電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

金聖響+玉木正之『ベートーヴェンの交響曲』を読む

2009年10月17日 05時40分12秒 | 読書
講談社現代新書で、金聖響+玉木正之『ベートーヴェンの交響曲』を読みました。同じコンビで、『ロマン派の交響曲~「未完成」から「悲愴」まで』を読んでおります(*)ので、二冊めということになります。

本書の構成は、次のようになっています。

まえがき (玉木正之)
プレトーク (金聖響VS玉木正之)
第1番 ハ長調 作品21 「喜びにあふれた幕開け」
第2番 ニ長調 作品36 「絶望を乗り越えた大傑作」
第3番 変ホ長調 作品55『英雄』 「新時代を切り拓いた『英雄』」
第4番 変ロ長調 作品60 「素晴らしいリズム感と躍動感」
第5番 ハ短調 作品67 「完璧に構築された構造物」
第6番 ヘ長調 作品68『田園』 「地上に舞い降りた天国」
第7番 イ長調 作品92 「百人百様に感動した、狂乱の舞踏」
第8番 ヘ長調 作品93 「ベートーヴェン本人が最も愛した楽曲」
第9番 ニ短調 作品125 「大きな悟りの境地が聴こえてくる」
アフタートーク (金聖響VS玉木正之)
あとがき (玉木正之)

ベートーヴェンの九つの交響曲を解説している本はたくさんあるでしょうが、現役の指揮者がわかりやすく解説しているハンディな本という点で、なかなか好企画だと思います。内容も、面白く読みました。付箋や書き込みをしているところを、一部取り上げてみますと、たとえば、こんなふうです。

・このヴィヴラートというのは、すごく新しい演奏法で、フリッツ・クライスラー(1875~1962)という大ヴァイオリニストが、1910年くらいから流行させたものです。(p.65)
・指揮者としては、プロ・スポーツマンの運動神経にオタクの精神を持ちたい、といったところかもしれません。(p.136)
・巨大なビルディングを見あげて、うわー凄いなあと普通の人が思っているときに、建築士はその中にある鉄骨とコンクリートの関係を見ているようなもの(p.136)

なるほどなるほど。私は、てっきり世紀末のマーラーの時代にはすでにヴィヴラートびんびんの時代に入っていたのだろうと思っていましたが、そうでもなかったのですね。意外なことで、認識を新たにいたしました。
ただし、第7番の能書きは数字のイメージについてのうんちくですが、あまり面白くはありません。全9曲の中では、自分自身の好みもあって、エロイカ交響曲の章を面白く読みました。第4楽章のダサさの指摘など、ほんとに同感です。でも、そのダサさを含めて、お気に入りなのですよ。好きということは、どうもそういうことのようで(^o^)/

(*):金聖響+玉木正之『ロマン派の交響曲~「未完成」から「悲愴」まで』を読む
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