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事実証談 神霊部(上) 56、57 高松権現の楊梅と常光寺の伽藍坊のこと

(御前崎市門屋、高松神社)

事実証談、神霊部(上)の最終回は、第56話、高松権現の楊梅(やまもも)の話と、第57話の常光寺の伽藍坊の話である。

高松権現(高松神社)はゴルフ場(靜岡カントリー浜岡コース)の南側、遠州灘からさほど離れていない、岡の上にあった。海側から直登する真っ直ぐな石段があり、強い日差しの中、登った。後から岡の上まで車で行けることが判った。どういう謂れの神社であろうか、立派な構えの神社であった。

第56話
城東郡笠原庄門屋村、高松権現の社は山中境内広く、凡そ二十四万坪有りて、松また楊梅(やまもも)の木のみ生え立ちけるに、年毎にその楊梅の皮を売るに、年々金五両程になるを、寛政年中、如何なる故にか、その木多く枯れ行きて、悉く枯れなん様に見えしかば、神主中山豊後守吉埴、常より異(こと)に祓い清めて、臨時の祭をなして祈願せしかば、並べて若芽はり出て、日を経ずして、本の如くなれりと言えり。則ちその祈願の祝詞を写し添えつ。
※ 楊梅皮(ようばいひ)- 楊梅(やまもも)の樹皮をはいで、天日で乾燥させた生薬。下痢止め、扁桃腺、口内炎、打撲傷、捻挫、しっしん、かぶれなどに効果がある。
(この後に、祝詞が続く。解読は出来たけれども、祝詞を正確に読む能力はないので省く。)

常光寺に現れた異形の伽藍坊とはどういう人物なのか。イメージされるのは、天狗とか、奥山半僧坊のような異人(紅毛人)である。

第57話
三河国設楽郡下津具村、常光寺の住僧、境内なる白山権現の社の辺りに生い立ちし檜の大木を伐らしめたるに、その夜更けて、住僧の臥したる所に、人有りて呼び起こし、汝神木を伐りたれば、ここに住職せしむべきにあらず。とく/\立ち退くべしと言うに、驚ろきて起き上り見れば、いと/\大きなる惣髪の人にて有りけり。その形相、恐ろしくて見るに堪えず。

大きに恐懼(おじおそ)れて、直ちに逃げ出て、その夜の間に山路を越え、吉田駅より一里ばかり北なる、豊川という所に、法類の有りけるを頼みに行く程、凡そ十三里ばかりを、夜通しに命限りに逃げ走り、駈(はせ)着きて、かの寺の住僧にありし様を残らず物語り、社木伐りたりし崇りなる事を、悔い歎きけるにより、その崇りを和め奉りたりければ、その崇りは鎮まりしとなん。
※ 法類(ほうるい)- 仏教で、同宗同派に属する僧、または、寺。

これは天明年中の事なりとぞ。かゝる崇り有りしにより、伐り倒せしまゝにて、誰手ふる者もなく、今に然りと、そのわたりに住みし僧の物語なり。またその頃の噂には、伽藍坊出て住僧を追い出せしと言えり。伽藍坊とは如何なる称にか。再びかの僧に尋ねしにかゝる称は無しと言えば、寺を追い出せし故、さは言い出せしなるべし。按(おもふ)にこれは白山権現の御怒りにて、かゝる御形を現わし給えりしにや。


これで、事実証談 神霊部(上)は終る。この後、神霊部(後)以下へ続いていくが、あまり続けると飽きるので、しばらく別の古文書を読もうと思う。この続きはいずれまた、読み続けたいと思う。
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