電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

佐伯泰英『照葉ノ露~居眠り磐音江戸双紙(28)』を読む

2009年10月16日 06時05分13秒 | -佐伯泰英
佐伯泰英著『居眠り磐音江戸双紙』シリーズ第28巻、『照葉ノ露』を読みました。せっかくのエンターテインメントですので、あらすじを詳細に追うことはいたしませんで、例によって(読んだ人がわかるような)とりとめもないコメントを記すことといたします。

第1章「酒乱の罪」・第2章「仇討ち」。ずっと酒を絶っていた、酒乱癖の父親が、妻への心ない誹謗を真に受けて、嫉妬にかられて妻を虐待します。妻とは同郷であり、家来ながら夫婦の長男に武術を教えている師範が中に入り、主の妻を助けようとしますが、はずみで主を殺害してしまいます。封建時代に主殺しは極刑の定め、酒乱の夫を殺された妻は、息子を残して師匠とともに逃亡します。残された息子は、母と師を仇として討たねばなりません。助太刀をする磐音も、迷います。
どうやらこのエピソードが、来年の正月「陽炎の辻」スペシャルのネタらしい。きっと、過酷な運命にじっと耐える子役に、視聴者の同情が集まることでしょう。
第3章「大川の月」・第4章「真剣のこつ」。尚武館佐々木道場の若手だった重富利次郎は、父親に同道して、国元の土佐に旅することとなります。利次郎が、自信喪失の状態から立ち直るのに助力した霧子は、どうやらひそかに利次郎に心を寄せているらしい。はたしてその心中やいかに(^o^)/
娘の早苗が佐々木道場に住み込み奉公をするようになっても、相変わらずの竹村武左衛門は、大刀を捨て、陸奥磐城平藩五万石、安藤対馬守の下屋敷の門番に雇ってもらえることになりましたが、老練な用人の猿渡孝兵衛さんは、この酒飲み能天気男の本性を察知しながら、佐々木磐音と幕閣とのつながりを重視し、雇い入れることとしたのでした。どうも、いいコンビになりそうな気配です。
重富利次郎を送り出す剣術試合の後、利次郎は磐音に真剣のこつを伝授されます。ふーむ。すると、利次郎の土佐行きは、かなりの波乱含みということなのでしょうか。もしかすると、今後の西の丸世子家基様の運命に土佐藩が絡んでくるのだろうか?いやいや、幕末乱世ならともかく、今はまだ単なるエピソードで、外様大名の出番はないのでしょうか。
第5章「四番目の刺客」。利次郎が出発した後、磐音は西の丸の家基の剣術指南を命じられます。このあたり、よく田沼老中が妨害しないものだと不思議です。しかも、いきなりの真剣指南。ふつうはたいへんな物議をかもすところでしょう。噂を伝え聞いた老中が、望外のネタに使うと考えるのが自然な展開かと思いますが、さすがチャンバラ・エンターテインメント。そのような政治的な展開は取らず、四番目の刺客の登場となりました。このあたりは、まあ、偉大なるワンパターンでしょう。むしろ、純情な一郎太と、出戻ってきた幼なじみの瀬上菊乃さんのカップルがほほえましい展開です。

しかし、酒乱というのは困ったものですね。エタノールの作用で気分がハイになるのは理解できますが、制御機構が外れてしまって乱暴狼藉というのは迷惑千万。酒に寛容な日本社会ですが、本当に江戸時代にもそれほど酒を飲んだのでしょうか。日常的に酒を飲むのは、むしろ近代の工業的生産が可能になってからのような気もするのですが。このあたり、理系の歴史オンチには理解の外です。
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