北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

都市計画学会北海道支部総会 ~ コロナ禍で都市計画はなにができるか

2021-04-10 23:52:13 | まちづくり

 

 今日は支部長を務めている、公益社団法人日本都市計画学会北海道支部の総会がありました。

 私や副支部長などの執行部7名が会議室に集まって、そのほかの参加者はZoomによるリモート参加でした。

 令和2年度の事業報告と会計報告を行った後に、令和3年度の事業計画と予算計画、そして新年度の執行部の体制を議題として会員に諮り、新しい年度のスタートです。

 私も2年の支部長任期を終えて、次は北大の高野先生に支部長をお譲りすることとなりました。

 …といっても、学会の正式な理事・支部長交代は6月の総会がタイミングなので、2か月後の交代です。

 支部長を降りても、引き続き地理総合支援の担当は続ける予定なので、まだこの分野の責任は続きます。

 振り返ると、この2年間はコロナにかき回されっぱなしで、与えられた予算も出張旅費などを使う場面が激減して、かなり余らせてしまい本部にお返しをすることになりました。

 せっかくいただいた予算でしたが、上手に使ってもっと活動的にやれなかったのが残念なのですが、こればかりはやむを得ない状況でした。

 この間支えていただいた、幹事の皆様ならびに支部会員各位には感謝申し上げます。


     ◆


 さて、今回は総会に合わせて講演会を企画しました。

 講演会の講師には、わが都市計画学会の会長で東京大学教授の出口敦先生にお願いをし、「ポストコロナに向けた都市計画を考える」というタイトルで、都市計画問題の最前線の話題についてお話を聞くことができました。

 興味深かったのは、『コロナ禍を経験する中で都市計画はどう対応するか』という問いに対して、
 ・都市の利便性に依存した集客ビジネスモデルの見直し
 ・住宅・オフィス・飲食空間・移動空間の空間仕様の転換が必要
 ・「密」を避けるための行動変容の誘導で、そのためにはデータ駆動型社会であるべき
 ・新しい生活様式として、地域のストックを生かして市民目線で今日住環境を機動的に改善してゆく取り組みが必要
 …といったことを示されました。

 また国交省都市局では、『ニューノーマルに対応した都市計画のあり方』について学識者による検討会を開催して、先日その中間取りまとめがホームページにも公開されたとのこと。

 印象的だったのは、「都市を空から見ているような計画論ではなく、地上の市民目線で求められることや必要なことを、実験的な取り組みも試みながら素早くやってみることが大切ではないか」というご指摘でした。

 コロナで在宅勤務が増えた結果、改めて自分の住んでいる地元の魅力や課題に気がついた人が増えているようだ、ということ。

 従来型の維持管理から、より広い人たちを巻き込んだ「マネジメント」によって理想に近づける取り組みが求められているようです。

 改めて、ハイレベルなお話を聞くというのは刺激的でした。

 さて、北海道は北海道のまちづくりを進めましょう。

 

 

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リアルとオンラインのハイブリッドサロン ~ 都市地域セミナー

2021-03-17 23:31:58 | まちづくり

 

 今年度二度目の都市計画学会北海道支部「都市地域セミナー」を開催しました。

 従来この都市地域セミナーは、外部講師などを招いて専門的な話を聞き、意見交換をし、その話題を掘り下げるというのが一つの形でした。

 またその際はセミナーの公開対象を会員のみならず広く一般市民にまで開放して、当学会の周知宣伝にも努めてきました。

 ところで、こうしたイベントは確かに一定の形ではありましたが、一方で学会支部会員同士での意見交換ができていない、という声がありました。

 特に、北海道支部では札幌に在住している会員が多く、それも年に一度の総会以外では互いに顔を合わせて意見を交わすという機会がほとんどありません。

 そこで今回は、会員相互の意見交換と、特に札幌以外在住の会員の皆さんが、その地域でどんなことを感じているかということを中心に意見交換をしたいということで、会員のみ参加のクローズドな形で、しかも札幌の会場に集まったメンバーと、地方をオンラインで結ぶという、リアルとリモートのハイブリッドな形での開催としました。


     ◆


 進め方として共通のテーマ設定が難しかったのですが、「観光をはじめとする交流をまちの活性化にどうつなげるか」ということにして、参加者がそれぞれ思うところを述べてから、自由な意見交換になりました。

 会場には、一堂に会していながら一人一人の前にはZOOMのためのパソコンを持参していて、集団と個人のハイブリッドは不思議な感覚。

 しかしいざやってみると、ネットの回線の力が十分ではなくて通信が時々途切れてしまいます。通信インフラを気にしながら進めるというのは議論に集中できないネガティブな条件でした。

 またネットを介した声が、会場でのリアルな会話とタイムラグがあることから、ネットとリアルのどちらの声を聴いたらよいのか、などハイブリッド進行ならではの難しさも明らかになりました。

 どうせネットを使うのなら、参加者は同じ会場には集まらないほうが良いみたいです。

     ◆


 一方話の内容は、各地域にいる人たちの意識が高くて興味深い話題がぞくぞく提供され、また一人がむやみにしゃべりすぎることもなく、スムースな進行ができました。

 個人的には人気番組「アメトーク」のなかの企画「立ちトーク」のような感じで、話題がどんどん移ってゆくのを面白く感じました。

 観光で言うと、「今コロナのために移動できないが観光を求めている外国人たちは、訪問したい先の動画を漁るように見ているので、大いに発信すべき時ですよ」という話から、「しかし動画で発信する際には、長い動画は無用で、せいぜい1分で収まるような単位にしたほうが良い」とも。

 楽しく観光のできる日を目指して、できることを地道にやっていきますか。

 こういうオンラインサロン的な催しの可能性を感じました。

 

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最近増えている「ドメーヌ・〇〇」というワイン、ドメーヌってなに?

2021-03-14 22:43:01 | まちづくり

 

 余市のとあるワイナリーへ行って来ました。

 こちらのワイナリーでは、会員になって1万円を払うと、8年間にわたって毎年1本ずつワインがプレゼントされるという企画があります。

 プレゼントは遠隔地で送ってもらう分には送料がかかりますが、取りに行けば無料。

 我々は夫婦でこちらの会員になっているので、春のこの時期にプレゼント開始のハガキが届くと受け取りに余市へのドライブを楽しみます。

 プレゼントのワインは何種類かから選べるのですが、買えば一本大体2~3千円はするものなので、お得感があります。

 しかしワイナリー側にすれば、こういう形で関係性が保たれていれば何かの時に立ち寄って食事をしたりついでにワインを買ってくれる上客になることが期待されるので、やはりメリットがあるのでしょう。

 今日も、プレゼントワインを受け取るだけではなくやはりついでに2本ほど買い足しました。

 ちょっとした特別な日には良いワインを開けることにします。


     ◆


 余市と言えば以前から、土地が安く気候が良いというので果物栽培が盛んでしたが、生の果物を作るだけではなく、ワイン用ブドウの適地としてワイナリーがどんどん増えています。

 特に最近は「ドメーヌ・〇〇」と名乗るワイナリーが増えてきています。

 "ドメーヌ"とは、小規模ながら「自社畑のブドウのみからワインをつくる生産者」のことだそう。

 ここ余市にはそのドメーヌを名乗るワイナリーが多く、この土地ならでは風土を味わうことができます。

 なかには名の通ったレストランで採用されるほど質の高いワインもあって、余市町内でも簡単に手に入れることは難しいものもあります。

 さらには、あろうことか町内で定価で売られたワインがネットオークションで高値で転売されるような事例もあるらしくて、純粋に地域の味を楽しみたいという気持ちの周辺にはギラギラした人の欲も見え隠れして心が痛みます

 余市町内には、そんなドメーヌワインをボトルで買えなくてもその場でなら飲めるという、その地域コミュニティならではのレストランもあります。

 今日ランチを食べた「Jijiya・Babaya」さんもそんなイタリアンレストラン。

 こちらでは「ドメーヌ・タカヒコ」さんのワインをグラスで飲むことができます。

 お隣のカップルの女性がお昼から美味しそうにタカヒコさんのワインを飲んでいてうらやましかったです。

 ワイン生産地の地域性を生かすって、こういうことも売りになりますね。

 今、余市はちょっと面白いです。

 

 

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「豪農」という単語から榛村さんとの対談を思い出す

2021-03-09 23:57:50 | まちづくり

 

 昨年、菅義偉さんが自民党総裁選を前にしたときに、「虚飾の履歴書」と言った言い方で、菅さんの自分のプロフィールに偽りあり、という論評が出たことがありました。

 菅さんの自分評は、「自分は雪深い秋田の農家の長男として生まれ、地元で高校まで卒業し、卒業後、すぐに農家を継ぐことに抵抗を感じ、就職のために東京に出てきた」という苦労談に彩られています。

 ところが実際は菅さんの父は満州鉄道のエリートで、イチゴ栽培が成功して町議を4期も務め、決して貧乏な農家の出などではなく逆に豪農と言っても良いくらいだ、という批判でした。

 この「豪農」という単語に引っかかって、榛村さんとの対談を思い出しました。

 
     ◆


 私は掛川を離れてからも何度か榛村さんのご自宅をお訪ねして問答をしました。

 それはいつか榛村さんもいなくなるのかもしれないという危機感というか焦りもあったのだと思います。

 また改まって問答をしていると、過去に3年間もの間一緒にいて、いろいろな話を聞かされたにも関わらず、まだそれまで知らなかったことを教えてもらったものです。

 それは多くの読書や経験を踏まえたうえで、それを自分なりにどう話すか、どうネタにするかということを普段から考えていたからに違いないと今では思います。

 そうでなければ、ただ本を漠然と読んだだけではそのネタがすっと出てくるはずはありません。

 私が印象的な、『豪農』という単語が出てきた問答は、2016年5月24日に榛村さんのお宅を訪ねて、4時間にわたってお話を聞いた時ときのことです。

 
 
【榛村さんとの対談 その1 2016年5月24日】
 http://bit.ly/3l04Jkq

【榛村さんとの対談 その2 2016年5月25日】 
 http://bit.ly/3qtOGMP

 
 
 このときに、私が「榛村さんは地方行政を担わないといけないという責任感が強いように思いますが」と水を向けると、榛村さんは、「明治維新って、薩長土肥が徳川が憎くて潰したんだけど、潰してみたところで今度は何をどう作ったらよいか、ということが分からなかったんだ」と話を飛躍させました。

「考えてみればそうですよね」
「そのときに、うちもそうだけど地方には十代以上続いた家が"豪農牧民官"として『こりゃなんとかしなくちゃいかん』ということで地域を支えた。全国で七~八千軒くらいあったと思うけど、地域を混乱に陥れないようにと頑張って支えたんだよ」

「豪農牧民官…ですか」
「はは、旧自治省は牧民思想と言って、『民を牧(やしな)う』ことが自分たちだという考えだったんだよ。しかし第二次大戦の敗戦によって財閥が解体されたのと、農地解放で豪農が力を失ったね。今は地域社会を支える力のあるような存在がなくなったんだろうな」


 …という会話が記録されています。

 今菅さんが総理大臣になったときの、「自分は秋田の貧農の生まれだ」と自称したのは、「貧農から出た政治家」という演出の方が「恵まれた豪農の子供」という姿よりも世間の共感を得やすいと思ったのでしょうか。

 しかし「豪農牧民官」という言葉や歴史を知っていれば、単に貧乏か裕福かというくだらない二者択一ではなく、その昔に自覚と責任をもって民を率いた家柄の出ということを演出できたのかもしれません。

 世の中の政治家が品性とともにボキャブラリーを失いつつあるように見えるのは残念です。

 勉強の成果はその一瞬に顕れます。

 私の過去のブログも自分では書いたことを忘れていて、こうやって読み返すと結構勉強になっているのです(笑)。 

 

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ブラタモリを表彰してあげたい

2021-03-08 22:40:31 | まちづくり

 

 今日は都市計画学会の理事会がオンラインのリモート会議で開催されました。

 理事会がリモートで始まった一年くらい前には、「やっぱり顔を見てやらないと意思疎通が図れない」とか「会議が終わった後の懇親会にこそ意味がある」などと、通常との違いに不平を述べていた人が多かったのですが、一年経ってみると、これが新たな日常になりました。

 何と言っても、飛行機に乗ったりして移動することがないので体が楽。

 おまけに会議の始まるギリギリまで自分の仕事ができて、終われば会議から退室すればすぐに自分のプライベートに戻ることができます。

 会議のための出張って、やっぱり時間と体力の無駄だったのかなあ、と思うのがポストコロナの新たな日常になりそうです。


     ◆


 さて、そんな学会の会議ですが、今日は表彰委員会という会議も開催されて、年に一度、この学会に大きな貢献をした方を名誉会員として推挙するという打ち合わせをしました。

 今回は1名の推薦の話で、それはすぐに了承されたのですが、意見交換の中で面白い話題が出ました。

 それは「会への貢献者を表彰するという話なのですが、その対象者は必ずしも会員でなくても良いし、会員外でも我々の活動を側面から応援してくれているような方でも良いのではないかと思うのです」という意見でした。

「具体的には、ブラタモリというまち歩きの番組そのものとか、それを軽妙に案内してくれているタモリさん本人とか、ね。ブラタモリを観ていると、地形や地物、歴史からなるまちづくりが面白いかを上手に表現しています。『まちづくりとは』と難しい説明をするよりは、ブラタモリを観ている人には『ああ、あれですか』ときっと強く伝わると思います」

 今、高校で来年4月から新しく『地理総合』という科目が登場して、なにがしかの形で高校生が世界や自分たちの地図を学び、そこで起こっている地域の問題を考えようとしています。

 そんな子供たちにも難しい講義をするよりは、感心しながら笑いながらまちづくりが学べるテレビ番組は非常に参考になることでしょう。

 そんな番組やタレントを表彰するというのは面白いアイディアです。

 何事も楽しそうに伝える力って大事なのです。

 

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