life goes on slowly

或る大阪近鉄バファローズファンの
偏愛と放浪の記録

「そこらじゅうにて 日本どこでも紀行」(著:宮田 珠己)

2019-12-29 17:02:59 | 【書物】1点集中型
 「日本全国もっと津々うりゃうりゃ」が文庫になってタイトルが変わったそうな。表紙のイラストもタマキングではない(でもかわいい)。
 実はWEB連載も単行本も読んでいるのだが、読むそばからあっさり中身を忘れていくので(笑)文庫になったらなったでやっぱり読んでしまうのが、私にとってのタマキング本である。で、読み始めると「そうそうここが面白かったんだよね」と思い出してもう一度面白がるのである。今作で言うと奄美大島男3人シュノーケル紀行。こんな仕事してるのに誰もまともに飛行機(国内線)に乗れないって面白すぎるだろう。でシュノーケル面白いからって何も紛争地域でやらんくてもいいだろう高野さん、っていうやっぱり同じ感想(笑)。ていうか高野さんは結局、本当にそれ、やったのかなぁ。そこだけは知りたいが。
 あと、タマキングの石好きが高じてついに本まで出しちゃったあとで読んでみると、岩の話なんか別の味が出てくるような気はしたな。それと巻末のグレゴリ青山氏の評(解説)も、「そうそう! まさにそれが言いたいんだよタマキングのイラストって!」と常日頃思うところと全く同じ話で、大いに楽しめた。やっぱりそう思うよね! 熊谷守一ってほんと秀逸な譬えだ。前にも言ったと思うけど、イラスト&漫画でも本出してほしいよ……「ソラdeブラーン」の漫画も。

 実は1点、面白話とは別に教訓があったのだが。「有名な観光スポットに行くと、(中略)現地ではその事前知識を確認しにいくだけの旅になってしまうジレンマがある。(中略)見るべきポイントを押さえようと思って見物するから面白くない」というのがそれである。私自身、まさにこれをやりがちなのであった。なんつーか、言ってしまえば攻略本をなぞってRPGやるみたいなもんかもしれない。
 だからあんまりガイドブックばっかり見ててもダメだなあと思わされたのだが、とはいえ情報なしで旅行に行くのも正直、なかなか度胸がいる(私にとってはだけど)。これぞジレンマだな(笑)。とりあえずは、もうちょっと何もない街歩きをしてみるところから始めてみようかな。

「特捜部Q ―知りすぎたマルコ―(上)(下)」(著:ユッシ・エーズラ・オールスン/訳:吉田 薫)

2019-12-25 23:22:44 | 【書物】1点集中型
 オールスン「特捜部Q」の5作目。舞台はいきなりカメルーンから始まり、そこに現地を支援しているらしいデンマーク政府機関が絡んで何か政治的な不正を臭わせつつも、今度はコペンハーゲン周辺で少年マルコをはじめとしたロマの子供たちが、組織犯罪の末端として使われている様子に場面が移る。この2つがどう繋がってどこでにQの介入に結びつくのかなと期待しつつ、マルコの壮絶な逃亡劇に一気に引き込まれる。
 で、ようやっといつものQの面々が登場したかと思うと、カールの仕事上の理解者ともいえるヤコプスン課長は引退するというし、あんなに順風満帆に見えたカールとモーナがなんと……(笑)。いや笑っちゃカールに悪いんだけど、モーデンとミカが怒涛の勢いでゴールイン(古)しちゃったので余計カールが不憫になる(笑)←でもやっぱり笑っちゃう。そこがQ。あと、ローセはそれでいいんかい、というあれですね(笑)。今回は何だかQに笑わせてもらう度合いがこれまでにも増して高い気がする。事件がハードなのとは裏腹に過ぎるが、これが楽しい。だからこのシリーズ読んでるんだけど。

 せっかく苦界からまさに一命を賭して脱出したマルコだけど、追われる身なのは変わらない。せっかく見つけた安らぐ場も最悪な形で奪われてしまう。とても賢くて将来にも希望を持ちたいと思っている少年だけに痛々しい。上巻の終わり近くでマルコの叔父ゾーラの組織の活動とQの捜査案件がやっとリンクしてきたので、絶体絶命の危機迫るマルコに早くカールがたどり着いてくれるように祈りつつ下巻へ突入すると、自分も命を狙われるマルコが、それでもQの面々になんとか事件のヒントを伝えようと奔走している。
 文字通りの孤立無援の中で、機智を働かせてついにマークと出会ってからは解決に向かって一直線。そのあとはそこまで意外性のある展開ではなかったように思うので、予定調和的な感じはしなくもないんだけど、逃げおおせたレニにもちゃんといい決着つけてくれた。愛ゆえのスタークの罪に対するQの判断の是非は人によるとは思う。が、翻って見るとこの物語は、マルコとその仲間たち、あるいはまたティルデのような、困難の中にある少年少女たちへ贈る希望の物語でもあったのかもしれない。

 そして希望と言えばハーディも。ミカの存在があるとはいえ、なんかいきなりとんとん拍子に回復しているようなのが今までの感じからするとちょっと急転回な気もするんだけど。でもこれとともに、そのもとにある事件の真相解明がまた進み出すのだろうか、とか思うとやっぱりシリーズのこの先が気になる。ので、いずれまた読みます。