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或る大阪近鉄バファローズファンの
偏愛と放浪の記録

「特捜部Q ―カルテ番号64―(上)(下)」(著:ユッシ・エーズラ・オールスン/訳:吉田 薫)

2019-02-24 18:31:02 | 【書物】1点集中型
 「グレイマン」シリーズの新作を順番待ちしている間に(笑)久々に特捜部Qシリーズに行ってみた。なんだかまた暗い過去の持ち主が事件の中心らしいぞ、という幕開け。同シリーズの「キジ殺し」をちょっと思い出しちゃいましたねー。

 QはQで、アサドは相変わらず得体が知れず、ローセはローセでユアサとのもう1つの関係が明らかになり、ちびちびと謎が明かされていく感じかな。ローセはともかく、アサドはどうも楽しいだけの話というわけではなさそうだけど。
 そしてそういえばモーナといい感じになっていたんだったな、カール、と思ったけど、Qのマネジメント同様に一筋縄ではいかないイプスン家だった(笑)という。ハーディとの関係は今は悪くはないけど、ハーディを今の状態にしてしまったあの事件に何かが潜んでいそうなところが見えてきてしまった……。でもきっとこの話の間には片づかないんだろうな、というわけで下巻へ行ってみる。

 結局、やっぱりニーデの人生はまるで堂々巡りで、救いがない。だからこそこういう計画が生まれたとも言える。一つ一つステップを踏みつつも、少しずつ計算が狂っていく。でもニーデの経験の過酷さをずっと読まされてきているから、ニーデの復讐に肩入れする気持ちも起こってしまう。
 でも幕引きはあまりにもあっけなく、しかし23年の時をひっくり返す事実とともにすべてを葬り去った。ハンストホルム夫妻にもう一度会うことができていたら、おそらくニーデの人生は違っていたものになっただろうに。ただ救いがないからこそ、この物語の土台のひとつであるデンマークの暗い歴史を人が知り、考えるきっかけにもなるのかもしれない。
 それにしても、スプロー島の収容所も優生法みたいな法律も、それほどに多くの国で当たり前に存在していたのだと思うと、人間の根本に潜む救いようのなさが浮き彫りになる。

 カールもほとんど死ぬ目に遭いかけたが、アサドも文字通り体を張って頑張った。アサドは移民としていろいろ辛い思いもしてきているのだろうなという影も、また見えた。ローセも、革装のシェイクスピア全集を抱えて(笑)奔走した。Qの面々がそれぞれに命懸けで、カールにとってもより大事な存在になっている。加えてマーク家も雨降って地固まるというか、ミカの登場にもちょっと癒された(笑)。で、カールとヴィガとの離婚は成立したようだけど、イェスパは結局どうするんだ?