電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

モーツァルト「ピアノ協奏曲第5番」を聴く

2008年02月20日 07時00分29秒 | -協奏曲
ようやく雪も一段落した日、最初の楽章の華やかなパッセージに思わず耳をそばだてた、モーツァルトのピアノ協奏曲第5番ニ長調K.175を、雪かき作業をはさみながら、繰り返してじっくりと聴きました。CDは、DENONの箱物全集(COCQ-84097~105)から、アンネローゼ・シュミット(Pf)、クルト・マズア指揮ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏、少年期から青年期に移行する頃の若者の、健康で伸びやかな音楽。

1773年の12月に作曲されたという本作品は、楽器編成面でも、弦5部の他にホルン2、オーボエ2、トランペット2、そしてティンパニというもので、後期ほどの充実ではありませんが、多彩な響きを実現しています。

第1楽章、アレグロ。管弦楽のトゥッティによる第1主題の提示から始まり、独奏ピアノが登場します。この登場のしかたが、とにかく若々しくフレッシュで、今風に言えば、かっこいい。隙のない緊張感があり、イチローが打席に立つときみたい。
第2楽章、アンダンテ・マ・ウン・ポコ・アダージョ。巧妙な転調をとり入れた、優雅な緩徐楽章です。トランペットとティンパニはお休みで、木管とホルンが彩りを添えます。ピアノが入ってくるとオーケストラはバックにまわり、オーケストラが話しかけるとピアノが答えます。
第3楽章、いかにもモーツァルトらしい、ピアノの技巧が発揮され、完結に向かうアレグロ。とてもエネルギッシュですが、ぜんぜん汗くさくない音楽です。虫眼鏡で見たら、カデンツァはパウル・パドゥラ=スコダのもの、と小さく書いてありました。

添付された海老沢敏氏の曲目解説によれば、「初期の編作をのぞけば、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)が最初に作曲したピアノ協奏曲」なのだそうです。そして「最初の作品という年代記的な意味をはるかに越えて、この曲の重要性は、きわめて大きい」としています。それはなぜか。海老沢氏は、モーツァルト自身が、1773年に作られたこの曲を、1774年のミュンヒェン旅行や1778年のマンハイム旅行時にもたずさえ、1782年の演奏会でも取り上げるなど、後年になってからも「偏愛し」ているからであり、「それなりの音楽的、芸術的な理由がある」と指摘しています。

たしかに、若いモーツァルトの、魅力的な音楽です。特に第1楽章のフレッシュさ。アナログ全盛期のアリオラ・オイロディスク社の録音ですが、充分に鮮明です。
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