電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山響モーツァルト交響曲全曲演奏会Vol.8でオーボエ協奏曲とト短調交響曲等を聴く

2009年10月04日 06時01分33秒 | -オーケストラ

週末の午後、妻と山形交響楽団のモーツァルト交響曲全曲定期演奏会Vol.8に出かけました。朝方の雨も上がり、午後には上天気となりましたので、余裕を持って出かけ、開場前に到着してしまいました。入り口には、なぜかテレビカメラの取材クルーが二組も待機しており、なにやら録画している模様。




ホール内の掲示によれば、放映予定は次の二回とのこと。
(1) 2009年10月17日(土)、朝8時00分~、読売テレビ系「ウェークアップ!ぷらす」(YBC山形放送)
(2) 2010年1月3日(日)、朝4時25分~、朝日放送系「新春クラシック2010」(YTS山形テレビ)



さて、本日のプログラムは、


■交響曲第7番ニ長調K.45
■オーボエ協奏曲ハ長調K.314
■交響曲第40番ト短調K.550


の3曲です。開演前のプレトークで、音楽監督・飯森範親さんが解説したところによれば、交響曲第7番は、ウィーンで姉ナンネルとヴォルフガング(12歳)の二人とも天然痘に感染してしまい、秋から冬までずっと具合が悪かった、そんな状態で書かれたものだそうです。それにしてはずいぶん演奏が難しい部類だそうな。オーボエ協奏曲は、20代の若い山響オーボエ奏者・佐藤麻咲(まさき)さんの出演。交響曲第40番は、当時、貧困にあえいでいたモーツァルトが書いた傑作の一つで、当時の聴衆には受け入れがたい作風も登場し、聴衆が離れていく、そんな様々な悩み・苦しみも表す曲。20世紀のモーツァルト演奏は、だいぶ脚色されてしまったと感じる。モーツァルトの時代の演奏様式に近づけ、テンポは速めに。18世紀の短い弓で、楽譜にあるスラーの指示を生かすには、テンポは速く取らざるを得ない、とのことです。

開演の時刻になり、例によって女性奏者は色とりどりのドレスで登場です。指揮台を中央に、左手に第1ヴァイオリン、コンサートマスターは高木さん。その奥にチェロ、右にヴィオラ、指揮台右手に第2ヴァイオリンと対向配置スタイル。交響曲第7番の楽器編成は、パンフレットの解説によれば、Ob(2), Hrn(2), Tp(2), Timp, 弦5部となっておりますが、これに加えて、清楚な水色のドレスがよく似合う、ファゴットの高橋あけみさんが加わっています。
さて、交響曲第7番、第1楽章。モルト・アレグロ、ニ長調、4/4拍子。イタリア風な、溌剌とした音楽です。第2楽章、アンダンテ、ト長調、2/2拍子。弦5部のトップ奏者だけで、まるで室内楽みたいに、指揮なしで演奏します。2nd-Vn のヤンネ館野さんが細かくリズムを刻み、ヴィオラ、チェロ、コントラバスが中~低音部を支え、第1ヴァイオリンが旋律を奏でるというしくみです。第3楽章、弦5部に管楽器も加わり、3/4拍子、ニ長調のメヌエットです。第4楽章、モルト・アレグロが通例となってはいるものの、快速に演奏される、2/4拍子、ニ長調の溌剌としたフィナーレです。なるほど、わずか12歳の少年の作品とは思えない、なかなか魅力的な作品です。

次はオーボエ協奏曲です。独奏オーボエと Ob(2), Hrn(2), 弦5部 という具合に編成が縮小され、しかも第1・第2ヴァイオリンともに第3プルトまで、という具合に小さくなっています。ソリストの佐藤麻咲さん、真紅のドレスで登場。喉元と腰のあたりに、素敵な大輪のバラが咲いています。いつも弦楽の後ろに座っていますので、小柄な方なのかな、と思っていましたが、どうしてどうして、スラリと背が高いのですね。認識を新たにいたしました。
第1楽章、アレグロ・アペルト、ハ長調、4/4拍子。オーケストラの溌剌とした始まり。そして、独奏オーボエが、駆け上がるようなパッセージからいきなりのロングトーン。これでもう、オーボエの魅力が全開になります。軽やかだが緊張感に満ちた素晴らしいカデンツァ。あの(たぶん難しい^o^;)高音も決まり、第2楽章へ。3/4拍子、ヘ長調、アンダンテ・マ・ノン・トロッポ。葦笛のようなオーボエの音色の魅力を発散する、それはそれは素敵な緩徐楽章です。オーケストラの出番のときを利用し、リードを調整しながら第3楽章へ。2/4拍子、ハ長調、アレグロの指示のある、さらに軽快なロンド・フィナーレです。
素晴らしい演奏を終えて、マエストロの労いを受けた後で、コンサートマスターの高木さんや犬伏さんとも笑顔を交わします。犬伏さんも満面の笑み。いつもチューニングで息を合わせることの多い楽団のお姉さん(^o^)/ に祝福されて、ソリストもほんとに嬉しそう。

休憩の時間にも、コントラバスの三人の奏者がなにやら打ち合わせや調整を行います。客席を見渡すと、聴衆の年齢層はずいぶん多様で、若い人も多く見られます。大都市のオーケストラの定期演奏会の場合は、チケットのお値段もずいぶんと高額ですので、経済力のある人しか集まらないのだろうと思いますが、山響では、若い人もちょっと頑張れば聴きにくることができる、という点が大きいのでしょう。

さて、本日のプログラム最後の曲目、第40番K.550、ト短調交響曲です。始まりは、モルト・アレグロ、2/2拍子、ト短調、ソナタ形式の第1楽章です。速めのテンポにまったく違和感はありません。続く第2楽章、アンダンテ、変ホ長調、6/8拍子。クラリネットは加わっておりませんが、木管楽器が活躍し、優しい表情が特徴的な音楽になっています。でも、背後では各パートの細かな動きがあります。第3楽章、アレグレット、ト短調、3/4拍子。たしかに、ちょいと異色のメヌエットというべきか。ただ優雅なだけではなく、左手が動き回るコントラバスの活躍に思わず注目です。低音部までバランスの取れた、見事な響きになっています。第4楽章、アレグロ・アッサイ、ト短調、2/2拍子。フィナーレまで息の抜けない、たいへんに緊張感に満ちた、見事な音楽に集中した時間でした。演奏直後の、飯森さんの厳しい表情が、集中力に富んだ演奏の密度を物語っていました。

終演後のファン交流会で、オーボエソロをつとめた佐藤麻咲さんのインタビューが面白かった。実は、去る8月13日に、自転車で転んで左手の肘のあたりを骨折したのだそうです。手術を受けてリハビリに努め、ようやく本番に間に合わせたのだそうな。ご本人はお目々をくりくり動かしてお茶目に語りますが、リードを削ることもできない時期を乗り越えての演奏、周囲の心配もたいへんなものだったでしょう。なるほど、それで犬伏さんのあの表情になるわけですね(^o^)/ shinpai-shitanoyo~




飯森さん、ヨーロッパでも4つくらいのオーケストラと40番を振っているそうですが、今日はその中でもかなりすごい出来だった、と満足の様子。確かに、私もそう思います。ほんとに素晴らしい演奏会でした。
そして、帰りにはこじんまりした寿司屋さんに立ち寄り、美味しいお寿司を握ってもらい、大満足。いい一日でした。

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