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「壺石文」 上 24 (旧)七月廿四日

(裏の畑のニンジンの花)

変わった花だと、調べてみたら、誰かに頂き、植えて忘れられたニンジンの花であった。意外と皆んな知らない花である。

夜、金谷宿大学の学生代表の会合と、その後、役員会があった。運営費のことで一揉めあったが、改めて近く役員会を持つことで散会した。

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「壺石文 上」の解読を続ける。

廿四日、夜深く起きて、けぶり(煙草)吹く。空、うす曇りたる心地すれど、遣り戸明けて見出せば、有明月夜おかし。庭の草村(叢)に虫のなくを聞きて、
※ 有明月(ありあけつき)- 陰暦16日以後、夜が明けかけても、空に残っている月。

   旅人の 寝覚めて聞けば 秋の夜の
        草の枕に 虫もわぶめり

※ わぶ(侘ぶ)- せつなく思う。寂しく思う。

日出でゝ後、こゝを発ちて、東町という所より右に折れて、半町ばかり来て、堤の渡しという越し舟に乗りて渡る。阿武隈河なりとなり。こゝに至りてはやゝ深く見ゆ。小山の麓、小野の中道を二里ばかり来て、谷田川村という所に至りてぞ憩う。また二里ばかり同じ様なる道を来て、河曲という村にぞ至りける。名も著く曲りて流れくる小川に添いて、山蔭によろぼい立てる一家あり。
※ 東町(ひがしまち)- 現、須賀川市東町。
※ 谷田川村(やたがわむら)- 福島県田村郡にあった村。現、郡山市田村町谷田川。
※ 河曲(かわまがり)- 福島県田村郡川曲村。現、郡山市田村町川曲
※ 著く(しるく)-(聞いたこと思ったことなどが、)はっきり形に現れるさまに。
※ よろぼう(蹌踉う)- 倒れかかる。崩れかかる。


立ち寄りて見れば、翁の引けがちなる蜂吹きいたり。あばらなる板敷に尻掛けて、烟ふきつゝ物語りす。軒伝う(かけい)の水を車にまかせて、枯れたる杉の葉を入れて、臼搗くめり。そは何になるぞと問えば、線香というものにす、とぞ言うなる。
※ あばら(疎ら)- 家などが荒れはてているさま。
※ 筧(かけい)- 懸け樋。竹の節を抜いたり、木のしんをくりぬいた樋といを、地上に設けて水を引く装置。


   奥山の 杉の落葉を 過ぎし世の
        霊
(たま)に手向(たむ)くか 空薫きにすも
※ 空薫き(そらだき)- どこからともなくかおって来るように香をたいてにおわすこと

歌さえぞ、黴臭く法華(ほうげ)づきたる心地すと、独り言垂れて、自ら笑い覆れども、おどろ/\しう、搗き轟かす臼の音に紛(まが)いて、ようも聞えざるも、いと/\おかしかし。また二里ばかり山里を過ぎて、浮金村というに至りける頃は、日暮れ果てにたり。
※ 覆る(くつがえる)- たいそう~する。「笑い覆る」で、大笑いするの意。
※ 浮金村(うきがねむら)- 福島県田村郡浮金村。現、田村郡小野町浮金。
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