日本語学校からこんにちは ~水野外語学院~

千葉県市川市行徳にある日本語学校のブログです。日々の出来事、行事、感じたことなどを紹介しています。

「『信じる』ということ」。「春の『補講』」。

2011-03-23 09:45:45 | 日本語の授業
 今朝は曇りです。昨日は一日中、しとしと雨が降っていましたが、今朝は曇り。どこかしらすっきり感じられるのは、雨上がりで、空気の匂いが違うからでしょうか。

 学生が、「この雨に濡れてもいいのか」と聞きに来ました。「濡れずに済むなら(傘を持っているなら)濡れる必要はない。用心のため」と答えました。皆、少しずつではありますが、落ち着いてきたと思います。

 恐れてしかるべき時には、恐れるべきであり、暴虎の勇を衒う必要はないのです。ただ、何よりも恐ろしいのは、デマであり、恐怖心を煽るような言動なのです。これも、つまりは、本人が正しい知識や情報を得ていないことによる、怖い怖いと思う心が生み出す妄想によるものなのかもしれませんが。

 といって、私たち日本人が、放射能や原子力発電などに関する知識を十二分に持っているということではありません。ただ、原子力発電所における「水素爆発」と、戦争で用いられる「水爆」は全く別物であるということも、(専門家によって)説明されれば、ガンマ線やアルファ線における「被曝」は水で洗えばいいということも、それが広島における「被爆」とは(音は同じなのですが、漢字が違います。意味が違うのです)違っているということくらいはわかります。

 事故が起こってから、連日、テレビでは(民放もコマーシャル抜きで)、津波や原子力発電所の事故関係のニュースの報道に明け暮れていました。それも原子力発電所のニュースの方が重きを置かれ、被災した人々の生活の方は、報道の片隅の追いやられていました。人々は、発電所への放水や、電気系統の回復に、一喜一憂していたのです。

 それも、十日が過ぎ、「いつになったら回復するかわからない」状態から、いつの間にか、「(素人でも)多分今週か来週には目処がつくだろう」という予測ができるまでになっています。これは、(日本人が)こういう仕事に携わっている人達を信じているというとおかしな言い方になるかもしれませんが、結局はそういうことなのです。「職人」的気質でもって、ことに対処しようとしてくれている、仕事をしてくれている、こういう人達を、日本人は、伝統的に、理屈抜きで見抜き、すぐに信じることができるのです。疑いは持ちません、職人肌の人には。

 不思議なもので、「職人さん」という言葉には、直ちに襟を正すという「パブロフの犬」的な反応を示す日本人であっても、「商売人」という言葉には、全く反対の反応を示します。当然のことながら、商いにも「道」があり、「常道」を歩む人達は、何よりも「信用」を重んじます。そうは言いましても、目的は、「金を儲ける」こと。だれも、彼らが、それ(金儲け)を追求することを責めることはできません。

 ただ、それが常軌を逸すれば、人は軽蔑を以て対します。いくら目的が金儲けであろうと、していい時と場所があるはずだと。それは、因果がめぐるように、いつかしっぺ返しとなってその人に返ってくるでしょうにと。

 そうは言いましても、「売り惜しみ」や、投機を狙った行動が、こういう災害が発生した時に起これば、人々は怒りを覚えるよりも先に、どうにも切ない気持ちになってしまいます。そういう行動を取るしかなかったのかと、却って辛くなってしまうのです。こういう人達は豊かであり、別に人様を困らせて肥え太らなくとも、生活には困っていないだろうにと。

 おそらく、こういう気持ちになってしまうのは、私たちだけではありますまい。

 さて、学校です。
 
 春休みの補講は、昨日から始まりました。今月いっぱいは続けます。日本に残っていて、しかも、まだ半年にも満たない学生たちは、日本語がそれほど上手ではありません。国内外からのデマにも踊らされるでしょう。彼らを預かっている日本語学校が、何の手当もしなければ、そういうことにもなりかねません。まず何よりも大切なのは、福島の原子力発電所から200㌔以上も離れている、ここでは、日本人は今まで通りの生活をしているということを、体でもってわかってもらうことです。

 地下鉄の電車が、今までの3分毎から、10分毎に変わろうとも、人々は同じように電車を待って並んでいます。これまでと、同じように学校で勉強をし(既に春休みですが、学校が補講をしていたり、来年に備えて大学や高校受験のための予備校もありますから)、会社で仕事をしています。

 この学校でも補講をしています。ただ午前のクラスを午後にして、二クラスを一クラスにしてやっています。来ているのは、留学生と、来て勉強したいという在日生たち。昨日はちょうど12人でした。そして昨日は、四月から「新クラス」で学びたいという、バングラデシュの人もやってきました。

 教室は、にぎやかな方がいいのです。進度は「一月生(今年の一月開講)」に合わせて、「初級Ⅱ」の38課からです。半年前から学んできた学生たちにとっても、ちょうどいい復習になります。さあ、この一週間で、どれほど成果を上げることができるでしょうか。

日々是好日
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