浪人中に治療した差し歯の根の部分に違和感を感じてかかりつけの歯医者さんに行ってきました。
レントゲンを撮って根の部分を見ましたが、わかるほどの病巣はみつかりませんでした。
歯医者さんは「これって相当昔の治療でしょ?何年位前です?」と訊くので、「大学浪人をしていた頃ですから48年前の作品です」と返答。
「はー、ずいぶん持たせたもんですね。それだけ使っていたなら今になってそこにバイキンガ入るということは考えにくいですけどね。ちょっと抗生剤で様子を見てみましょう」
そういえばこのときは「次の大学受験の時に歯が痛くなって試験に影響があるといやだから歯の治療に行こう」ということになって借りていた家の近くの歯医者さんに通ったのでした。
ただ近いということで選んだ歯医者さんでしたが、きわめて腕の良い歯医者さんでその後も何かあればずっと面倒を見てもらったのでした。
そのときも「この差し歯で何年もちますか?」と訊いたことがあってその時の答えは「うーん、十年かなあ」ということだったのですが、なんとなんともう50年近くももってくれました。
今の歯医者さんに「治療してくださったのは駅裏のO歯科のY先生と言う方でしたよ」と言うと、ご存じのようで「ああ、彼かあ。同窓会で会いますよ」とのこと。
そんな会話の中で約50年前のことが思い出されました。
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当時のO歯科にはNさんというものすごい美人の歯科衛生さんがいらっしゃって、治療を受けるときにはドキドキしたものです。
治療に通ううちに身の上話などを聞いてもらえるようになり、今は浪人中で4人で同居しながら勉強しているというような話をしました。
すると「ちゃんとご飯食べてる? お米上げようか?」と言ってくださりました。
聞けばこの方の実家は妹背牛のお米農家で「実家からお米を送ってきたのがあるから今度上げるわよ」と言ってくれました。
その次の治療の前に同居していた友人が先にその歯医者さんに行くというので、「じゃあNさんからお米をもらってきてよ」とお使いを頼みました。
友人は歯医者から帰ってくるなりお米を部屋にどさっと置いて「いや~、歯医者さんでお米をもらうなんてめちゃくちゃ恥ずかしかったぞ!」と文句たらたら(笑)。
そこから先は記憶があいまいなのですが、多分そのお米を食べて受験に臨んだはずです。
私も長年は医者に通っていますが、後にも先にも歯医者さんでお米をもらったのはあの一度限りです。
今みたいにお米の値段が高くて困るというようなときではありませんでしたが、暗くてつらい浪人時代の後半になって、日常に一筋の光が差した出来事でした。
思い出せば青春だったなあ。