イレグイ号クロニクル Ⅱ

魚釣りの記録と読書の記録を綴ります。

「眼の誕生――カンブリア紀大進化の謎を解く」読了

2016年12月12日 | 2016読書
アンドリュー・パーカー/渡辺 政隆(訳) 「眼の誕生――カンブリア紀大進化の謎を解く」読了

以前、「ワンダフル・ライフ」を読んだときから次はこの本を読みたいとずっと思っており、やっと手に取ることができた。
この本、人気があるのか、古本屋で見つけてもけっこうな値段だ。ネットでもそこそこ。ふと思い立ち、図書館に行くと、あっけなく見つけることができた。

本書は、カンブリア期の進化の大爆発がどうして起こったのかということをタイトルのとおり、“眼”が生まれたことがきっかけであるということで説明している。

生物の区分けは界、門、綱・・・と細分化されてゆくが、門という、現在は38種類あるそうだが体の基本構造である中身のデザイン(消化管が入り口と出口が二つあるかないかとか、神経系がどうかとかいう、体制と呼ばれるもの。)のすべては先カンブリア期に出揃い、カンブリア期を迎えたときに様々な外形デザインの生物が爆発するかのように生まれたそうだ。それをカンブリア期の大爆発と呼んでいる。
ちなみにそれまでは体制が異なっても大体みんなミミズかゴカイみたいなクネクネした体(蠕虫様)だったらしい。同じような環境に暮らしていると同じような外観になるという収斂進化という法則があるそうだ。

生物が進化するためには何か圧力がないとそれは起こらない。上司に叱られないと何もしないというのと同じことのようだが、著者はその淘汰圧のもっとも大きなものが光であったと論じている。それが進化の爆発を引き起こしたというのだ。

この時代、何らかのきっかけで海の中の光の量が増えた。もともとささやかながら光を感じる細胞を持っていた生物はその感度を増大し、眼のようなものができてきた。
最初はピンホールカメラのようなものであったものがピンホールのところに角膜が生まれレンズが備わり昆虫の複眼のようなものができたり、あるいは魚のようなカメラ目ができたりしたとき、生物の視界は一気にクリアになった。

何かを捕らえて食べないことには生きてゆけない生物にとっては視覚を得たというのはものすごいメリットで、廻りにある生き物をどんどん食べてゆくこができるようになったのだが、食べられるほうはたまったものではない。今度は身を守るための進化が始まり、節足動物のように硬い殻で体を守るようになったというのである。
また、食べる生物もあるときは食べられる側に回ってしまう。あるものは硬い殻にトゲを生やし敵から身を守り、あるものは硬い殻の内側に筋肉をつけすばやい動きで敵から逃げる。
さらに、色で相手から逃げるため保護色を持つもの、光の反射で周りの色に溶け込んでしまう光学迷彩のような体色を持つものなど様々な外形デザインの生物が一気に生まれた。
これがカンブリア期の大爆発のあらすじだというのだ。

その一番最初は三葉虫。プティチャグノストゥスという1センチもない小さな柔らかい三葉虫で、“眼”らしきものが化石の痕跡にあるそうだ。節足動物というのは当時、そういう進化には一番うってつけのデザインであったらしい。


大まかなあらすじだけを書いてみると、なんだかけっこう、そらそうだよなと思えるような話だが、学会の中では画期的な考え方であったそうだ。
それを一般向けに分かりやすく書かれたというのが本書である。
それでも約400ページもあり、どことなく回りくどい書き方をされているところもあるけれども、誰からも突っ込みどころがないようにしてゆこうと思うとこんな感じになるというのが科学者の世界というものなのかもしれない。本当の論文なんてどんなものなのだろう。もっと緻密でもっと回りくどい書き方をしているのだろうか。

しかし、しかし、光があって眼ができて進化を促したのは納得がいくが、じゃあどうして眼をもたなければならなっかのかということは書かれていない。
なんでも無理に仕事をやりたくない不真面目なサラリーマンの脳みそで考えると、そもそもそんな“眼”ができたから競争が生まれ、今の世間のように生きづらい世界になってしまったのなら、あのときに眼さえ生まれていなければみんな柔らかい体でフワフワと海の中を漂っていられたのではないだろうか。わざわざそんなことに膨大なエネルギーを費やさなくても・・・。となってしまう。

それとも、こんなすばらしい世界を作ってやったのだからお前らもっとよく見ろよ!と神様が眼を無理やり生まれさせたのだろうか。
それで仏様は生きることは苦しむことだなんておっしゃるというのはなんだか本末転倒ような気持ちになるのは僕だけだろうか・・・。
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