日本語学校からこんにちは ~水野外語学院~

千葉県市川市行徳にある日本語学校のブログです。日々の出来事、行事、感じたことなどを紹介しています。

「課外活動」。「募集要項」を下さい。

2008-10-24 08:01:49 | 日本語の授業
 面白いもので、渋谷の「NHKテーマパーク」のことを、出発の前日においても、「Bクラス」「Cクラス」「Dクラス」の学生達は、よく判っていなかったようのです。

 「いよいよ明日!」という昨日、「Cクラス」の中学生さんが、「私は行きました。高いです。上から見ました。びっくりしました」と、習い覚えた単語をつないで、他の人に「よかったから、君も行くべきだ」と力んで説明してくれたのはよかったのですが、聞いている当方は「あれれ、タワーなんて、あったっけ」。

 よく聞いてみると、彼はどうも「東京タワー」と「NHKテーマパーク」とを間違えていたらしいのです。「鶍の嘴と食い違い」というやつです。もっとも、「行ったことがある」という言葉に過剰に反応してしまった私が行けなかったのですが。

 「一度行ったことがある所に連れていき、しかも、新たな興味を持たせる」というのは、一度目の所に比べ、教師としての力量が必要となります。その上、相手は子供ですから、大人のように理屈でねじ伏せるというわけにもいきません。で、つい、そちらの方のことを考えていたので、失敗してしまったのです。

 まあ、初めてでよかった。だれも行ったことがなくて、ホッとしました。

 「Dクラス」ではもっとひどかったようです。まだ来て二・三週間しか経っていませんから、共通言語は確立していません。相手の表情や身振り手振り口ぶりを見て判断するだけです。単語も往々にして「勘違い語」が飛び出してくるので、それでまたみんな右往左往してしまうといった具合。中国・ポーランド・カンボジア・シンガポール・フィリピン・タイ・モンゴルから来た人達の目と口が、少ない手がかりから、ある程度の情報を掴み、それで判断しようと、懸命に動きます。

 しかしながら、「家の中」という言葉に、なぜかみんな納得してしまったそうですから、なんともはや、わからないもの。もしかしたら、建物の外を歩くと思っていたのかもしれません。

 けれども、「Cクラス」から見ると、既に三ヶ月ほどが経った「Cクラス」の学生達は、よく判ってくれるようになっています。改めて感動を覚えてしまいました。質問もするし、時々「いえ、違います」という言葉を発して説明もしてくれます。それに、ここにはカメラの上手な学生が二人いて、課外活動の時も、「みんなを平等に撮らねば」と教師がうろうろする必要がないのです。みんなを一番いい表情で撮ってくれます。しかも、みんな実物よりきれい(?)に写っているのですから、驚きです。

 昨日の授業の終わりに、インド人の学生が、一人、みんなが帰ったあとも残っていました。聞くと、「学生の『募集要項』が欲しい」と言うのです。それを帰りがけに聞きとめた、もう一人のインド人の学生が、「私も欲しい」と言い始め、三人でしばらく話をしました。

 彼女は、大学(コンピュータ)を出た弟を呼びたいということでしたが、最初に私に話しかけた学生は、「友だちに頼まれた」というのです。私が最初に「あなたのインドの大学の友だちですか」と聞くと、そうではないと答え、日本で知り合ったインド人の友だちの友だち」だというのです。しかも、「その人に会ったことがありますか」と聞くと「ありません」と答えたので、ついつい私の聞き方も詰問調になってしまいます。

 彼のつもりでは、「ここの学校はいい学校です。学生が多くなると、先生もうれしいでしょう。だから、紹介した」だったらしいのですが、「その人は勉強する人ですか」とか、「まじめ人ですか」とか、果ては「知らない人を私に紹介するのですか」とまで言われて、困ってしまっていました。これは、別に、私たちの学校が人を選り好みしているわけではなく、勉強し、進学したいという人が欲しいだけなのですが。

 中国人の学生なら、ある程度の予測はつきますし、在校生も卒業生も多く、何かあった場合助けてもらえるので、大丈夫なのですが、インド圏の学生は、まだこの学校が受け入れ始めてから歴史が浅いので、今ひとつ、だれでもいいというわけには行かないのです。

 それで、彼らには「責任」という日本語を教え、「日本では、『紹介』や『推薦』ということには、必ず『責任』が伴う」ことを伝えました。そして、「その人が勉強しません。その時には、先生はあなたに聞きます。あなたに注意してもらいます」と言うと、慌てふためいて、「私は知りません。関係ありません」。

 一応『募集要項』を彼にも渡しましたが、彼曰く「これを見て、学費のことは教えてあげますが、この『要項』は、彼にはあげません。欲しかったら、自分でこの学校へ来て、先生達と会って、もらいなさいと言います」と緊張した面持ちで帰って行きました。

 以前、中国人の学生も「中国の親に頼まれた」と言って、「募集要項」を欲しがる人がいたのですが、その時も、この「学校の考え方」を伝え、「あなたが、その人に責任を持てるというのなら、呼んでもかまわない。けれども、全然知らない人を無責任に、この学校に呼ぶのはやめてもらいたい」と念押ししました。

 能力はそれほどないけれど、「一生懸命勉強する」という人なら、私たちは拒みません。けれども、「ただ日本にいたいだけ」とか、「日本で働きたいだけ」とかいう目的で、この学校を利用されるのはたまりません。そういう人は学校へ来ませんし、来ても寝ているか、勉強したい人の邪魔になるかだけだからです。

 その上、授業のための準備を怠りなくやっている人間を、「これほど馬鹿にした話はない」と思うからです。

さあ、雨の中を、渋谷の「NHKのテーマパーク」へ出発です。「原宿」を散策の頃には止んでくれるでしょうか。「てるてる坊主」でも作っておきましょう。

日々是好日
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