電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

マルティヌー「交響曲第5番」を聴く

2009年10月01日 05時29分22秒 | -オーケストラ
秋の郊外路の通勤のお供に、このところマルティヌーの交響曲を連続して聴いております。そういえば、しばらく前にもマルティヌーの音楽を連続して楽しんでおり、番号順に4曲聴いたところで中断。先頃、第5番から再開したところです。

チェコの作曲家マルティヌーは、1890年12月8日生まれ、1959年8月28日没とありますので、最晩年には私もすでに生まれていた勘定になります。その意味では、当方にとって十分に「現代の」作曲家の一人です。でも、前衛的な、いわゆる「現代音楽」とはやや異なる趣を持った音楽で、お気に入りの音楽になりつつあります。

プラハ音楽院を中退したマルティヌーは、チェコフィルの第2ヴァイオリン奏者から出発して、パリで印象派の音楽と出会い、ルーセルに傾倒します。1929年からは作曲に専念するようになり、翌々年に結婚。1940年にナチスのブラックリストに載ったことを知り、フルニエやフィルクスニー、パウル・ザッヒャーやアンセルメらのすすめでアメリカに渡ります。米国における、1940年代の創作の充実は、先の四つの交響曲(*)などに見られるとおりです。この交響曲第5番は、1946年、第2回「プラハの春」音楽祭において、クーベリック指揮チェコフィルによって初演され、同オーケストラに献呈されているのだそうな。

ちょっと聞いただけでは、なかなかなじめない音楽ですが、通勤の音楽として連日繰り返して聴いているうちに、なんとなくすーっと耳に入ってくるようになりました。演奏は、ヴァーツラフ・ノイマン指揮チェコフィルハーモニー管弦楽団。まさに、ゆかりの音楽の演奏です。

第1楽章、アダージョ、4分の4拍子。不安な始まりです。木管とピアノによる、ピッポッパッという音が、さまざまな楽器で変形され展開されていきます。弦楽の中に埋もれたり、しっかりと主張したりするピアノが、いかにもこの作曲家らしい。コーダの高揚は、金管部隊の高らかなコラール。
第2楽章、ラルゲット、軽快な、せわしなさも感じさせる、自由なロンド形式。途中の印象的なフルート・ソロは、ちょいとプロコフィエフを思わせる面もあります。ですが、ずっとしつこいというか、反復の回数が多いのは、作曲家ご本人の性格なのでしょうか(^o^)/ 中間部は、やや悲しげな色彩も帯びつつ、後半にはヴァイオリン・ソロが美しい主題を再現します。ピピパパピポパッというアニメの人形のようなリズムと、大きな弦楽のうねりの対比が、見事です。
第3楽章、レント~アレグロ。チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」終楽章の引用。しかし、やがて空気は一変し、晴れやかなものに変わります。シンコペーションの利いた躍動的なリズムは、しだいに高揚していき、コーダへ。

戦争終結の時期、もしも東西の冷戦に伴う体制の変化がなかったら、故郷に帰れたかもしれない、そんな希望も反映しているのでしょうか、望郷の作曲家マルティヌーらしい、息の長いクレッシェンドと独特の響きが特徴的な、なかなか素敵な音楽です。
1978年、チェコのプラハ、旧「芸術家の家」(ルドルフィヌム)におけるアナログ録音で、スプラフォンの原盤。全集中の1枚で、型番は DENON COCQ-84040 です。

■ノイマン指揮チェコフィル
I=8'41" II=8'53" III=12'02" total=29'36"



(*):「電網郊外散歩道」マルティヌーの交響曲の過去記事~第1番第2番第3番第4番
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