平成18年に60歳を迎える。六十と縦に書くと傘に鍋蓋(亠)を載せた形である。で、「かさぶた(六十)日録」
かさぶた日録
「壺石文」 上 6 (旧)六月十二日、十三日
暮れに頂いた花の苗の内、中々花が咲かなかったものが、ようやく咲きだした。名前はネットで時間を掛けて調べた。北米西部、カリフォルニアやオレゴンに分布する、秋まきの一年草だという。
孫たちに、昼はラーメンとうどんを作った。一日にぎやかであった。
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「壺石文 上」の解読を続ける。
十二日、昨日の如し。やゝ夕づく頃、あるじの男(おのこ)を標にて、小山の判官が城の跡という所を行って見るに、草木高く生い茂りたる野ら山にて、水なき溝、深く掘りたる。あわれ(ああ!)何時ばかりよりか、掛かりけんかし。折しも、蜩(ひぐらし)の鳴きければ、
※ 夕づく(ゆうづく)- 夕方になる。日暮れに近づく。
※ 標(しるべ)- 道案内。道案内をすること。
※ 小山の判官が城(おやまのはんがんがしろ)- 鎌倉時代末期から南北朝時代にかけての武将小山秀朝が領していた下野国小山城。秀朝(ひでとも)の官位は大夫判官であった。
荒れ果てし 小山の城の 跡訪えば
木高き陰に 日ぐらしぞ鳴く
蜩(ひぐらし)の 声に気負いて 露ちらう
夏野の草を 分けぞ煩(わずら)う
※ 散らう(ちらう)-(散らふ)散りつづける。しきりに散る。
坪前栽の処なりとか言いて、七ツ石とて、いと大なるが草生(む)したる多かり。
※ 坪前栽(つぼせんざい)- 中庭の植え込み。
水注ぎ 塵払らわれし 花の朝(あした)
月の夕べの 代(よ)を偲ぶらん
あわれの事よ、思い川というも近く流れて、見渡し、生い茂げなる柳原なり。
今もなお 武士(もののふ)どもの 思い川
ありて流るゝ 水のうたかた
※ うたかた(泡沫)- 水面に浮かぶ泡。はかなく消えやすいもののたとえ。
西の方、遥かに大平山という山も見ゆ。
十三日、祇園山天翁院とかいう古寺に、ふと詣でゝ、後ろの草むらの露を分け、蜘(くも)の糸を払いつゝ、半町ばかり入りて、小山の判官天翁孝運大居士と書き付けたる娑都婆(卒塔婆)のよろぼい立ちたる墓所を見るに、ただ荒れに荒れて、高く生い茂りたる浅茅の中に、ささやかなる石の五輪の塔のみ立てり。
※ 小山の判官天翁孝運大居士 - 小山の判官小山秀朝(おやまひでとも)の法名。
※ よろぼう - 倒れかかる。くずれる。
※ 浅茅(あさじ)- まばらに生えた、または丈の低いチガヤ。
※ チガヤ(茅)- イネ科の多年草。荒れ地などに群生。高さ30~60センチ。春、白い毛のある小さい花を穂のように多数付ける。
居着きけん 八十伴の緒も 絶え果てゝ
御墓(みはか)仕(つか)うる 奴(やっこ)だに無し
※ 八十伴の緒(やそとものお)- 多くの部族の長。朝廷に仕える多くの役人。
読書:「遠州浜松殺人奏曲」梓林太郎 著
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