どっかの新聞広告で目にして、ちょっと興味を惹かれて借りてみた。
物語は、24世紀からタイムトラベルしてきたアンドロイドたちが「9.11」直前の2001年に降り立ち、同時多発テロを阻止して「歴史を改変した」ことを宣言する――というところから始まる。ちょこちょこと量子論など聞きかじるに及び、タイムトラベルやパラレルワールドものが意外に非現実的ではない気が(個人的に)してくる昨今、そういう世界をストレートに描いている物語なので、設定や流れには妙に納得しながら読んだ。
なにしろ、「君」に向けて物語を綴っていく主人公「僕」は、作者自身である(という設定)だけでなく、周りに登場する人物がほぼことごとく実在の人物だったりする。未来、つまり2002年以降の「僕(=作者)」が未来で書いた(書くことになっている……というか、2011年現在では当然すでに発表済みの作品ばかりなわけだが)作品群についての話題だったり、「と学会」や「SNE」の話だったり、同業者さんたちの話であったり。
私自身は山本氏の作品はこれが初読なので、わかるようでわからない箇所もあるんだけど、実際そんなに業界を深く知らなくても読めるようにはなっている。多分。
山本氏も当然、内輪ネタを書くためにこの作品を書いたわけではないはずで、作中で動いているのが実在の人物や団体であり、「未来に起こった」出来事として、誰もが知っているネタがいくつも出てくるからこそ、歴史が改変されていく過程のリアリティを生んでいるような気がする。
それと、タイムトラベルしているのが人間ではなくアンドロイドだという点。アンドロイドと人間の「感情」の決定的な違い、究極のところでは互いに理解できないところは必ずある、という点がうまく利いていると思う。だからこそ、アンドロイドたちはこれからも歴史改変をやめることはないのであろうし。全く悪気はないままに。
もしかすると、タイムトラベルの長所短所をごくごく当たり前に描いた物語なのかもしれない。そして、現代のヒトをあらゆる点で上回る能力を持った慈悲深き存在が、人間たちのために良かれと思って行う慈愛に満ちた行為は、実は幸せだけをもたらすものではないということ。であれば、人間はやはり自らの意思で自ら選択した道を進むしかないのではないかと、SFの世界を借りてそう言っている物語であるようにも見える。
ノリはライトノベルっぽいなと思ったけど、作中で作者が自身を「ハードSF寄り」と言っていた意味はなんとなくわかった。反重力の話とか、最後の戦闘シーンとか。でも、エピローグの2人のノリはやっぱりライトノベルかも。(笑)
物語は、24世紀からタイムトラベルしてきたアンドロイドたちが「9.11」直前の2001年に降り立ち、同時多発テロを阻止して「歴史を改変した」ことを宣言する――というところから始まる。ちょこちょこと量子論など聞きかじるに及び、タイムトラベルやパラレルワールドものが意外に非現実的ではない気が(個人的に)してくる昨今、そういう世界をストレートに描いている物語なので、設定や流れには妙に納得しながら読んだ。
なにしろ、「君」に向けて物語を綴っていく主人公「僕」は、作者自身である(という設定)だけでなく、周りに登場する人物がほぼことごとく実在の人物だったりする。未来、つまり2002年以降の「僕(=作者)」が未来で書いた(書くことになっている……というか、2011年現在では当然すでに発表済みの作品ばかりなわけだが)作品群についての話題だったり、「と学会」や「SNE」の話だったり、同業者さんたちの話であったり。
私自身は山本氏の作品はこれが初読なので、わかるようでわからない箇所もあるんだけど、実際そんなに業界を深く知らなくても読めるようにはなっている。多分。
山本氏も当然、内輪ネタを書くためにこの作品を書いたわけではないはずで、作中で動いているのが実在の人物や団体であり、「未来に起こった」出来事として、誰もが知っているネタがいくつも出てくるからこそ、歴史が改変されていく過程のリアリティを生んでいるような気がする。
それと、タイムトラベルしているのが人間ではなくアンドロイドだという点。アンドロイドと人間の「感情」の決定的な違い、究極のところでは互いに理解できないところは必ずある、という点がうまく利いていると思う。だからこそ、アンドロイドたちはこれからも歴史改変をやめることはないのであろうし。全く悪気はないままに。
もしかすると、タイムトラベルの長所短所をごくごく当たり前に描いた物語なのかもしれない。そして、現代のヒトをあらゆる点で上回る能力を持った慈悲深き存在が、人間たちのために良かれと思って行う慈愛に満ちた行為は、実は幸せだけをもたらすものではないということ。であれば、人間はやはり自らの意思で自ら選択した道を進むしかないのではないかと、SFの世界を借りてそう言っている物語であるようにも見える。
ノリはライトノベルっぽいなと思ったけど、作中で作者が自身を「ハードSF寄り」と言っていた意味はなんとなくわかった。反重力の話とか、最後の戦闘シーンとか。でも、エピローグの2人のノリはやっぱりライトノベルかも。(笑)