平成18年に60歳を迎える。六十と縦に書くと傘に鍋蓋(亠)を載せた形である。で、「かさぶた(六十)日録」
かさぶた日録
「壺石文」 上 10 (旧)六月十六日~
午後、訃報が来た。仲人を務めたSH氏の弟さんが亡くなったという。まだ38歳の若さだというが、バイクで交通事故だったようで、気の滅入る訃報であった。明日、通夜に出席しようと思う。
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「壺石文 上」の解読を続ける。
十六日、ていけ良し。暁に起きて、けぶり(煙草)吹きつゝ、門のと(外)の、川の辺に降り立ちて、口濯ぎ、髪洗うに、心地清々(すがすが)し。「夏月透竹」という題を採りて、
※ ていけ(天気)-「てんけ」が変化した形。「てけ」とも。空模様。
戸も鎖さで 風待つ窓の 文の上(え)に
竹をぞ描く 夕月の影
また「対泉避暑」という事を、
うち靡(なび)き 玉も流るゝ いさら井に
ひき(率)うる魚(うお)を 見るが涼しさ
※ うち靡き‥‥ -「うち靡く」のは水草。「玉」は水玉。「率うる」には魚が列をなしているのだろう。
※ いさら井(いさらい)- 水の少ない井戸・泉。流れの少ない遣り水。
「独り寝」ということを、
人知れず 車(牛車)を待つと 百夜千夜(ももよちよ)
榻の端書き 書きつめてけり
※ 榻(しぢ)- 牛車の道具の一種。牛車を牛から外したとき、轅(ながえ)の軛(くびき)を載せる台。また、乗り降りの踏み台としても用いた。
※ 榻の端書き(しぢのはしがき)-昔、男が女に思いをかけ、百夜続けて通ったら承知すると女に言われ、九十九夜通って、そのしるしを榻に書きつけたが、百夜目に支障があって通えず、思いを遂げられなかったという故事。深草少将と小野小町の伝説などとして流布。熱烈な恋のたとえ、また思いどおりにならない恋のたとえとされる。
※ 千載和歌集「思ひきや 榻の端書き かきつめて 百夜もおなじ まろ寝せんとは」
夜になりて、徒然(つれづれ)なるまゝに、箸差(はしさし)というものを、手づから削(そ)ぎ作りて、かい(書き)つけゝる歌、
※ 箸差(はしさし)- 一膳の箸を差して一つにまとめ、携帯に便利にする道具。
※ 手づから(てづから)- 自分自身で。みずから。
うつそみの 命の極み うけもつの
神の恵みに かかる嬉しさ
※ うつそみ -(「うつせみ」の古形)この世。現世。
※ うけもつの神 - 日本書記の神産みの段に登場する食物神。天照大神の命で、うけもつの神を訪問した月夜見尊に、うけもつの神は、口から種々の食物を吐き出して歓待した。月夜見尊はその非礼を怒り、うけもつの神を殺してしまった。月夜見尊の報告に、天照大神大いに怒り、月夜見尊を夜の国に追放した。うけもつの神の死体からは五穀が稔っていた。
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