羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

Oh, my God!

2009年05月23日 08時53分55秒 | Weblog
 以前は、朝5時には日経新聞も朝日新聞も配達されていた。
 ところがこの数ヶ月前から、朝日新聞の配達員が新人になって、朝刊を配る道順が変わったらしい。
 6時すぎにならないと、ポストに入らなくなった。

 今朝も日経新聞だけを読み終えて、朝食の準備に取り掛かる前に、何気なくテレビのスイッチを入れた。
 中低音域を幻のように彷徨うアルペジオにのって、優しさ極まりないメロディーがメゾソプラノの女性の声のように聞こえてきた。
 
「あぁ、お久しぶり、シューベルトさん」
 思わず心の中で呟いた。
 ピアノ即興曲作品90ー3を老齢に達したかに見える男性ピアニストが奏でていた。
「そういえば、5時55分のNHK天気予報の前に、このごろはピアノ曲を放送していたっけ」
 しばし手を休めウィーンのハーモニーとメロディーにからだを揺すりながら聞き惚れてしまった。
 
……シューベルトって、はやくこの世を去ることを知っていたのではないだろうか、と思う。
 でなければ、これほど生命が内包する揺らぎを感じ取ることはできまい……。
 
……そのとき、ある映像が網膜に甦った。
  それは、ダイアナ妃の送別の儀が終わりドアが開かれ、逆光に照らされて
  天国に召されるように棺が教会堂をしずしずと去っていった時の美しさ。
 ‘これがキリスト教の癒し’だ、と感じたときのこと……

 教会堂の中では、チャールズ皇太子自らがすべてを選曲したと言う最後の一曲が流れていた。

 懺悔をし、許しを乞い、神の御許で魂が安らかに眠る癒しを、シューベルトは音楽に描ききったのではなかろうか。とくにこの即興曲は……。

 テレビから流れる曲に身を委ねていると、宗教にかかわらず浄化されていくような心地よさに包まれた。

 もちろん、数時間後の‘朝のピアノの時間’に、さっそく楽譜を取り出して弾いてみた。
 Oh, my God! 中のアルペジオを弾く指が、指が……メロディーを邪魔しているのだ。
 いやいや、ここで諦めない。
 明日に架けよう、そのまた明日に、そのまたまた明日に。
 

 
コメント
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