羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

一時間に一本のバス

2009年06月26日 15時12分35秒 | Weblog
 四丁目からバスに乗って帰路につこうと思った。
 ちょうど交差点の脇にある交番の前に、お巡りさんが立っていた。
「一時間に一本ですよ」
「えっ、一本ですか」
「停留所は、あそこ……」
 立っている交差点から10メートルほどありそうだ。

 昔、よくバスで通ったことがあった。
 七十五歳で逝った知人の遺作を見た帰りだった。
 大作三点。‘鉄線’‘椿’‘石楠花’を描いた日本画である。
 グループ展のお一人から手紙を戴いて、亡くなったことを知った。
‘椿’の絵は、まだ完成ではなさそうだ。
 もっと色を重ねる画風だから。
 しかし、いい絵だ。
「お連れ合いを亡くされてから、急いで追いかけてしまわれたようね……」

 街にでると真夏の太陽が、ちょうど真上にあった。
 なんとなく弔いの気持ちから、ゆっくり家路につきたかった。

「そうですか。四谷までですか」
「地下鉄が早いですよ」
 街を案内するボランティアの男性が親切に語りかけてくれた。
「ありがとうございます」
 
 子供のころ銀座に出るのは、新宿から晴海行きの都バスか、有楽町から歩くか、父が運転する車か、いずれにしても移動は地上だった。
 自宅からの往路。
 半蔵門を抜けると皇居のお堀が目に入ってくる。
 白鳥をみると心が蕩けた。
 今ではお堀に住む鯉が、小魚を食べて大きく育っていると麹町に住まう知人から聞いたばかりだ。
 さて、そこから警視庁の前を通り、日比谷から一気に直線道路を四丁目の角まで走り抜ける。
 帰りはその逆。

 よく林家三平師匠、おっと先代の三平師匠と乗り合わせたことがあった。
 もちゃもちゃ髪にサングラス。誰の目にもわかる出で立ち。
 何気なく車中の会話に聞き耳をたて、風俗を観察しているらしいことが、子供の目にもうかがえた。
 いつの頃からか私も電車やバスや列車に乗る際には、本や雑誌を読んだり携帯をみたり音楽を聞いたりはしない。
 風景を眺めたり、乗り合わせている人々の人生を想像したりしながら過ごしている。
 三平師匠の姿が、子供心に焼きついて、それに習ったような気がする。
 
「そうか、新宿⇔晴海間の都バスは、四谷⇔晴海間に変更されて、一時間に一本となったのか」
 残念! 無念! でも、まだ走っているんだ!!
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