干ぐだぐだだったしねぇ。なのであとは部屋から見てしまった。
 上着は厚めのだからいいんだけど、下半身がやっぱりちょっと寒くなっちゃうんだよね、じっと座ってると。明日はもう少しましだといいなー。

本日の宜野湾 朝。

2011-02-12 09:31:09 | 【野球】オフにキャンプにOP戦
 窓、結露してますけど!
 風びゅーびゅーですけどー!(笑)
 何年ぶりかに微妙な天気の時期です。これが本来の姿かもだけど。

 ところでラグナの朝飯はうまいです。和食も洋食も。
 今日は洋食。ローストポークとパン(特にクロワッサン)がお気に入り。ヨーグルトにかけるフルーツソースがいっぱいあるのも嬉しい。スコーンも食べたかったけど、入らなかったので諦めた(笑)。いっそ昼飯もこれでいいのになぁ。

抱一を見る。「琳派芸術――光悦・宗達から江戸琳派」 第2部「転生する美の世界」@出光美術館。

2011-02-11 23:03:06 | 【旅】ぼちぼち放浪
 本日、毎年恒例の沖縄に到着したのだが。
 その前に行ってきましたよ、出光美術館! 幸運にも知り合いに招待券をいただいて。ありがたや。

 今回の企画展は抱一の生誕250年記念だそうな。光琳メインの1部も当然見たかったけど、抱一が大好きなので2部だけでもとても楽しみにしてた展覧会。とは言っても素人なので(笑)こないだ、別冊太陽で出ていたムック本を買って少しだけ事前学習しといてみた。これに載ってた作品もいろいろ出品されてました。もちろん載ってなかったものもありますが。
 それこそ抱一という人物について全く勉強してなかったので、あの徳川譜代・酒井雅楽頭家の人だったとは、このムック本を読むまで知らなかった……。意味もなくまた「徳川家康」by山岡壮八が読みたくなった。(笑)

 個人的に今回の抱一でいちばん印象に残ったのは「四季花鳥図屏風(裏・波涛図屏風)」かなー。内裏雛の後ろに置く屏風らしいので、言ってしまえばミニチュアサイズなんだけど、その小ささに細か――い描き込みでたくさんの花鳥があって、それがツボに入る。金地も鮮やかさが、花鳥豊かな色彩をより引き立てるみたい。それでいてその華やかな多彩さが、まん丸朝顔の群青で引きと締まる感じもまた好き。
 しかも、これは展示側の意図か偶然かわからないけど、この「四季花鳥図屏風」の前に立つと、後ろに「紅白梅図屏風」が見える配置になってるのである。この梅を銀地にシンプルに描いた図と、きらびやかな花鳥図とのコントラストがすごくいい。気に入っちゃいましたよー。

 それと、「燕子花図屏風」。これがまた味があって……。少し白を混ぜてちょっとしたポップさも見えるような「八ツ橋図屏風」とはまた違う、詫びさびの漂う風情が気に入って長いこと眺めてしまった。あと、燕子花そのものに動きが出てる感じがいい。
 これは前述のムック本に載ってた作品なんだけど、(これに限らず)本物の色はやっぱり違う~~~~。ムック本はいわゆる一般的な展覧会図録より綺麗に印刷されている気がするんだけど、それでもやっぱり違う。実物どっちかというとモノクロに近い感じだったし。

 其一はなんつっても「芒野図屏風」ですかね。個人的にですが。銀地に繰り返しのパターンのように描かれる芒の穂の波。靄のようなモノクロームの濃淡と極限まで抑えた色づかいに、マヂで痺れます。これ欲しい。←おい
 あと、「蔬菜群虫図」だっけ、胡瓜や茄子の実が……基本は写実なんだけど、造形は微妙にシュール。奇妙に規則正しいようなランダムなような実の大きさだったり、ちょっと変な方向に伸びてる茎だったり。なんかとても不思議な絵。
 其一の作品は、銀が思いっきり黒く変色してしまっているものが2点ほど目立っていて、これが変色する前だったら……と残念しきりでした。特に「秋草図屏風」ね……無理やり色を置き換えて想像したし。かなり無理があったけど(笑)。

 そういう意味では、2章の「薄明の世界」がいちばん楽しかったかな。あ、でも楽しいと言えば1章「琳派の系譜」にあった其一の「三十六歌仙図」も良かったと思いますが。ってこれは実はおそらく「大琳派展」で見た作品だと思うんだけど、見事に全員が描き分けられていて、ちょっとコミカルな表情の人も多くて、思わず引き込まれてしまう。
 ほかにも当然「風神雷神図屏風」だったり、言葉にできぬ感想はいろいろあるのだけれども(笑)とりあえずまた知らなかった抱一や其一を見ることができたので、よかったです。招待券あって本当に助かった(泣)。春には根津美術館で「KORIN展」と銘打った展覧会もあるみたいなので、やっぱ琳派好きとしては勉強しに行ってみたい。実は根津美術館、未だに行ったことなかったりするし……。←おいおい

 本当は「仏教伝来の道 平山郁夫と文化財保護」も見たかったんだけど、何せ時間がなかった。「大唐西域壁画」、見たかったんだけど。この時期は何気に見たいものが重なって困る……。今回も飛行機が取れたり取れなかったりってのがなかったら、来られなかったかも知れなかったし、去年のこの時期は長谷川等伯展があったのにやっぱり来られなかったんだった。

 それにしても、展覧会場を出て窓の外を見たら普通に雪が降っていたので、ちゃんと飛行機が飛ぶのかどうか一瞬焦った。千歳なら問題ない感じでも、除雪関係はわからないからなぁ。結果的にはちゃんと飛んでくれたので良かったけど。

「ロング・グッドバイ」(著:レイモンド・チャンドラー/訳:村上 春樹)

2011-02-06 23:07:39 | 【書物】1点集中型
 文庫が本屋で面出しされてたのを見て、そういえばチャンドラー読んだことないなーと思って借りてみた。そしたらハードカバーだった(笑)。580Pくらい。重っ。
 なので長かった。久々に本当に長い物語を読んだ気がする。というのもひとつひとつの段落が長いのと、字もそこそこ小さかったからかと思うのですが。おかげで貸し出し延長かけました。(笑)

 アイリーンとテリー、そしてマーロウの心情の移ろいには寂寥感というか名残惜しさも感じる。失ってしまったもの(確かに交わし合った愛情であったり、通い合っていた友情のようなものであったり)を取り戻そうとはもう思わない。ただ少しだけ後ろ髪を引かれる、そんな雰囲気が、乾いたハードボイルド。
 私はたとえば高村薫作品のように、どんどんどんどん人の内面を掘り進んでいくタイプの、ある意味ちょっと湿った感じのハードボイルド(と私は勝手に思っている)のを好む傾向にあると自分では思ってるんだけど、この感じも面白い。

 村上氏のあとがきに非常にたくさんのことが書いてあって勉強させてもらった気持ちなんだけど、台詞も含めて、淡々と事象だけを積み重ねていって、それだけで人物とその人々が絡み合う事件を余すところなく語りきるというのは、なかなかできることじゃないと思う。
 つまりそれは、作中に語られる事象のひとつひとつが、確かにマーロウという個人のフィルタを通して見えるものではあるのだけれど、でも決してそれ以上のものとしては描かれていないということ。そこにマーロウの主観はあっても、感情はほとんどない。けど、明らかな感情の描写がなくても、人の心の機微をこんなにも豊かに描き出せるものなんだなぁという感じ。この雰囲気が多くの人を虜にするチャンドラー作品の魅力なのかなと、なんとなく思った。

「もうからっぽだ。かつては何かがあったんだよ、ここに。ずっと昔、ここには何かがちゃんとあったのさ、マーロウ。わかったよ、もう消えるとしよう」
(「ロング・グッドバイ」本文より)

 テリーはからっぽの自分を抱えて、アイリーンが死した後も生きていく。その先に何があるのかは、もうマーロウの関知するところではないのだろう。ギムレットを口にすることは、そのあとのマーロウにあったのだろうか。

「スタンド・バイ・ミー 恐怖の四季 秋冬編」(著:スティーヴン・キング/訳:山田 順子)

2011-02-01 22:59:24 | 【書物】1点集中型
 何気にキング初読み。そして映画も見たことがないので、どんな話なのかも全く知らない状態。「キングと言えばホラーのイメージだけど、青春ものなのか? でも『恐怖の四季』だったり死体探しってところがミソだなぁ」というわけで読み始めてみる。
 っていうか原題が「The Body」ですか。そのまんま過ぎて怖い。

 どこにでもいそうな、男の子よりは少年と呼ばれるくらいの年齢の4人組が、線路で死んだという、自分たちと同じくらいの歳の少年の死体を探しにひたすら歩く。ピクニックというかハイキングというかトレッキングというか、その道のりがとても長くて、だんだん「一体いつになったら目的地にたどり着くんだ?」という感じになってきてたんだけど(笑)主人公・ゴーディが雌鹿に出くわしたあたりから面白くなってきた。
 それ自体はゴーディ自身が言うように、「取るに足りないつまらないことだったような」出会いかもしれないけど、「すがすがしい」という意味もまたわかるような気がする。日常を抜け出したなかで出会った1つのシーンは、日常でないというただそれだけの状況の違いのために、心の隅に引っかかったりするものだと思う。

 現実にレイ・ブラワー少年の死体を目の当たりにしたことで、ゴーディは「死とはなにか」をあっという間に理解した。そしてクリスも。
 ゴーディの素質に誰よりも惚れこんで、それを守りたい気持ちをあらわにしていたクリスは、少年たちの中でやっぱりいちばん大人びていた。エースに銃を向けてから、そしてことが終わった後、クリスを見送るゴーディの独白に、少年時代の自分の何かが終わろうとしているのを感じているのが見て取れた。鹿に感じたすがすがしさを、一抹の寂寥とともに、ゴーディはクリスの背中に感じたということなんだろう。

「なににもまして重要だということは、口に出して言うのがきわめてむずかしい。なぜならば、ことばがたいせつなものを縮小してしまうからだ。おのれの人生の中のよりよきものを、他人にたいせつにしてもらうのは、むずかしい。」
「なににもまして重要なことは、なににもまして口に出して言いがたいものだ。」

 ……というくだりはちょっと、ぐっと来た(結局双方同じことを言っているんだけれども)。このストーリーを目で追いつつ幼い日々を追体験している中で、ふっと読者をいまの己に立ち返らせる言葉だと思う。
 トレッスルはなくなっても、川は流れている。
 誰かが死んでしまっても、その誰かを覚えているべつの誰かが生きている。

 「死体探し」という話がそもそも、青春や成長の物語にはそぐわないような題材に一見思えたけど、終わってみれば、それだからこその物語にちゃんとなっているのが面白いところかも。ホラーじゃないけど、ホラーを書いてる作家だからこその物語というか。って、それはまずキングのホラーを読んでから言えって話なんだけど。
 そういえば、訳者解説に映画の話が少し出てきてたけど、クリス少年=リヴァー・フェニックス! ハマり役だなぁ~~。なんかそれだけで見たくなった(笑)。

 で、もう1編収録されている「マンハッタンの奇譚クラブ」ですが、ホラー的な要素はこっちの方が強い感じ。とは言え、物語そのものがホラーなのではなく、主人公アドリーの参加する奇譚クラブ(と言っても名前はない)で語られるメインの物語が若干ホラー。いや若干と言うか、事故→お産の描写がリアルすぎてまるでホラー。キングのホラーの書き方をなんとなくイメージできた気がする流れだったりする。
 でもこのクラブを取り仕切る(というか事務員というか執事というか)謎の男・スティーブンズがとてもいい味を出していて、なんとなく、ドラマ「ギルティ」に出ていた水上剣星(の役回りとイメージ)を思い出しちゃった。(笑)
 あとこれは余談だけど、アドリーの奥さんが愛読している「長いお別れ」(厳密に言うと村上春樹訳「ロング・グッドバイ」だけど)を今ちょうど並行して読んでいるところなので、奥さんが冒頭のテリーの容姿に関する描写をアドリーに読んで聞かせるところを見て「おお。こんなところにもチャンドラー」とか思いました。

 どちらの物語も、ちょっと怖い場面がありつつ、しかし読後感はけっこう気持ちよかった。さっぱり? 清々しさ? それにほんの少しの乾いた空気感。その空気の中で遠くを見晴るかす、なんとなくそんな感じ。
 とりあえずそのうち、「春夏編」である「ゴールデンボーイ」も読んでみよう。