電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山形交響楽団第195回定期演奏会を聴く

2009年03月14日 08時57分35秒 | -オーケストラ
3月13日夜の山形交響楽団第195回定期演奏会、車を飛ばして、序曲の終わり頃にようやく間に合いました。今回の指揮者は、以前も客演したギリシャのバイロン・フィデチスさん。ベートーヴェンの序曲「アテネの廃墟」は聴くことができませんでしたが、協奏曲にはなんとか間に合い、曲の合間に入場できました。席はほぼ中央やや左手。いい席です。両隣りに女性のお客さんでしたので、中年おじさんはちょいと恥ずかしかったのですが(^o^)/

今回は、ステージに向かって左から右回りに、第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、右手後方にコントラバス、中央奥に木管と、さらに奥に金管、その右にティンパニという配置です。
ステージ中央、指揮者の左に独奏チェロが座り、その左に独奏ヴァイオリンが立ちます。
コンサートマスターは高木和弘さん、二人のソリストは、山響の犬伏亜里(Vn)さんと宮城健(Vc)さんです。
犬伏さんは、黒のロングスカートの上に、背中のリボンがかわいらしい緑のキラキラの装い。宮城さんは上下ともに黒の上品なスタイルです。指揮者のバイロン・フィデチスさんは、おやおや、ヒゲをたくわえて登場です。

ブラームスの二重協奏曲が始まります。
第1楽章、アレグロ、イ短調、4/4拍子、ソナタ形式。オーケストラがフォルテで主題を奏し、チェロの独奏が始まります。木管がこれを受けて、ヴァイオリン独奏を導き、ヴァイオリンとチェロがぴったり呼吸が合ったところを聴かせます。オーボエとファゴット、とても印象的な、いい音です!オーケストラもがっちり気合が入り、ブラームス最後のシンフォニックな協奏曲を演奏します。
第2楽章、アンダンテ、ニ長調、3/4拍子、ロンド形式。ホルンと木管に続き弦が中声部を響かせ、独奏チェロとヴァイオリンが、いかにもブラームスらしい心を揺さぶるような歌を聴かせる緩徐楽章です。ホルンとフルート、チェロとヴァイオリンの対話がとても素敵です。やがて弦楽が入り、美しいテーマを再び。
第3楽章、ヴィヴァーチェ・ノン・トロッポ、イ短調、2/4拍子、ロンド形式。出ました!エルキュール・ポワロかシャーロック・ホームズの番組のような不思議な雰囲気の音楽(*1)です。クラリネットとオーボエも、ミステリアスに響きます。テンポの良いオーケストラのリズムの切れ味もよく、ふだんはオーケストラに所属する二人の独奏者も気合の入った演奏ぶりで、ブラームスの最後の協奏曲を堪能いたしました。とりわけ、犬伏さんと宮城さんのユニゾンのところ、素晴らしかった!弦楽器を聴く醍醐味でした。

休憩時間に、少しほっとします。会場の県民会館は、いつもの山形テルサホールに比べるとだいぶキャパシティが大きいのですが、客席はかなりうまっています。二重協奏曲は初めての人が多いのでしょうけれど、「のだめ」効果か、ベートーヴェンの第7交響曲目当てに来ているお客さんも多いことでしょう。

プログラム後半は、その「第7交響曲」です。
第1楽章、ポコ・ソステヌート~ヴィヴァーチェ、イ長調、4/4~6/8拍子。炸裂する全奏に続きオーボエ等が息長く続く中で序奏が力を蓄えていきます。これは、のちに全開になる和音とリズムの爆発を準備する音楽でしょう。ターッタターッタというリズムを提示した後で、フルートがリズムを主導し、オーケストラが「のだめカンタービレ」のテーマを。ここからは、会場内のお客さんの反応がじかに伝わるようです。
第2楽章、アレグレット、イ短調、2/4拍子、複合三部形式。象の一声のような金管のパォーンに続き、コントラバス、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンによる思索的な足取り。やがて第1ヴァイオリンも加わり、弦楽合奏が昂揚していきます。さらに管が加わって全体が堂々たる歩みに。まるで、重いコートを着た哲学者が、思索をめぐらしながら小径を逍遥するような音楽です。全体に快速な音楽の中では、このアレグレットは緩徐楽章の位置付けなのでしょう。
第3楽章、プレスト、ヘ長調、3/4拍子。リズミカルで軽やかなスケルツォ楽章でしょうか。途中の「だ~めよ、だ~めよ、も~ぉだめだよ」のフレーズがいかにも楽しい。ティンパニの平下和生さんが忙しくなります。
第4楽章、アレグロ・コン・ブリオ、イ長調、2/4拍子、ソナタ形式。快速オーケストラの中で、クレッシェンドするティンパニの連打。平下さん、ほとんど休みなく大活躍です。身のこなしの軽やかなこと!オリンピックの体操選手の動きを見ているような感じさえあります。衣装を変えたら、サーカスの曲芸師の役もできそうなほどです!トランペットと同期するティンパニ奏者の体の動きなど、こういうのは実演でないと楽しめません。オーケストラの各パートが、のりのりでクライマックスに向かってひた走るのを、指揮のフィデチスさんがぴたっと合図する、そんな感じです。それにしても、山響はこういう直線的な音楽の表現がうまいですね。

いや~、「第7交響曲」を堪能しました。客席からブラボーがかかり、指揮のバイロン・フィデチスさん、何度もステージに呼び出され、最後はコンサートマスターの高木和弘さんを連れて、サヨナラの合図をしながら袖に引っ込んで行きました(^o^)/
私は、実に楽しく聴くことができましたが、今回ソリストを勤めた犬伏さんと宮城さんはお休み、仲間が演奏する第7交響曲を、どんなふうに聴かれたのでしょうか。

某ブログで、「山形交響楽団の首席なのに宮城健さん(Vc)とはこれいかに」というなぞなぞがありました(*2)ので、伝統的駄洒落保存会の趣旨に鑑み、定番ですが「宮城フィルハーモニーに山形由美さん(Fl)が客演するがごとし」とお返ししたいと思います(^o^)/
宮城健さん、この三月で退団されるとか(*3)。これまでの素晴らしい演奏活動に感謝するとともに、今後のご活躍をお祈りいたします。

(*1):ブラームス「VnとVcのための二重協奏曲」を聴く~「電網郊外散歩道」より
(*2):週末は山響~「★balaine★ひげ鯨の日々」より
(*3):山形交響楽団第195回定期演奏会~「らびおがゆく」より
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