平成18年に60歳を迎える。六十と縦に書くと傘に鍋蓋(亠)を載せた形である。で、「かさぶた(六十)日録」
かさぶた日録
「壺石文」 上 4 (旧)六月六日~(続き)
ゴールデンウィークで、明日、名古屋のかなくん家族が帰ってくる。忙しくなる。
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「壺石文 上」の解読を続ける。
二、三日宿り居て、つれづれなりけるまゝに、遠出てみれば、餌袋の反古どもの中に、
※ 餌袋(えぶくろ)-鷹狩りに際して携行した、鷹のえさや獲物を収める竹かごなどの容器。のちには、弁当などを入れて携行した。
※ 反古(ほご)- 書画などをかきそこなったりして、いらなくなった紙。ほごがみ。
武隈の 松は二木を はや行きて
はや帰りきて 見きと答えよ
※ 武隈の松(たけくまのまつ)- 宮城県岩沼市の竹駒寺付近にあった松。(歌枕)「武隈の 松は二木を 都びと 如何と問わば 見きと答えむ」(橘季通「後拾遺和歌集」)の古歌を受けての歌。
※ 二木(ふたき)- 宮城県岩沼市二木。
道知らば 老いも行かまし 阿武隈は
勿来の関の 彼方(あなた)なりとも
※ 阿武隈(あぶくま)- 阿武隈山地。福島県から茨城県北部にかけて太平洋岸を南北に走る山地。隆起準平原の高原状の山地。阿武隈高地とも。
※ 勿来の関(なこそのせき)- 古代から歌枕となっている関所の1つ。江戸時代の終わり頃からは「奥州三関」の一つに数えられている。所在地には諸説ある。
※ 彼方(あなた)- 離れた場所・方向などをさす。向こう。
塩釜の 苫屋(とまや)見にとて 行く君は
世の辛(から)き目は 知らぬなるべし
※ 塩釜(しおがま)- 宮城県のほぼ中央、日本有数の漁港を中心とする港町。また、陸奥国一宮・鹽竈神社の門前町。
※ 苫屋(とまや)- 苫で屋根を葺いた、粗末な家。(「苫(とま)」は、菅や茅などを粗く編んだむしろ。)
明日よりは わきて偲ばん みちのく(陸奥)の
沢田の見ゆる 山のあなたを
※ わきて - わけて。とりわけ。特に。ことに。
その道の 奥ゆかしとや 人の見ん
壺の石文 書き詰めて来よ
※ 壺の石文(つぼのいしぶみ)- 壺の碑。坂上田村麻呂が大きな石の表面に、矢尻で文字を書いたとされる石碑で、歌枕でもある。本書の題名でもある。
という歌の、越のうちぐもりの紙に麗(うるわ)しうかい(書き)付けたるは、郁子園(むべぞの)の寛光がなりけり。
※ 越(こし)- 越国。現在の福井県敦賀市から山形県庄内地方の一部に相当する地域。分割され、越後国・越中国・能登国・加賀国・越前国となった。
※ うちぐもり - 上下に雲形を漉き出した鳥の子紙。色紙・短冊として用いる。
※ 郁子園(むべぞの)-「郁子園」は、片岡寛光の号。「むべ」は、アケビ科ムベ属の常緑つる性木本植物。別名、トキワアケビ。
読書:「おくのほそ道殺人事件」風野真知雄 著
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