フィギュアスケート世界選手権大会は韓国のキム・ヨナが優勝。得点も女子では発の200点オーバーという快挙。
日本選手では安藤選手の3位が最高で期待された浅田真央ちゃんは4位。表彰台を逃したのは久しぶりとのことでしたが残念でした。
ところでこのジャッジについて、素人はどこがどうだったのでその点数になっているのかが分かりづらいのですが、さすがは集合知のネットの世界。スケートに詳しい方が分かりやすい文責をしてくれています。
「Mizumizuのライフスタイルブログ」がそれですが、問題の記事のタイトルは「もはや発狂、発火、キム・ヨナの演技・構成点」というもの。
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http://plaza.rakuten.co.jp/mizumizu4329/diary/200903300000/
今回のジャッジがどのような問題を含んでいるのかが分かって大変興味深いです。
一番不思議なのは、総得点が200点オーバーというすさまじい点数なわけですが、これは男子よりも高い点数なわけです。そのすごさをMizumizuさんは「銀河点」という表現で表しています。
以下少しだけ引用しますね。
※ ※ 【以下引用】 ※ ※
正直、もうフィギュアねたを書くのはやめようと思ったのですが、ブログを開けてみるとなんとまぁ、こんな個人ブログに1日で3万2000件ものアクセス。
きのうも2万件でしたので、やはりエントリーを期待されている方が多いとわかり、最後にあと数回だけ書こうかという気になりました。それをもってMizumizuはフィギュアの世界から出て行こうと思います。長く愛好してきましたが、「もう付き合いきれない」という気分です。ブランケッティさんの言う「消えた観客」の1人になるときが来たようです。
多くの方が呆れたキム・ヨナの銀河点。加点については、客観的な数字で奇妙さが示しにくいので、一番わかりやすい演技・構成点に焦点を当ててみましょうか。
今回の異常な点数は、もはや発狂したとしか思えない演技・構成点なくしては説明できません。
まずは、日本中のファンの目が点になったショートのキム選手の得点のうち、ジャッジがつけた演技・構成点。
キム・ヨナ選手自身の直近の4大陸と比べてみると、その異常な爆アゲぶりがわかります。
スケートの技術 (4大陸)7.6→(世界)8.45 0.85点もアップ
つなぎのステップ (4大陸)7.1→(世界)7.75 0.65点もアップ
演技(パフォーマンス) (4大陸)7.65→(世界)8.5 0.85点もアップ
振付 (4大陸)7.55→(世界)8.05 0.5点もアップ
音楽との調和(解釈) (4大陸)7.65→(世界)8.15 0.5点もアップ
今回総じて、点数は高く出ました。では、他の選手はどうでしょうか?
ロシェット選手
スケートの技術 (4大陸)7.3→(世界)7.55 0.25点アップ
つなぎのステップ (4大陸)7.0→(世界)7.35 0.35点アップ
演技(パフォーマンス) (4大陸)7.25→(世界)7.7 0.45点アップ
振付 (4大陸)7.55→(世界)8.05 0.4点もアップ
音楽との調和(解釈) (4大陸)7.65→(世界)8.15 0.3点アップ
浅田選手
スケートの技術 (4大陸)7.4→(世界)7.75 0.35点アップ
つなぎのステップ (4大陸)6.85→(世界)7.15 0.3点アップ
演技(パフォーマンス) (4大陸)7.2→(世界)7.6 0.4点アップ
振付 (4大陸)7.25→(世界)7.64 0.4点アップ
音楽との調和(解釈) (4大陸)7.25→(世界)7.55 0.3点アップ
どうですか? ロシェット選手と浅田選手の「あがり具合」がかなりきれいに拮抗しているのに対し、キム選手の爆アゲぶりがわかりますね。
つまりキム選手は、わずか1ヶ月の間に、演技・構成点の5つのコンポーネンツを抜群に磨いてきたのですね。素人目にはほとんど、いやまったくわからないのに、さすがに選ばれたジャッジの目は違います。スケートの技術は1点もあがっちゃったんですね。いやぁ、すごいです。こんな選手はフィギュア史上初でしょう。天才ですね。
タテマエ上は、演技・構成点も他の選手と比べた「相対評価」ではなく「絶対評価」。どういうことかというと、5つのコンポーネンツの点数が「絶対的にどのくらいの価値をもつか」を数量化したものということです。
たとえば100点満点のテストでは、80点取った人より90点取った人のが優秀です。ですから、ある選手とある選手の「スケートの技術」の点数を比べれば、その数字の差で、優劣がわかるわけです。
「キム選手のスケート技術って男子並みなんですか?」というメールもいただきましたが。
いいえ、キム選手のスケート技術は男子以上なんですね~。
男子ショートで4+3を跳び、トリプルアクセルを決め、スピンもステップもレベル3から4で加点ももらってトップになったジュベール選手とらべてみましょう。カッコ内がヨナ選手です。
7.8(8.45)、7.3(7.75)、7.75(8.5)、7.7(8.05)、7.85(8.15)
スケートの技術はジュベールでさえ、8点台は出ていません。つまり、ヨナ選手の技術は、男子を上回っているんです!
4回転も、そのコンビも、3Aも跳べないヨナ選手が、なぜ?
それは・・・
トータル・パッケージだからです! そして、そうジャッジが点を出したからなんです!
そのココロは? 素人のワタクシにはわかりません。ただ、演技・構成点をそこまで爆アゲしたかった理由は、「なんとかできるだけ得点を上げたかった」と考えれば辻褄が合います。
ショートの場合、男子の演技・構成点は実際の得点にそのまま反映されますが、女子の場合は8掛けになります。そうやって、もともと主観でつける演技・構成点の差をなるたけ少なくしようという、採点システムを作ったときの良心なんですね。8掛けにしかならないので、よっぽどジャッジが点差をつけないと、実際の得点の差になってきません。
テレビで言ってましたよね。キム選手は過去に10点差を浅田選手にひっくり返されたと。だったら、10点以上ぶっちぎっておけば、かなり安心ですよね。
では、女子と男子の演技・構成点というのは、どういうふうに出てくるのがこれまでの慣例でしょうか?
昨季の世界選手権のショートで一番評価された高橋選手と浅田選手とキム選手自身の点を比べてみましょう。
高橋(浅田)キム
7.86(7.43)7.21、7.64(6.89)6.71、7.79(7.36)7.00、7.89(7.21)7.14、8.07(7.21)7.11
これが事実です。男子は総じて、女子より高く出ます。高橋選手でさえ、音楽の解釈でわずかに8点を上回っただけです。
今回のキム選手の
8.45、7.75、8.5、8.05、8.15
という点がいかに、これまでのフィギュアの常識をくつがえすものかわかるでしょう。
この点を見たとき、「フリーはどうするんだ?」と思いました。普通の点に戻して知らんふりするのか、このまま突っ走るか。
ジャッジの判断は後者でしたね。
さすがに、ショートで1人だけ8点台では、いかにバカな素人でもおかしいと気づくと思ったのか、他の選手にも適当に8点台を与えるという「一緒アゲ」になりました。
キム選手のフリーの演技・構成点
8.5、8.25、8.7、8.6、8.7
安藤選手のフリーの演技・構成点
7.95、7.65、8.15、8.05、8.15
ちなみに安藤選手の初戦のアメリカ大会(このときもキム選手が1位)は、
6.95、5.65、6.85、6.6、6.55
安藤選手はシリーズ序盤、ずっと低くつけられ、モロゾフがジャッジに説明を求めに行っています(要は圧力)。5.65ってのが、ふるってると思いませんか?
今季はこんなに異常に上がったり下がったりするんですよ。これを「表現力」で説明できますか?
Mizumizuにはできません。
では、男子の世界王者となったライザチェックのフリーの演技・構成点は?
7.7、7.45、7.65、7.7、7.6
これが男子フリーで最高でした。それでも8点台なんて、ありません。
またまたキム選手の演技・構成点は男子王者をはるかに凌いでいるのです! スケートの技術に関してはぶっちりでライザチェックを見下ろしています。2度目のルッツは回転不足気味で着氷の軸が傾き、3サルコウは跳べずに2サルコウでも回りきらなかったキム選手が、です。
この発狂点がどのくらい発狂してるか、トリノでジャンプでもステップでもスピンでも表現力でも「他の選手とは次元の違う」演技をしたプルシェンコ選手に登場していただきましょう。
あのときのオープニングの4T+3T+2Loはすごかったですね~。それからすぐに3A+2Tを跳んでしまいました。ステップの速さも度肝を抜かれましたね。
プルシェンコのトリノのフリーの演技・構成点(カッコ内が今回のキム選手)。
8.46(8.5)、7.75(8.25)、8.39(8.7)、8.18(8.6)、8.43(8.7)
トリノの男子フリーではバトル選手が8点台を1つ出しただけですから、プルシェンコがいかに傑出していたかわかるでしょう。
そのプルシェンコを…
スケート技術で上回り、つなぎのステップでも上回り、演技・振付・音楽との調和でも上回っていたのです! 去年までそこそこ跳べていた3ループも跳べなくなり、サルコウも劣化したキム選手がです。ジャンプ跳べなくなっているのに、どんどん点が上がる… あ、トータル・パッケージだからですか、なるほど。
申し訳ありませんが、もはや理解不能です。
いや~、凄すぎます。ぜひトリノでプルシェンコとガチンコ勝負してほしかったです。そうやって現場でくらべれば、Mizumizuのような素人でも、キム選手の「表現力」が理解できたかもしれません…【以下略】
※ ※ 【引用おわり】 ※ ※
いかがですか。難易度の高い技をこなした男子よりも高い点が出る不思議。
キム・ヨナのコーチがカナダの有名選手で今大会もカナダで…うーむ…、私は答えを知りませんが、皆さんはどのように感じたでしょうか。
しかもテレビ放送ではこうしたことはいっさい語られないこれまた不思議。解説者はこういうことが分からない人が担当しているとか…??
安藤さんも真央ちゃんも大変なところで戦っていたんだな、ということが改めて感じられました。
なるほど、すごい世界です、ふー。
ちなみに、「平御幸(Miyuki.Taira)の鳥瞰図」
http://blog.goo.ne.jp/efraym/d/20090329 もちょっと気になります。