朝日新聞23/5・4 朝刊「SOUND for LIFE」坂本龍一から生まれたもの
4️ 音楽と地球環境の意識 一つに連動 人類学者・中沢新一さん
この記事は1970年代、世界中に「脱西洋」の潮流が生まれた、ことから話が始まる。
1970年代、坂本さん 中沢さんと、同年代の自分を並べるのはいささかおこがましいが、この時代に青春期を生きたものたちは、これまでの西洋的価値観一辺倒から脱して、相対的な文化・芸術への視点を持った世代だ。
文化人類学、哲学は「感覚の哲学」「身体哲学」など、そうした傾向の大きなうねりが、日本にももたらされた時代だった。
東洋的身体術、ホリスティック医療も含めて、近代化のあり方に疑問を投げかけ、脱西洋の新しい視点の中で、野口三千三の体操と自然哲学も注目された。
中沢氏はいう。
『坂本さんの中では、音楽と地球環境への意識は、一つに連動していた。高度産業文明が自然との回路を失い、内向きに閉ざされすぎていることは、発達しすぎた西洋音楽の場合とよく似ている。彼はそんな現実を批判的に見つめ、発達しすぎたシステムを解体し、自然の力と自由に通行できる音楽や文化を作らないといけないという考えを、環境問題でも音楽でも一貫して持っていた』と。
坂本さんが亡くなる間際まで、神宮外苑の再開発に伴う樹木の伐採に反対の意思表明をし続けていたことは、記憶に新しい。
この記事に触発された私は、5月7日のレッスンの冒頭で、坂本さんの最後のアルバム CD「12」から「sarabande」の一部を聞いてもらった。
仰向けに横になってもらい、からだの重さを床にゆったりと預ける。
音楽に浸って、からだの重さが床に・地球に、すいこまれるようなイメージを持ってもらう。
静まった昼下がりの教室。
身じろぎの音すらしない。
“日記を書くようにスケッチした”という坂本さんが奏でるピアノの音が響く静謐で荘厳な音空間に包まれる。
8番目の曲は、「sarabande」と名付けられている。それだけに、ところどころに解体された「長3度の和音」らしき音が挿入される。バッハのフランス組曲の短調の幻影を忍ばせる。その和音は、あたかも西洋音楽の残滓のように響く。
死を間近に見ている作曲家のいたたまれない面持ちが、聞くもののからだにも深い傷を負わせるかもしれない。
前日、私は、灯りを消したお蔵スタジオで「12」の全曲を聴いていた。
シンセサイザーとピアノ、きっぱりと二分された作品群は、『今後の体力が尽きるまで、このような「日記」を続けていくだろう』
そうした思いからスケッチされた音の辞世である。
音楽が鳴り続ける中、私は、鉄格子がはまった北の窓から差し込む日にCDが梱包されていた袋をかざした。
極小の文字に、目がひきよせられる。
読んでいくうちに、坂本さんの遺志をしっかり反映したCDであることを知らされ目頭が熱くなった。
1970年代、東京藝大に小泉文夫、三木成夫、野口三千三の三氏が存在したことの意義がこの一枚のCDに集約されているように思うのは私だけだろうか。
音楽思想家・坂本龍一が解体した音楽は、解体するがゆえに時空を超えて「人間とは何ぞや」と今を生きる・生き残っている者たちに、問いかけている音のスケッチである。
注:CDに添えられている言葉
『この商品は“カーボンオフセット”CDです。この商品が生産・流通・廃棄のプロセスで排出する/したと推定されるCO 2(=1枚あたり0.81kg)は、more treesがフィリピン・キリノ州で取り組む植林プロジェクトによって相殺(オフセット)しています。オフセットについてwww.commmons/carbonoffset.htmlに掲載しております』
↓
*森づくりとカーボンオフセット
more treesは、森づくりによってCO2が吸収される量をもとに植林・森づくりによる「カーボンオフセット」という概念とアクションをさまざまな仕掛けとともに一般に浸透させる、というミッションを掲げています。
※カーボンオフセットとは?
カーボンオフセットとは、私たち人間の活動によって排出される二酸化炭素(カーボン)をオフセット(相殺)するために森づくりや自然エネルギーを導入することをいいます。
カーボンオフセットとは、私たち人間の活動によって排出される二酸化炭素(カーボン)をオフセット(相殺)するために森づくりや自然エネルギーを導入することをいいます。
1、日本の森林の再生
2、熱帯林の再生
3、砂漠の緑化の再生
4、「海の森」の再生
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます