電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

パトリシア・コーンウェル『検屍官』を読む

2008年02月24日 08時45分19秒 | -外国文学
ふだん、人畜無害を自称し、ホラー、スプラッタ、虐殺モノを苦手としておりますが、何を好きこのんで、犯罪と検屍の世界を描く物語を読むことにしたのか、われながら不思議です。たぶん、たまたま開いたページに、コンピュータのデータベースへの侵入だとか、クロマトグラフだとか、代謝異常やDNA分析などの、昔なじんだ用語が並んでいたからでしょう。パトリシア・コーンウェル著『検屍官』です。

主人公ケイ・スカーペッタは、バージニア州の女性検屍局長。優秀で魅力的ですが非妥協的な40歳、離婚歴あり、独身です。リッチモンドでは、一人暮しの女性を狙った残酷な犯罪が続いていました。投資会社の受付係、女流作家、教師、そして医師。被害者には互いに接点がなく、警察も捜査に苦しみます。担当のマリーノ部長刑事は、ケイに反感をかくしません。検屍局の監督官庁の責任者である衛生局長は、かつてケイに面子をつぶされたことを根に持ち、ケイにはことごとく辛くあたります。さいわい、検屍局のスタッフには恵まれていますが、コンピュータのデータベースが何者かに侵入され、マスコミへのリークの責任を追求されて、ケイの立場はいっそう悪くなるばかりです。

せっかくのミステリーですので、あらすじはこのくらいにとどめたいと思いますが、ケイの姪であるルーシーの存在が救いです。大好きなケイを仕事に取られ、ふくれてしまいますが、書斎でマニュアル片手にコンピュータとにらめっこして、データベースのSQL文を理解してしまう驚異の十歳児。この聡明さは、きっと幼い日のケイの姿なのでしょう。

相原真理子訳、講談社文庫。本書はこのシリーズ処女作のようです。
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