羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

豆腐屋のラッパ

2006年03月14日 15時46分01秒 | Weblog
「トーフー、トーフー」と聞こえる、ラッパの音が、遠くから聞こえてくる。
 何かの聞間違いかと思っていると、次第に近づいて家の前に差し掛かっているようだった。
 それは昨年の盛夏のことだった。
 
 最近でも一週間に一度は、懐かしい音が聞こえる。
 この豆腐屋のラッパは、ハーモニカと同じで、吹く息でも吸う息でも音がなる。
 「トー」のときは吐く息。「フー」のときは吸う息だ。
 フルートやオーボエの木管楽器、トランペットやサックスのような金管楽器は、すべて吐く息で音をつくる。
で、ハーモニカと同じものに東洋の笙という雅楽の楽器がある。
 知る限りこの三種類の楽器、つまり、笙・ハーモニカ・豆腐屋のラッパは、吐く息・吸う息で音をつくり出している。基本の考え方は同じで、音質もよく似ている。
 これらの楽器の音に似ているが楽器が、他にも二つある。
 一つはパイプオルガンで、もう一つはアコーディオンである。
 この二つは鞴(ふいご)に「鍵盤」をつけたものである。

 ギリシャあるいはメソポタミアから西へ東へと流れていく楽器の系譜を見ると、多少の変形なり演奏法のことなりなどあるけれど、多様性の底流に流れる共通した音の原理と音質に、時間をかけて行われている東西交流の地図が見えてくるようだ。

 豆腐屋のラッパから雅楽の笙、そして教会のパイプオルガンや街角や野外で演奏できるアコーディオン。同質の音に「風の楽器」としての命を吹き込む人々の思いを聞きながら、豆腐屋のラッパの音に聞き耳をたてているのだが、実は、懐かしい豆腐屋のラッパの音を快く迎えられない微妙な感情が働いている。
 町を巡る豆腐屋の屋号が、たとえ「野口屋」であってものことだ。
 事実「野口屋」と染め抜いた幟をたてて小さなリヤカーをひいてやってくるようになったのは、知ってか知らぬかわからないが、長年親しまれた地元の豆腐屋が店を閉めるという噂がたったころだった。
 実際、昨年末には、なじみの豆腐屋の店は閉じられてしまった。
 また一軒、地元の個人商店がなくなってしまったことは悲しい。
 大手のスーパーや、便利なコンビニや、低価格のチェーン店に取って代わられる時代に、一抹の寂しさや不安を感じるのである。

 先週末も、仕入れの豆腐や湯葉を積んで売り歩く「トーフー、トーフー」というラッパの音が聞こえていた。
 
 せめて楽器の東西交流を偲ぶことで、溜飲をさげる努力をしているこのごろである。
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1 コメント

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野口屋の豆腐は・・・ (まこと)
2006-03-20 15:15:48
仕入れじゃなくて

伊豆の自社工房で作ってるらしいですよ☆

水が綺麗な土地だそうです。

ちなみに僕は浅草で買ったんですが

近所のお豆腐屋さんと協力して

そこのお豆腐屋さんの揚げとか

つんでいましたよ

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