イレグイ号クロニクル Ⅱ

魚釣りの記録と読書の記録を綴ります。

「潮の騒ぐを聴け」読了

2020年06月02日 | 2020読書
小川 雅魚 「潮の騒ぐを聴け」読了

著者は椙山女学園大学という大学の教授をしているひとらしい。タイトルと著者名(魚という文字が入っている。)だけを見て借りてみたけれども、どうもその文章の書き方にう~んと思うものがある。
大学の教授紹介のプロフィールでは、「渥美半島の先端の漁港に生まれて海辺のハックルベリーのような少年時代を過ごした。」となっている。
この本は、その海辺での体験を様々な海産物を交えて書いているのだが、その書き方が、「おれは大学教授だけれども世の中を斜めに構えて眺めているようなちょっとワルなんだぜ。」みたいな書き方なのだ。
「漁港特有の一見破天荒な人たちや、文学、芸術の面でも一流の人たちともいっぱい交流があるんだぜ。そんなバンカラなひとからインテリまでどんな人たちとも対等に渡り合えるんだぜ。」みたいな自慢げな書き方がどうも、う~ん。と思ってしまう。
それは注釈が88ページにもなっていることからもうかがえる。ここも著者の交友関係の広さと様々なことに対する蘊蓄の豊富さをひけらかす場所になっている。

そして最後はどうしてだか、元プロ野球選手の池永正明に対する熱い思いが39ページにわたって書かれている。

もとは「食と健康」という雑誌に連載されていたエッセイに手を加えて出版されたものだそうだが、要は、自分が書きたいことを書きたいままに書いているという、個人がブログを書いているようなものになってしまっている。
しかし、この本自体は第2版の重版となっている。初版の部数が少なかったのか、それとも授業用のテキストとして学生に買わせたか(僕が大学で受けた授業で、学年末試験の問題が、「自分の書いた書籍の何ページにどんなことが書いてあるかを書け。」だった先生がいた。)か、もしくは本の登場人物がこぞって買ってくれたかそれは知らないが、確かに著者はそういう意味でも顔が広いのだろう。

著者が思う懐かしい海辺の風景やそこで獲れる海産物に関する素材は僕にとっても読むことが好きな題材であるし、著者のような世の中を斜めに見ていても自分の足でしっかり立っているひとの話というのはかっこいいと思うのだけれども、そういうことを自慢話としてひけらかされてしまうと、「わかった、わかった。」としらけてしまう。それがなければもっといいエッセイになっていたのではないかと思うと残念である。

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