なんとなく本屋で見かけて、和田誠氏の表紙デザインと妖しげ、もとい怪しげなタイトルのギャップにそそられてひっくり返し、裏表紙の粗筋を読んで「じゃあ読もう」となった。
主人公マラカイ、のちにアンク、さらに「宇宙のさすらいびと」、最後にもう一度マラカイを追い立てる運命は、ある意味とても大真面目なドタバタ劇、哀愁風味。
億万長者から瞬く間に絵に描いたような転落を経験し、記憶を奪われ火星で軍隊に。妻はおろか何故か子供までできてしまっていたり、水星に行く羽目になったり、挙句の果てには地球に戻ったかと思えば今度はタイタンへ。
そして、マラカイの運命を思いのままに操っているかに見えるラムファードも、しかし実はさらに上の存在の支配下にあったという種明かし。に、ちょっと効かせたスパイスがストーンヘンジや万里の長城の由来だったり。で、結局マラカイの記憶に残っていた「タイタンの妖女」ってのの意味はなんだったんだ? とすら思わせるこの手のわけわからなさには、なんだかつい村上春樹を(全然ちゃんと読んでいないにも関わらず)まるで馬鹿の一つ覚えのように連想してしまう(笑)。
でも、最後にビアトリスとマラカイがそれぞれに行きついた発見、ラムファードが「故郷の地球のために」尽くした「最善」。全部、結局は同じものだったような気がする。
「だれにとってもいちばん不幸なことがあるとしたらそれはだれにもなにごとにも利用されないことである」と言ったビアトリス。
「人生の目的は、どこのだれがそれを操っているにしろ、手近にいて愛されるのを待っているだれかを愛することだ」と言ったマラカイ。
舞台装置はSFで彩られてはいるけれど、最終的には心と心の通い合いが(それが人間であろうと、人間ならざるものであろうと)、ほどよい距離感と温度で描かれていることがわかった……ようにも思える。この最後の余韻を味わいたいがために読み返したいと思える物語。
それにしても、ああ、サロがいじらしい……ハルと同じくらい(笑)いじらしい。浅倉氏の訳の雰囲気も好きだな。
主人公マラカイ、のちにアンク、さらに「宇宙のさすらいびと」、最後にもう一度マラカイを追い立てる運命は、ある意味とても大真面目なドタバタ劇、哀愁風味。
億万長者から瞬く間に絵に描いたような転落を経験し、記憶を奪われ火星で軍隊に。妻はおろか何故か子供までできてしまっていたり、水星に行く羽目になったり、挙句の果てには地球に戻ったかと思えば今度はタイタンへ。
そして、マラカイの運命を思いのままに操っているかに見えるラムファードも、しかし実はさらに上の存在の支配下にあったという種明かし。に、ちょっと効かせたスパイスがストーンヘンジや万里の長城の由来だったり。で、結局マラカイの記憶に残っていた「タイタンの妖女」ってのの意味はなんだったんだ? とすら思わせるこの手のわけわからなさには、なんだかつい村上春樹を(全然ちゃんと読んでいないにも関わらず)まるで馬鹿の一つ覚えのように連想してしまう(笑)。
でも、最後にビアトリスとマラカイがそれぞれに行きついた発見、ラムファードが「故郷の地球のために」尽くした「最善」。全部、結局は同じものだったような気がする。
「だれにとってもいちばん不幸なことがあるとしたらそれはだれにもなにごとにも利用されないことである」と言ったビアトリス。
「人生の目的は、どこのだれがそれを操っているにしろ、手近にいて愛されるのを待っているだれかを愛することだ」と言ったマラカイ。
舞台装置はSFで彩られてはいるけれど、最終的には心と心の通い合いが(それが人間であろうと、人間ならざるものであろうと)、ほどよい距離感と温度で描かれていることがわかった……ようにも思える。この最後の余韻を味わいたいがために読み返したいと思える物語。
それにしても、ああ、サロがいじらしい……ハルと同じくらい(笑)いじらしい。浅倉氏の訳の雰囲気も好きだな。