弁護士湯原伸一(大阪弁護士会)の右往左往日記

弁護士になって感じたことを綴っていきます(注意!!本ブログは弁護士湯原の個人的見解に過ぎません)

雇い主は従業員の不始末にどこまで責任を負うのか-福岡市と京都市の報道を見て

2006年08月29日 | 経験談・感じたこと
福岡市の職員が職務外で飲酒運転を行い、追突事故を発生させ、被追突車両が海に転落、3人死亡という痛ましい事件が大きく報じられています。
この件につき、福岡市は市長が遺族と面会したり葬儀に参列したり、全職員で黙祷する等、かなり積極的に動いているようです。

一方、市職員の不祥事が相次ぐ京都市は、京都市長が市議会で、「国民全体の犯罪発生率と比較すると、それほど大きな数値ではない」という内容の発言を行い、大クレームを受けていると報じられています。

当職が知る限りでは、上記2件とも、市職員の職務外での犯罪行為であり、雇い主である地方公共団体(市)が法律上の責任を負う訳ではありません。
従って、形式的な法律論だけからすれば、市長を始めとした幹部クラスの人達が対応する必要性は無いということになります。

ただ、弁護士をやっていて特に感じることですが、一般的な傾向として法律的な責任を負担することで全て責任を尽くしたとは考えられておらず、何らかの形で「道義的な責任」を負って然るべき、という風潮があります。
特に、コンプライアンスが言われて久しい今日では、この傾向がますます強くなっているようです。

その意味で、福岡市の対応は比較的早く対応していたので、もっと評価されても良いのではとも思いますが、ただ、道義的な責任ばかりを追及してしまうと、責任が無限大に広がってしまい収集が付かなくなります。

この辺のバランスが、今後検討すべき事項になるのでしょうね。

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