今さら感満載ですが、ジェフリー・アーチャーは初めて読みました。原題は「A Prisoner of Birth」だそうですが……わからない。(笑)
まあそれは措いといて(本当は措いといたら良くない気がしますが)、解説でも書かれてある通り、内容としてはまさしく現代の「モンテ・クリスト伯」、これも私自身はとても好きな物語です。死人になりすますという脱獄の仕方も似てる。というか、脱獄ってこれがいちばん確実な(と言うのも妙ですが)方法なのかと錯覚するぐらい。
ただ主人公ダニーの復讐の結末は、モンテ・クリスト伯ことエドモンのそれとはちょっとだけ違いました。でも、めでたしめでたしなのは一緒。あ、死人になりすますのもそういえばエドモンとは逆の意味でだったか……
主人公の自動車修理工ダニーが、無実の殺人罪(しかも自分の親友であり、婚約者ベスの兄でもあるバーニーを殺害したという罪)で22年の懲役を科せられたのが、物語の始まり。自暴自棄になりそうだったダニーが、獄中で得難い友であり仲間を得て、自分を陥れた4人の社会的エリートたちに、相応の報いを与えるべく邁進する姿は爽快そのものです。
ダニーの聡明な資質を見抜き、獄にあって出所後の学位取得が可能となるまでに充分な教育を施したニックをはじめ、最後は頼もしい相棒となったビッグ・アル、ダニーの無実を最初から最後まで信じ抜いた婚約者ベスと弁護士レドメイン父子などなど、脇を固めるキャラクターたちも魅力的。中でも、ダニーを初めにニックとビッグ・アルとの同房に入れることを決めたジェンキンズ看守長は、ダニーがことを成し遂げるにあたっての最高の功労者じゃないかと、個人的には思っています(笑)。
物語の前半でも、一度再審のチャンスがあったのがフイになったり、そのためダニーがベスと娘の幸せを想って別れを告げたり、ニックの財産をダニーがニックとして合法的に獲得するための、ニックの叔父ヒューゴーとの戦いなど、エピソードは色々あります。が、読む方にエンジンがかかってきたたのはやっぱり後半の、真犯人たちを追い詰めていく鮮やかな手際が見せられていくあたりからでしたね。
盛り上がりが最高潮に達するのは第5部「救済」、ギリギリのところで仇敵たちにカウンターパンチを食らって逆に逮捕され、他人になりすまして脱獄した罪に問われた絶体絶命のダニー。その窮地を最も効果的に救う手立てになったのが、亡きニックの遺言であったところが心憎いです。あまりにも周到だったニックの手際には惚れ惚れします(笑)。
この、物語最後にして最大の見せ場である法廷での、レドメイン父子と証人たちや判事、検察側との丁々発止のやり取りも非常に小気味良いテンポで進んでいきます。
そして、ダニーの殺人罪が誤審の結果であったことが白日の下に晒されたあとの最終章では、ダニーが行ったとされていたバーニー殺害について、ダニーを陥れようとしていた真犯人たち(1人が死んで残り3人)を被告とした再審が行われます。
それでも、3人のうち2人はここでも無実を主張し、また無実を勝ち取れることを確信していました。が、最後の1人ダヴェンポートが最後に決定的な一言を述べたことで、ダニーの「復讐」は本当の意味で幕を下ろします。
彼は主犯ではなかったにしろ、罪を負っていたことは間違いなかったわけで、最終的にダヴェンポートはこの一言で自身の、人間として守るべき「誇り」を取り戻すことができたと言ってもいいのかもしれません。ダニーが、自らの正当な権利を自ら掴み取ってみせたように。
作者アーチャー自身が実際に収監された経験があることもあってか、刑務所内での出来事ひとつひとつもリアリティに富んでいると思います。ちゃんとティーの時間があるあたり、イギリスなんだなーとか思うし(笑)。そういうディテールもけっこう面白かったりする。
物語自体もエンタテインメントとして面白かったですが、人物の性格がきっちり描かれているのが個人的にはツボでした。なので、アーチャーはもうちょっと読み進めてみたいです。
まあそれは措いといて(本当は措いといたら良くない気がしますが)、解説でも書かれてある通り、内容としてはまさしく現代の「モンテ・クリスト伯」、これも私自身はとても好きな物語です。死人になりすますという脱獄の仕方も似てる。というか、脱獄ってこれがいちばん確実な(と言うのも妙ですが)方法なのかと錯覚するぐらい。
ただ主人公ダニーの復讐の結末は、モンテ・クリスト伯ことエドモンのそれとはちょっとだけ違いました。でも、めでたしめでたしなのは一緒。あ、死人になりすますのもそういえばエドモンとは逆の意味でだったか……
主人公の自動車修理工ダニーが、無実の殺人罪(しかも自分の親友であり、婚約者ベスの兄でもあるバーニーを殺害したという罪)で22年の懲役を科せられたのが、物語の始まり。自暴自棄になりそうだったダニーが、獄中で得難い友であり仲間を得て、自分を陥れた4人の社会的エリートたちに、相応の報いを与えるべく邁進する姿は爽快そのものです。
ダニーの聡明な資質を見抜き、獄にあって出所後の学位取得が可能となるまでに充分な教育を施したニックをはじめ、最後は頼もしい相棒となったビッグ・アル、ダニーの無実を最初から最後まで信じ抜いた婚約者ベスと弁護士レドメイン父子などなど、脇を固めるキャラクターたちも魅力的。中でも、ダニーを初めにニックとビッグ・アルとの同房に入れることを決めたジェンキンズ看守長は、ダニーがことを成し遂げるにあたっての最高の功労者じゃないかと、個人的には思っています(笑)。
物語の前半でも、一度再審のチャンスがあったのがフイになったり、そのためダニーがベスと娘の幸せを想って別れを告げたり、ニックの財産をダニーがニックとして合法的に獲得するための、ニックの叔父ヒューゴーとの戦いなど、エピソードは色々あります。が、読む方にエンジンがかかってきたたのはやっぱり後半の、真犯人たちを追い詰めていく鮮やかな手際が見せられていくあたりからでしたね。
盛り上がりが最高潮に達するのは第5部「救済」、ギリギリのところで仇敵たちにカウンターパンチを食らって逆に逮捕され、他人になりすまして脱獄した罪に問われた絶体絶命のダニー。その窮地を最も効果的に救う手立てになったのが、亡きニックの遺言であったところが心憎いです。あまりにも周到だったニックの手際には惚れ惚れします(笑)。
この、物語最後にして最大の見せ場である法廷での、レドメイン父子と証人たちや判事、検察側との丁々発止のやり取りも非常に小気味良いテンポで進んでいきます。
そして、ダニーの殺人罪が誤審の結果であったことが白日の下に晒されたあとの最終章では、ダニーが行ったとされていたバーニー殺害について、ダニーを陥れようとしていた真犯人たち(1人が死んで残り3人)を被告とした再審が行われます。
それでも、3人のうち2人はここでも無実を主張し、また無実を勝ち取れることを確信していました。が、最後の1人ダヴェンポートが最後に決定的な一言を述べたことで、ダニーの「復讐」は本当の意味で幕を下ろします。
彼は主犯ではなかったにしろ、罪を負っていたことは間違いなかったわけで、最終的にダヴェンポートはこの一言で自身の、人間として守るべき「誇り」を取り戻すことができたと言ってもいいのかもしれません。ダニーが、自らの正当な権利を自ら掴み取ってみせたように。
作者アーチャー自身が実際に収監された経験があることもあってか、刑務所内での出来事ひとつひとつもリアリティに富んでいると思います。ちゃんとティーの時間があるあたり、イギリスなんだなーとか思うし(笑)。そういうディテールもけっこう面白かったりする。
物語自体もエンタテインメントとして面白かったですが、人物の性格がきっちり描かれているのが個人的にはツボでした。なので、アーチャーはもうちょっと読み進めてみたいです。