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「竹下村誌稿」を読む 133 質侶庄 20

(庭のニオイバンマツリ)

ニオイバンマツリは、我が庭に住み付いてから何年経つだろう。毎年、この季節に花を付ける。花の色が咲き初めの紫から白へと変化し、さわやかな芳香があるため、こんなネーミングがされた。

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「竹下村誌稿」の解読を続ける。

また掛川藩儒松崎慊堂の手になる河井氏碑文中に、「宗忠、見兵を督し、奮撃し、克ちて、因幡(鶴見因幡守栄寿)を獲(え)る」と見ゆれば、鶴見氏、また戦死せしものゝ如し。これ的当なる徴証に非ずといえども、記して後考を存す。
※ 督す(とくす)- ひきいる。統率する。
※ 的当(てきとう)- 明らかで確かなこと。間違いのないこと。
※ 徴証(ちょうしょう)- あかしとなる証拠。
※ 後考(こうこう)- 未解決の問題などを、あとで考えること。また、後代の人の考え。(なお、慣用としては「後考を待つ」或いは「後考を期す」など)


この横岡城(宇田城)はその地形を按ずるに、東南大井川に突出し、宇田里沢、その北を繞(めぐ)り、西は二重の空濠をめぐらし、長者原と称する高台を負い、面積凡そ一町歩余ある小砦(ことりで)にして、今、外濠は埋めて畑となり、その面影を存せずといえども、一見して要害の地たるを失わず。その遺跡は歴然としてこれを認め、四百三十年の昔を偲ばしむるものあり。
※ 要害(ようがい)- 険しい地形で、敵の攻撃を防ぐのに便利なこと。

大手の下には城下(しろした)と云う地名を存し、搦め手の方には矢の沢と云う所ありて、この城、陥落の際、長者原より射下したる矢の堆積せし所なれば、この名ありと云う。また城中、古井あり。直径六尺許り、周囲石を以って畳み、今は水浅(あ)せて、その形を存するのみ。伝云う、鶴見氏戦没の時、妻女その井に投じて死す。その霊、朱唇の小蛇と化して井中に栖息し、今もその付近に朱唇の小蛇を見ることありと。この事、素より不稽の讒(そし)りを免れずといえども、記して口碑を存するのみ。
※ 搦め手(からめて)- 城やとりでの裏門。陣地などの後ろ側。⇔大手。
※ 畳む(たたむ)- 構築のために石などを敷き詰めたり、積み重ねたりする。
※ 不稽(ふけい)- 根拠がないこと。また、そのさま。でたらめ。
※ 口碑(こうひ)- 古くからの言い伝え。伝説。


読書:「ふるさとの声」 松田宏 著
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