電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

モーツァルトの交響曲第39番を聴く

2007年08月10日 06時29分35秒 | -オーケストラ
高校時代に、芸術の選択があったのですが、音楽の希望者が多すぎて、あぶれてしまいました。で、泣く泣く書道へ。残念無念(T-T)
でも、高校生のときに購入したLPのことは、一枚一枚、たいへん鮮明に記憶しているものですね。
学生の頃に書店でポケットスコアというものがあることを知り、初めて購入したのが、この交響曲第39番、変ホ長調、K.543。昭和26年に初刷が発行されてから、およそ20年経過しておりまして、定価が160円でした。ポケットスコアを見ながらLPを聴くのは、ちょいと生意気でスノッブな楽しみ方でした。もっとも、LPは日本コロムビアのダイヤモンド1000シリーズ等の廉価盤が中心で、高価なレギュラープライス盤はなかなか購入できませんでしたが。

で、この39番。
第1楽章、アダージョ~アレグロ。ゆったりした堂々たる序奏で始まります。解説書によれば、序奏部を持つソナタ形式、というのだそうです。明るく快活な主要部に続き、なだらかで流麗な楽想と切れのいいリズムを持つ楽想とが交互に登場します。情熱を感じさせる音楽です。
第2楽章、アンダンテ。第1主題は優しいものですが、フルートに導かれて印象的に登場する第2主題は、やや暗い印象。二つの楽想が交互に現れ、やがて第3の主題が登場しますが、フルートに導かれるやや激しい楽想の転換は、当時の聴衆にも新鮮だったことでしょう。初演の記録が残っていないのが残念。
第3楽章、メヌエット。アレグレットで。大きなホールで展開される舞踏会の伴奏音楽のような雰囲気の、たいそう優美な音楽です。トリオ部の冒頭、フルートと対話するファゴットの表情が楽しい。
第4楽章、フィナーレ、アレグロで。単一動機から派生する形の主要主題と副主題からなるソナタ形式、だそうです。たしかに、同じ音型がくりかえされながら、見事なフィナーレとなっています。快速テンポに、思わず興奮しそうな音楽です。

たぶん、後期の三大交響曲の中では、一番手にする回数の多い音楽かも。響きの新鮮さ、純粋さが、魅力の源だと感じます。

ところで、いくつかの演奏を聴いていて、はてな?と思ったことがありました。演奏データと聴いた感じがずいぶん違うのです。特に第1楽章と第4楽章。
たとえば、演奏データ上では、大きく分けて、第1楽章が8分台のものと11分台のものとがあります。では、8分台のものがせかせかした演奏で、11分台のものがゆっくりした演奏かと言うと、さにあらず。例えばカール・ベームとBPOの演奏。第1楽章の繰り返しの指定をほとんど全部省略しています。ところが、バーンスタインやクーベリック、ブロムシュテットなどは、繰り返しの指定を忠実に実行しているようです。やっぱり、11分台のものがテンポがゆっくりとは限らないのですね。こうしたことは、LPのジャケット裏面に記載の演奏データからはわかりません。やっぱりポケットスコアを眺めてみないとわからないことです。
ジョージ・セル指揮クリーヴランド管の演奏は、FM放送のエアチェック・テープです。セルとクーベリックは、繰り返し記号の省略によると思われる違いはありますが、基本的なテンポはだいたい同じくらいかな。マリナーははやいほうではないでしょうか。

速いと言えばノン・ヴィヴラートの古楽器奏法、たいへんダイナミックな例が多いようです。ノン・ヴィヴラート奏法の魅力と言うのは、速いテンポで生き生きと演奏するのに適している、ということかと思います。こんどの山形交響楽団のモーツァルト全曲演奏も、古楽器奏法でオリジナルにこだわって演奏するのだとか。8月11日(土)の第1回には、この第39番が取り上げられる予定。すでにチケットは完売だそうで、どんなテンポで、どんな演奏になるのか、今から楽しみです。

■ブロムシュテット指揮ドレスデン・シュターツカペレ
I=11'30" II=9'05" III=4'02" IV=8'13" total=32'50"
■クーベリック指揮バイエルン放送響
I=11'27" II=9'11" III=4'14" IV=5'44" total=30'36"
■マリナー指揮アカデミー室内管
I=10'42" II=8'14" III=4'01" IV=5'14" total=28'11"
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