北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

造園学会in恵庭~ある企業の哲学

2006-09-08 23:40:27 | Weblog
 日陰は涼しいのに、外は蒸し暑さを感じさせる一日。でも空はもう秋空。澄んだ青さが突き抜けるようです。

【造園学会in恵庭】
 今日は恵庭市で造園学会北海道支部大会があって出席をしてきました。

 私自身も日本造園学会に所属していますが、今日はパネルディスカッションのパネラーとして、「シーニックバイウェイによる花空間整備の可能性」についてお話をするという公務で出席をしたものです。

 造園学会の北海道大会は、かつては北大校内の施設を使って行われるのが常だったのですが、昨年は札幌市民会館、そして今年は恵庭市と積極的にまちへ飛びだそうという気持ちを前面に出しています。
 学術学会というと堅苦しそうですが、造園学会の中身は植物や生態などが中心ですので、もっと市民との交流が果たせるとなお良いのですが。  

    *   *   *   * 

 今日の午後のパネルディスカッションの前には基調講演がありました。講師は自然素材を活かしたハンバーグを提供するチェーン店の「びっくりドンキー」などを展開している(株)アレフの庄司昭夫社長です。

 アレフという会社、というよりもこの庄司社長の食や農に対しての哲学にはすばらしいものがあって、社長のお話を聞くと、びっくりドンキーが単なる食にこだわった外食チェーンではなくて、しっかりした企業哲学を実現するための使命・天命なのだということが伝わってきます。

 庄司社長に「ではアレフさんでは道産のお米を使っていらっしゃいますか?」と訊きました。答えは「今はまだ使っていません」というものでした。

「それはなぜでしょう」
「まだお客様に出せるお米がないからです」社長の答えは単なる地産地消を超えたものでした。

「北海道には出せるお米がないというのはどういうことですか?」
「やはり肥料や農薬過多であったりすることは、自然に反していてそういうお米は使いたくありません。私のところの米は今は岩手県を始め全国に約400名の農家にお願いして専用に作ってもらっているもので、冬水田んぼでつくるものです」

「冬水田んぼ、ですか?」
「日本の米農業は秋に水を落として乾いた状態で冬を越しますでしょ?冬水田んぼは冬の間に田んぼに水を張っておくんです。そうすると、光の当たるところには藻が発生し、それをイトミミズなんかが一生懸命食べ続けて肥料になる糞を生産し続けるんです。そうしたら糞の層が出来て雑草は生えないしそれらは全部肥料になるんです」

「なるほど」
「そうしたら田んぼが健全になって、蜘蛛がいっぱい出てきます。それは非常によい兆候で、それらがカメムシを食べてくれます。今の農業は蜘蛛を殺しカメムシを繁栄させ、そのカメムシに困ってまた農薬を使う、ということの繰り返しで作られているでしょう。だから生態的に健康でない田んぼの米は使わないんです。一般には10回以上の農薬使用も珍しくないのですが、私たちの省農薬米は除草剤を6月に一回使うだけのお米なんですよ」

 道産米消費という観点以上の、食とはなにかという事に対する徹底的な哲学をこの企業は企業風土として持っているのです。

 幸い北海道でも当別町などに志のあるそういう道を歩もうとする農業者が出てきて栽培が始まってきたというお話も聞きました。北海道農業がさらに大きく飛躍するためには、より一層の哲学性が求められるようです。

    *   *   *   * 

「飲食産業は環境という事から逃れられないので、そのことへの対応を早くから進めてきました。今は地中ヒートポンプを使って地中の安定的な温度を夏は冷房、冬は暖房に使っています。バイオガスも実用化に向けて研究中です。原油高で企業としては年間8千万円ほど燃料代が上がるところでしたが、5千万円分まではなんとか対応をする事ができているんです。残りの分も早く対応したいと思っていますよ」

 飲食業を始めた頃に先輩達から素晴らしい教えを受けた、と庄司社長は言います。

 「損得よりも善悪が先」
 「店の大小よりもその正しさについて語れ」
 「店はお客様のためにある」
 「お客様の利益は最大に、店の利益は必要最低限に」

 今でもこれらの言葉がアレフという企業の行動規範となっているのだそうです。

 庄司社長は講演会等も多くこなし、社会的な発言を繰り返す事で世の中の食や環境問題に警鐘を鳴らし続け、自らそれらへの答えを示してくれています。
 このような企業風土、組織風土が消費者の共感を得て、それが支持、消費に繋がって行くという時代が必ずや来るに違いない。そう思わせるだけの説得力のあるお話でした。

 何のために自分たちは存在しているのか。その哲学がますます大事になっているようです。

    *   *   *   * 

 パネルディスカッションのパネラーは、私の他には中島興世恵庭市長、NPO法人花ネットワーク理事の三島敬子さんとの三人でした。
 
 テーマは「北海道における花空間の可能性」ということで、私はシーニックバイウェイによる人の活動の結果として花空間がつくられ、広がって行く可能性は大きいというお話をしました。

 しかし最後は人間と、その繋がりが鍵になります。花空間を支え、そこから情報を発信している人たちとの繋がりをもっと強化したいものです。

 GIH(ガーデンアイランド北海道)ももっと頑張らなくてはね。

 先週は蕎麦の同窓会で、今週は緑と花の同窓会。仲間がいることは楽しいものです。 
 
コメント
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