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「壺石文」 上 22 (旧)七月廿一日、廿二日、廿三日

(城北公園のクスノキの花 / 5月12日撮影)

いつも頭上高く咲くので気が付くことがないクスノキの花である。枝が大きく垂れていて、デジカメに撮れた。

午後「古文書に親しむ(経験者)」で講義、2時間。くたびれた。

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「壺石文 上」の解読を続ける。

廿一日、曇れゝど雨降らず。夜深く起きて、餌袋など取り、認(したた)む。日ごろ借りえて、物したる硯の箱に、
※ 餌袋(えぶくろ)- 菓子や乾飯(ほしいい)などを入れて運ぶ袋。

   草枕 旅居の友と 見る石の
        倦
(う)みて分かると れな思い
※ な~そ - ~してくれるな。~しないでくれ。~するな。

(ひる)ばかりならんかし、立ち出でなんとしけるに、あるじの別(わか)たれ難く見えければ、

   旅衣 立ち別れても 立ち帰り
        また阿武
(逢う)隈の 河の辺の宿

日頃、降り続きたる雨に、山路の浮泥(うきひじ)深くて、行き(なず)つゝ、(こう)じあえり。夕暮れのかわたれ時に、辛うじて、矢吹という宿に至りて宿る。
※ 浮泥(うきひじ)- どろ。
※ 滞む(なずむ)- 物事がはかばかしく進まないでいる。進むのに難渋する。とどこおる。
※ 困じあえり(こうじあえり)- れい。
※ かわたれ時(彼は誰時)- はっきりものの見分けのつかない、朝夕の薄暗い時刻。
※ 矢吹宿(やぶきしゅく)- 奥州街道34番目の宿場。現、福島県西白河郡矢吹町。


廿二日、曇りみ晴れみ、空定めなきに、日出でて後、宿りを発ちて大なる原を行くに、女郎花(おみなえし)いと多く、艶(なま)めきたてり。悔しくもよべは、
※ 曇りみ晴れみ(くもりみはれみ)- 曇ったり晴れたり。
※ よべ(昨夜)- きのうの晩。ゆうべ。


   旅ごろも かたしきてけり 女郎花
        多かる野辺に 宿りてましを

※ かたしく(片敷く)- 自分の衣服の片袖を敷いて独り寝をする。
※ 百人一首に「きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに 衣かたしき ひとりかも寝む」


(廿三日、)須賀川の常宝院に宿る。千代倉のたよめと言うを訪(とぶら)いけれど、あらずとて会わず。
※ 須賀川(すかがわ)- 現、須賀川市。福島県中通りの中部に位置する。

   名に愛(め)でゝ 見にこそ来つれ 女郎花
        居り違
(たが)えたる ことの悔しさ

   言の葉の 露だにかけよ 思うこと
        言わぬ色なる 花にはありとも
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