電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

岩波新書で小林博著『新版・がんの予防』を読む

2009年03月05日 06時35分40秒 | -ノンフィクション
だいぶ時間がかかりましたが、岩波新書で小林博著『新版がんの予防』を読みました。1999年の刊行ですので、今はもっと進歩している部分もあるのでしょうが、たいへん興味深いものです。
内容は、以下のとおり。

I がんとは
 がんをみなおす、がんができるまで、がんの時代変遷
II がん予防の基本
 がんの予防研究、がんの一次予防、がんの化学予防、がんの二次予防、がんの三次予防
III がんにならないための食生活
 リスクを下げる、リスクを上げる?、養生訓をみなおす
IV がんにならないための生活習慣~食生活以外のこと~
 喫煙、大気汚染、感染症、ストレス
V 増えるがんと減るがん
 増えるがん、減るがん
VI がんの遺伝素因など~予防効果を左右する~
 がん素因とは、遺伝性のがんとその対応、免疫抵抗力
VII がんにならないための自己責任
 自己責任とは
VIII 加齢とがん
 がんと年齢、長寿への願い



若年のがんは悲劇的ですし怖いものがありますが、90歳を超えてのがんは天寿がんというべきものだ、との指摘とともに、生活習慣病としてがんを予防しようとする著者の視点は興味深いものがあります。
UCLAの調査では、(1)喫煙をしない(2)飲酒を慎む(3)睡眠(4)運動(5)体重(6)朝食(7)間食、という7つの要素を挙げているとのこと。がんの原因を単独のものととらえず、炎症の遷延化(症状が長引くこと)やウィルス、遺伝的要因も含めて考察しています。タバコの害についての指摘は重要なポイントでしょう。ただし、1999年の刊行時には、タバコについて現在のような法的な規制はなく、著者の主張もやや穏やかなもので、まさにこの当時、会議中の禁煙を提案し一蹴された記憶を持つだけに、今から見ればやや微温的な感じはあります(^o^;)>poripori
化学発ガンと生物発ガンを比較し、前者のほうが発がん性が強いのは、ウィルス由来のガンの場合、細胞膜面に目印抗原が作られるために、免疫による攻撃を受けやすいのだろうとのこと。ガン遺伝子に関しても、遺伝の理解と患者・家族の幸福についての考察など、ベテラン医師らしい人間味が感じられます。
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