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「竹下村誌稿」を読む 309 産業 5

(静岡城北公園のケヤキの紅葉と富士山)

午後、駿河古文書会で静岡に行く。今日の解読講義の担当は、副会長のNN氏である。当会で最も講義が上手と誰もが認める先生である。声も大きく、ゆっくりと誰にでも解りやすい講義は、まねるべくもないが、何とか自分も近付きたいと思い、せめて声は大きくゆっくりと話すように心掛けている。何時か、NN氏のレベルの半分ぐらいまで、行きたいものである。

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「竹下村誌稿」の解読を続ける。

挿秧(田植え) 六月四、五日頃より、早稲を移植し、中、晩稲は二十日頃までに終わる。皆な正條植にして、一坪の株数は、早中晩によりて多少その数を異にすれども、六十株乃至四十九株位とす。近来改良植と称し、東西は普通にして、南北へ密植するものあり。
※ 正條植(せいじょううえ)-苗の列を整え、間隔をきちんととって植えること。

本田肥料 二毛作の場所には、四月上旬一反歩当り田豆一斗二升内外を栽培し、なお堆積肥料(堆肥)を用い、豆粕、油粕、完全肥料を用い、また両三年已来、田豆に換えて紫雲英を栽培するものあり。近来学術の進歩に伴い、経済と学理の応用とに注意し、その価格と肥料の成分とを比較して購入するに至れり。
※ 田豆(たまめ)- 大豆(だいず)の別称。
※ 豆粕(まめかす)- 大豆から油を絞りとった残りの粕。飼料や肥料にする。
※ 完全肥料(かんぜんひりょう)- 肥料の3要素である窒素・燐酸・カリウムを適当な割合で含む肥料。
※ 紫雲英(げんげ)- レンゲソウ(蓮華草)のこと。


除草は挿秧(田植え)期に早晩あれば、自ら多少の差異は免れざるも、一番除草は六月下旬に始め、それより八月中旬頃まで三回を行なう。一番は蟹爪を用い、その他は手取りとせしも、今は毎回太一車にて株間を縦横に掻き廻して除草せり。従前は一人一日四、五畝歩に過ぎざりしが、太一車を使用すれば、一日一人にて三、四反位を除草し大いに人力を省けり。
※ 蟹爪(かにつめ)- 雁爪(がんづめ)とも。三~五本の内側に曲がった鉄製の爪のついた農具。除草などに用いる。
※ 太一車(たいちぐるま)- 明治中期に鳥取の中井太一郎により発明された、回転式中耕除草機。除草のほか、有機質肥料を施用した水田で増収効果がある。


灌漑は挿秧(田植え)後、除草期間はかなり浅水となし、開花期を過ぐれば排水をなす。
※ 灌漑(かんがい)- 農業生産の効率化のために、土地に対して人為的に給排水すること。
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