ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

インド50~仏性、大乗的無我説の帰結

2020-02-15 09:25:43 | 心と宗教
●如来蔵または仏性の思想(続き)

・仏性
 如来蔵とよく似た概念に、仏性がある。仏性は、サンスクリット語のブッダ・ダートゥの漢訳である。衆生に備わっている仏と同じ本性、または仏となるべき因を意味する。衆生が仏陀の教えを学び、その教えを実践することによって、悟りに達することができるのは、そうなり得る可能性がもともと内在しているからであり、その可能性が仏性である。この意味において、仏性は如来蔵と同じである。ただし、仏性には、如来蔵と違って、胎児が成長するイメージや煩悩によって覆い隠されているという意味はない。
 仏性思想は、『涅槃経』が『如来蔵経』の如来蔵思想を継承して、「一切衆生悉有仏性」すなわちすべての衆生はことごとく仏性を有すると記したことに始まる。もっとも一切衆生とは言うものの、『涅槃経』は、謗法不信の徒については、仏性を認めていない。そこで、仏性を有する者の範囲に関する議論が起こった。古代インドでは、人間が本来持っている性質を種姓(ゴートラ)とし、これを家系・家柄・血統によるものとした。その考えが仏教の教団にも影響し、仏性について「仏陀の種姓(ブッダ・ゴートラ)」が説かれた。唯識派では、声聞種姓・独覚種姓・菩薩種姓・不定種姓・無性有情の五つに分類し、大乗仏教の修行を行う菩薩種姓と、小乗から大乗に転向した不定種姓は成仏できるが、小乗の種姓と無仏性のものは成仏できないと主張した。これに対し、如来蔵思想は、すべての衆生に如来となり得る可能性があると主張し、その根拠として『法華経』の一乗思想を挙げた。
 この論争は、シナ・日本でも続いた。唯識法相宗は、先天的な本性の違いによって、衆生を菩薩定性、独覚定性、声聞定性、三乗不定性、無性有情の五種に分けた。これを五性各別説という。一番目から三番目までは成仏が可能だが、四番目はそれが決まっておらず、五番目は永遠に成仏できないとする。この説をもとに、一部の者は成仏不可能とする一分不成説を主張した。これに対し、天台宗・華厳宗はすべての衆生に仏性があり成仏し得るという一切皆成(かいじょう)説を主張して対立した。論争の結果、前者が優勢となった。日本では、神道的な世界観のもと、有情としての生物だけでなく無生物を含む「草木国土悉皆成仏」が仏教の宗派・思潮の大半に共通する思想となっている。

●大乗的無我説の帰結

 これまで書いたように、大乗仏教の主要な思想となった空の思想と唯識説は、アートマン(我)として認識の主体を認めずに、それに替わるものを打ち立てる複雑で高度な理論を展開した。だが、輪廻転生する主体としての霊魂の存在を認めないならば、解脱を目指す主体もないことになる。もしそうであれば、厳しい戒律を守り、修行に打ち込んで解脱を目指す必要はなくなり、ありのままの心と世俗的な生き方をそのまま肯定してよいことになる。後代の大乗仏教には、欲望に満ちた心は本来悟りの心だとし、煩悩即涅槃と説く思想が現れた。大乗的な無我説は、本来の釈迦の教えとは正反対の思想にも転じ得るのである。(註 2)
 ところで、大乗仏教は、法身仏という一種の神格を立て、釈迦を法身仏の化身とらえるようになった。それによって無神教から有神教化への根本的な変化が促進された。これは、重大な、そして決定的な変化である。根本的に有神教化した教えの中では、アートマン(我)を否定しようとしても、否定しきれない。そのため、自己の中に如来の胎児(如来蔵)が潜在するとか、衆生にはもともと仏性が備わっているという主張が現れた。この主張は、仏・如来を神、仏性を神性という言葉に置き換えれば、一種の汎神論となる。いわば汎仏論である。
 大乗仏教が宇宙を仏の本体と見るようになったのは、仏を実体ととらえたのと同然である。その場合は自己も実体性を持つことになる。そうなると、超越的かつ内在的な対象を仏と呼ぶか、神と呼ぶかの違いとなる。大乗仏教はヒンドゥー教と基本的に構造が同じになったため、より深くヒンドゥー教の影響を受けることになった。むしろ積極的にヒンドゥー教の要素を摂取しさえした。インド仏教がやがて密教化していったのは、必然の展開と見ることができる。


(2) 日本では、仏教徒の中に、個我の輪廻転生より先祖から子孫への生命の連続を重んじる考えが広く見られる。これは、固有の宗教である神道の伝統による。神道では、世代間の生命と因縁の継承を重視する。その立場から、そもそも輪廻転生の観念そのものが存在と生命の実態をとらえたものではなく、架空の観念ではないかという疑問が向けられる。大乗的無我説は、この疑問を完全に否定することはできない。輪廻転生については、客観的な事実や経験による裏づけを示すことが極めて困難だからである。
 仏教から輪廻転生の観念を除き、輪廻の世界からの解脱という目標を掲げないとすれば、仏教は欲望を抑え、物事へのとらわれを捨て、理性的で道徳的な生き方をする哲学となる。

 次回に続く。

************* 著書のご案内 ****************

 『人類を導く日本精神~新しい文明への飛躍』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/cc682724c63c58d608c99ea4ddca44e0
 『超宗教の時代の宗教概論』(星雲社)
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台湾の自由と民主主義を支援しよう6

2020-02-13 11:38:12 | 国際関係
●台湾人に伝わる日本精神

 米国にとっての台湾は、米国の世界戦略における地政学的に重要な地域であり、それにすぎない。だが、日本にとっての台湾は、単に政治・外交・安全保障という観点からだけではない重要性がある。日本は、日清戦争で清に勝利し、清から台湾を割譲され、以後50年間統治した。この間、大東亜戦争で日本が敗れるまで、台湾人は日本国民だった。そして、現在、台湾人の多くは、旧日本国民である。そこに、米国と台湾の関係とは異なる日本と台湾の関係がある。
 日本は台湾統治時代に、台湾の開発に努め、教育・衛生・建設・食糧生産などで、さまざまな貢献をした。それを通じて、台湾人に日本精神を伝えた。日本人から日本精神を学んだ世代の台湾人は、今も日本精神を高く評価し、またそれを保ち続けている。
 台湾が日本の領土だった時代に、台湾で日本人から教育を受けた人に、蔡焜燦(さいこんさん)氏がいる。蔡氏は現在、ハイテク企業等、数社を経営する台湾財界の著名人である。氏は、次のように語っている。
 「私の経営理念の根底には、日本統治時代の教育精神がありました。日本人の教師たちは、われわれ台湾人に『愛』をもって接し、『公』という観念を教えてくれました。 私は、会社経営にあたっては、常にこの『日本精神』で臨み、『大和魂』で艱難辛苦を乗り越えてきました。それは、きっとこれからの台湾の国づくりにも不可欠の精神だと思います。
 日本の台湾への最大の贈り物は、この精神を残してくれたことです。公の意識とそれに殉ずる精神、武士道の心です。今、私たちはこのサムライ精神で大陸と対峙し、台湾人のための台湾づくりに向っているのです。
 『日本精神』は台湾語で『リップンチェンシン』と発音し、これはすべて良いものという意味の普通名詞となっています」(『日本の息吹』平成12年6月号)
 蔡焜燦氏には『台湾人と日本精神~日本人よ胸を張りなさい』(小学館)という著書がある。この本は、戦前の台湾で、日本人がいかに立派なことを行ったかを、台湾人の立場で記している。そして、台湾の人々が、日本統治時代に日本人から教育された「日本精神」を、今日も大切に持ち続けていることを伝えている。
 蔡氏と同じく台湾人の金美齢氏は、「日本精神」とは、次のようなものだと言う。
 「台湾には今でも『日本精神』という言葉が残っている。日本語でも通じる漢字の表記であるが、台湾語で『リップンチェンシン』と言う。『日本精神(リップンチェンシン)』ーー台湾では生きている言葉でも、日本では聞かれなくなった言葉であろう。今の日本人は誰も『日本精神』などと言わない。
 台湾における『日本精神』は、勤勉、向学心、滅私奉公、真面目、約束事を守る、時間を守るといった諸々の価値を包括している。それはたとえば『この人は〝日本精神″で店を経営している』と言われる商店主は、大いに信用できるということなのである」
 「『日本精神』とは偏狭なモラルではない。世界に通じる、人間が真っ当に生きてゆくための基本的なルールであると言っていいだろう。かつての多くの日本人はそれを持っていた。自らの大切な伝統、価値観としてそれを連綿と伝え、さらにはそれを植民地にまで持っていって実践してみせた。台湾はそれを受け入れたのである。50年にわたる植民地時代にそれを自分たちの言葉とし、大切にし、今でも懐かしがっている」(月刊『日本』 平成10年5月号)
 元台湾総統・李登輝氏は、月刊誌「VOICE」平成18年5月号(PHP研究所)に「『日本精神』こそ世界の指針」という文書を寄稿した。
 李氏は戦前、日本統治下の台湾で教育を受けた。「当時の日本の教育システムはじつに素晴らしいもので、古今東西の先哲の書物や言葉に接する機会を、私たちにふんだんに与えてくれるものでした」といい、「『人間はどのように生きるべきか』という哲学的命題から『公』と『私』の関係についての指針が明確に教えられていました」と書いている。
 李氏は、このような教育を受ける中で新渡戸稲造の著書『武士道』と出会った。李氏は、「世界に誇る日本精神の結晶というべき『武士道』」について、新渡戸の論を次のように理解している。武士道の形成は、「日本で営々と積み上げられてきた歴史、伝統、風俗、習慣があったからこそ」であり、儒教の影響も挙げられるが、「中国文化の影響を受ける以前からの、大和民族固有のもの」である、と。そして、李氏は、「彼(新渡戸)によって再発見された『武士道』は、日本人の“不言実行あるのみ”の美徳であり、『公』と『私』を明確に分離した『公に奉じる精神』といってもよいでしょう。もちろんそれは中国文化とはまったく異質なものです」と述べる。
 李氏は、武士道は「日本人の血となり肉となって定着していた」ととらえる。その観点から、次のように言う。「そうであるからこそ私は、終戦後における日本人の、価値観の百八十度の転換を非常に前年に思うのです。今日の日本人は一刻も早く戦後の自虐的価値観から解放されなければならないと思うのです。そのためには日本人はもっと自信をもつことです。かつて武士道という不文律を築き上げてきた民族の血を引いていることを誇るべきなのです。そうすることで初めて、日本は世界のリーダーとしての役割を担うことができるのです」と。
 大東亜戦争の敗戦後、日本人は自己本来の日本精神を失ってきている。そのため、家庭、社会、国家等、あらゆる面に問題が噴出している。そうした日本人に対して、元日本国民である台湾人が日本人は日本精神を取り戻すべきだと訴えているのである。そうした人々のいる台湾を軽視し、中国との間の利害得失を第一に追い求めて来た日本人は、これまでの自己のあり方を反省し、まず自己本来の日本精神を取り戻すこと、そして台湾及び中国との関係を再構築すべきである。

関連掲示
・拙稿「李登輝は『日本精神』の復興を訴えている」
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion04b.htm

●結びに~日本精神の復興で国家の再建、共存共栄へ

 中国の習近平政権は「祖国の統一」を必達の目標としており、民主的かつ合法的な方法では「統一」ができないと判断すれば、台湾に対して武力を行使するだろう。
 中国共産党が台湾に固執するのは、「祖国の統一」が共産党政権の正統性を維持するために必須の課題だからである。また、中国の覇権拡大のために、台湾が台湾の戦略的地政学的に重要な位置にあるからでもある。
 台湾は中国が太平洋に進出するために、重要なカギとなる位置に存在する。台湾は東シナ海と南シナ海の間に位置し、渤海・黄海・東シナ海と南シナ海を二分する位置にある。もし中国が台湾を併合できれば、中国は太平洋に面した国になる。それが達成されれば、アジア、太平洋への覇権確立は可能になり、インド洋への戦力拡大も可能になる。逆に台湾を確保しなければ、中国の勢力は海に進出できない。だから台湾併呑は中国にとり、自らの生存にかかわる大きな課題となっている。
 今後、もし台湾の自主自立勢力が後退し、親中派・統一派が政権に就いて、台湾と中国と一体化していくならば、わが国の安全保障は極めて厳しいものとなる。中国は、台湾に武力攻撃の恫喝をかけながら、経済の力で親中派を支持している。中国の資本は台湾のマスコミの8割を買収し、親中的な世論の醸成を行なっている。民主的かつ合法的な併合であれば、アメリカも手出しできない。アメリカと戦火を交えることなく、国際社会の非難を受けることもなく、目的を達成できる。
 もし中国と台湾が武力でぶつかり合えば、東シナ海が戦場になる。タンカーなどの海上輸送に影響が出るだろう。仮に台湾が独立を宣言し、これに中国が武力を行使して、国際社会がそれを黙認したならば、世界の秩序はびん乱する。そして、石油と食糧をめぐる新たな資源争奪戦が繰り広げられ、修羅場のような世界が再現されかねない。
 戦前の日本では、満蒙はわが国の「生命線」と呼ばれた。今日、台湾はわが国の新たな「生命線」となっている。わが国の産業も国民生活も、石油なしには成り立たない。中東と日本を結ぶシーレーンの要に台湾がある。中国が台湾を併合すれば、日本は台湾海峡・バシー海峡というシーレーンの重要な拠点を押さえられたことになる。バシー海峡は、台湾とフィリピンの間の海峡である。
 台湾が中国の掌中に入れば、わが国の運命は中国の手に握られる。だから、台湾問題は、日本自体の問題でもある。日本国民は、中台関係を踏まえ、わが国の国家安全保障を真剣に考えなければならない。日本が東アジアで自由民主主義を守り、共存共栄の道を示すことが、アジアの平和と繁栄、世界の平和と繁栄につながり、なにより日本自体の存立にかかっていることを認識すべきである。
 ここで真剣に考えなければいけないのは、わが国は、未だ日本人自らの手による憲法の改正ができておらず、国家の再建ができていないことである。わが国は、戦後、外国から憲法を押しつけられ、それを今日まで改正できずに来ている。戦勝国によって国防に規制がかかられ、自国の存立を他国に委ねさせられている。国民には、国家への忠誠や国防の義務がない。そのため、日本は独立主権国家としての要件を欠いており、日本人は国家・国民の意識が薄弱となっている。また、国を守ろうという意思が失われている。日本の安全と繁栄のためには、この憲法を改正して、国のあり方を根本から立て直すことがどうしても必要である。
 中台関係が極めて重要な段階に来ているなか、わが国はこうした国際環境を踏まえ、憲法の改正を急ぎ、国のあり方を根本から立て直さなくてはならない。先に書いた台湾関係法も、それだけでは真に有効なものにはならない。現行憲法の下で台湾関係法の制定は可能だが、日本人自身の手で新しい憲法を制定してこそ、こうした法律が真に有効なものとなる。自衛隊の明記、緊急事態条項の新設等だけでなく、憲法の全面的な改正が急務である。
 憲法を改正して、国家を再建し、新たな国際関係を築くために、最も必要なことは、日本人が日本精神を取り戻すことである。現在の日本の国家的な危機は、大東亜戦争の敗戦後、日本人が日本精神を失って来たことの結果、生み出されたものである。そのことに気づいて、自己本来の精神を取り戻す時、はじめて憲法の改正が可能となり、また日本の再建を成し遂げられる。またそれによって、中国・台湾との国際関係を改善し、東アジアに自由と民主主義を尊重する共存共栄の国際社会を実現することができるだろう。(了)

関連掲示
・マイサイトの「日本の心」のページ
http://khosokawa.sakura.ne.jp/j-mind.htm
・マイサイトの「日本精神」のページ
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion04.htm
・拙稿「日本国憲法は亡国憲法――改正せねば国が滅ぶ」
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion08c.htm
・拙稿「日本再建のための新憲法――ほそかわ私案」
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion08h.htm
・拙稿「いまこそ憲法を改正し、日本に平和と繁栄を~9条と自衛隊」
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion08q.htm

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 『人類を導く日本精神~新しい文明への飛躍』(星雲社)
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台湾の自由と民主主義を支援しよう5

2020-02-12 09:41:02 | 国際関係
●日本と台湾の関係

 日本は、1972年(昭和47年)9月、日中国交回復とともに台湾と断交した。その際、わが国は、中国との国交回復、台湾との断交を行なったうえで、中国及び台湾とどのような国際関係を構築していくか、総合的な政策を構築できていなかった。権力論的に見れば、シナ大陸を中国共産党政府が統治する中華人民共和国と、台湾を国民党が統治する中華民国の並立状態は、一種の二重権力状況である。わが国が自由民主主義の理念を掲げるなら、この状況はシナの脱共産化すなわち自由化・民主化を支援することが課題となる。東洋的道義の理念を保つならば、毛沢東らの中国共産党と蒋介石の国民党の共存調和を目指すことが課題となる。だが、わが国には、こうした総合的な政策を構築して、それを中国と台湾を仲介して実現し得るほどの大政治家がいなかった。また、国会においても、政府を支援して、米国のような台湾関係法に相当する国内法を制定できるような政治家がいなかった。そのため、中台を仲介できる時機を逸してしまった。もしわが国が米国の中ソ分断政策に呼応して、日・米・中・台の連携でソ連に対抗していれば、ソ連の崩壊はもっと早まっただろう。
 わが国は、総合政策も台湾関係法もない状態で、貿易、経済、技術、文化等の民間交流関係を維持するための実務機関として、公益財団法人日本台湾交流協会を設立した。同協会を事実上の大使館・領事館の役割を果たす利益代表部として、台湾との交流を行なっている。外交特権は認められていない。台湾側の利益代表部は、亜東関係協会である。日台は、双方の利益代表部を通じて、日台投資協定、日台漁業協定、日台租税協定等の二国間協定を結んでいる。これらの協定は、国家同士の条約ではない。また、超党派の議員連盟である日華議員懇談会を中心にして、議員外交が行われている。同懇談会の会長は、2020年2月現在、自民党の古屋圭司衆議院議員である。所属議員は、2019年5月現在287名とされる。

●日本における台湾関係法制定の動き

 2006年(平成18年)4月、自民党の衆参両院議員によって「日本・台湾経済文化交流を促進する若手議員の会」(略称 日台若手議連)が設立された。台湾と政治的・経済的・文化的交流を行い、両国の友好を図ることを目的とする。
 この日台若手議連を中心に、日本版の台湾関係法の制定を目指す動きがあると伝えられる。2014年(平成26年)2月時点の情報だが、同会(会長・岸信夫外務副大臣)には、自民党の中堅・若手議員を中心に約70人が所属している。同年2月17日の会合で、日本と正式な国交がない台湾との関係を強化するための法的根拠となる「日本版・台湾関係法」(仮称)の策定を目指すことを確認し、次回以降、関係法の内容について具体的な協議に入ると伝えられた。
 以後、約6年が経つが、日本版・台湾関係法は実現していない。だが、日本の安全保障の強化、また東アジアにおける自由と民主主義の保守のために、わが国は、日本版・台湾関係法を制定し、台湾との関係を確固としたものにすべきである。自民党及び保守的・愛国的な政党の政治家は、この課題に積極的に取り組んでほしい。

●東日本大震災と新型コロナウイルス問題

 2011年(平成23年)3月11日に東日本大震災が発生した。台湾の馬英九総統(当時)はその当日に「日本側の要請を受けたら、すぐに救援隊を出動したい」と語り、緊急救援隊を翌3月12日に世界のどこよりも早く派遣してくれた。また、台湾から253億円という莫大な義援金が日本に贈られた。この金額は、世界の他のどの国よりも多かった。しかも人口2300万人という社会からの義援金であり、他の国々とは比較ならない額である。人口13億の中国であれば、1兆4168億円に上るほどの金額である。こうした台湾を軽視し続ける日本政府の姿勢は、道義に外れている。
 本年(2020年)1月、中国武漢から新型コロナウイルスによる肺炎の感染が広がった。世界保健機関(WHO)は、これへの対応に当たったが、2009年オブザーバー参加してきた台湾は、中国との関係で参加が認められなかった。中国は、蔡英文政権に強い圧力をかけており、WHOは中国に配慮し、台湾を排除し続けていた。だが、台湾でも感染者が確認されており、WHOから台湾を排除することは、世界的な対応に穴ができる。そこで米国、フランス等から台湾のWHO参加を求める声が出た。わが国の代表も台湾の参加を認めるべきと発言し、参加が実現した。多くの人々の生命と健康が脅かされている中で、わが国が中国を恐れず、台湾に関して当然の発言を行なったことは、遅ればせながら一つの前進である。

  次回に続く。

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 『人類を導く日本精神~新しい文明への飛躍』(星雲社)
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台湾の自由と民主主義を支援しよう4

2020-02-10 08:18:43 | 国際関係
●米国は台湾関係法を持つ

 米国は、1979年(昭和54年)1月1日に中華人民共和国との国交を樹立し、北京政府を「中国を代表する政府」として承認し、中華民国(台湾)との国交を断絶した。しかし、同時に、米国議会は、台湾関係法を1979年4月に制定した。同法は1月1日にさかのぼって施行された。
 台湾関係法は、米国が台湾と断交した後も、台湾との実質的な関係を維持するためにつくられ、台湾に関する米国の政策の基本を定めている。
 米国は、同法によって、台湾を諸外国の国家および政府と同等に扱い、台湾との外交的・軍事的関係を維持している。
 外交的には、同法及び台湾旅行法によって、米国は国交断絶以前に台湾と結んでいた原子力協定や武器売却等のすべての条約、外交上の協定を維持している。米台双方の大使に相当する者には外交特権が付与されている。政治家の交流も活発に行われている。
 軍事的には、同法は米国と台湾との間の事実上の軍事同盟となっている。同法は、米国が台湾の人びとの安全、社会や経済の制度を脅かすいかなる武力行使または他の強制的な方式にも対抗しうる防衛力を維持し、適切な行動を取らなければならないと定めている。米国は、台湾に米軍を駐留しないが、台湾に防衛用の武器を売却したり、日本やフィリピンの米軍基地等のプレゼンスを示すことによって、中国を牽制している。
 台湾は地政学的に重要性な位置にある。米国は台湾を中国に取られたら、東アジアの軍事的なバランスが大きく崩れ、中国の覇権拡大を許すことになることを防ぐために、台湾関係法を定めたものである。
 41年前、同法を制定した時点で、米国の立法者が将来、中国が海洋に進出する可能性をどの程度、想定していたかはわからない。また、米国では現在、同法は「台湾海峡で武力衝突が生じた場合、必ずしもアメリカがこれに介入しなくてもよいし、介入してもよい」と解釈されている。中国との軍事的衝突を可能な限り回避するべきという考え方による。だが、中国が軍事力・経済力・外交力・情報力等を増大し、「一帯一路」戦略によって世界的な覇権拡大を進めている現在、台湾の重要性は同法の制定時より、はるかに増している。もし中国が設定している第一列島線に含まれる台湾が中国に支配された場合、中国海軍は太平洋への進出が容易になり、中国がアメリカに対抗して西太平洋を支配することになりかねない。これは、アメリカにとって、旧ソ連時代にもなかった新たな脅威である。

●米連邦議会は挙国一致の姿勢

 米国は、国内法として台湾関係法を定めただけでなく、台湾に対して米国の姿勢を保証している。これは、米ソ冷戦時代、1982年(昭和57年)にレーガン政権が台湾側に「6つの保証」を提示したものである。保証の内容は、(1)台湾への武器売却の期限を設けない、(2)台湾への武器売却についてシナ大陸と事前に協議を行わない、(3)台湾と大陸の間の調停を行わない、(4)台湾関係法の改正に同意しない、(5)台湾の主権に関する立場を変えない、(6)北京当局と協議するよう台湾に圧力を加えない、の6項目である。
 米連邦議会は、台湾に対する「6つの保証」を再確認する上下両院一致の決議案を全会一致で繰り返し可決している。そのたびに党派を問わず米台関係に対する堅い支持が表明されている。ただし、決議案は議会の立場等を示すもので、法的拘束力はない。
 2018年(平成30年)6月、米共和党のダナ・ローラバッカー下院議員は、台湾との国交回復等を米政府に提言する決議案を提出した。決議案は、台湾が北京当局による統治をこれまで一度も受けていないことや中国共産党が台湾の国際組織への参加を妨害し続けていることに言及し、米国が取っている「一つの中国」政策は時代遅れであり、台湾が半世紀以上にもわたって独立主権国家として存在しているという事実を反映していないと指摘した。そのうえで、「一つの中国」政策に代わって、現状に合った「一中一台(一つの中国、一つの台湾)」政策を取るべきだと主張し、台湾を主権独立国家と認め、台湾との国交正常化のほか、台湾の国連機関への参加等を積極的に支持するよう米政府に求めるものだった。この決議案は、米国で最も台湾寄りの政治家たちによるものと見られる。
 台湾関係法の制定40周年を迎える2019年(平成31年)4月、米上院は、「台湾に対する米国の関与と台湾関係法の実施を再確認する決議案」を全会一致で可決した。米下院も同月同様の決議案を可決した。この決議案は、台湾関係法と「6つの保証」を米台関係の基盤とすることを再確認するとともに、米台双方の政府関係者が台湾旅行法に基づいて相互訪問するよう呼びかけるものである。また、大統領は法律に基づき台湾への武器売却を常態的に行わなければならないとし、国務長官に対して台湾の国際組織への参加を支持し、台湾との経済・貿易関係を拡大・深化させる機会を模索するよう求めている。台湾関係法制定40周年という節目の年に、台湾を重視する米連邦議会の姿勢が明確に示されたものである。
 このように米連邦議会は、台湾が中国から軍事、外交面で圧力を受けていることを認識し、米政府に対して中国に厳しい態度で臨むよう求める姿勢を繰り返し示している。政府は、連邦議会が超党派で行う決議を後ろ盾として挙国一致の態勢で、中国をけん制し、台湾を守る政策を行なっている。

●トランプ政権は台湾政策を強化

 2017年(平成29年)1月に発足したトランプ政権は、中国に対し、貿易・外交・安全保障等で積極的に対抗姿勢を示し、米台関係は以前より強固になっている。
2019年(令和元年)8月には、米中貿易戦争と香港での民主化運動で米中の緊張が高まるなかで、米国務省はF-16戦闘機66機を台湾に売却すると発表した。台湾への武器供与としては、近年最大規模である。

 次回に続く。

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台湾の自由と民主主義を支援しよう3

2020-02-09 13:03:53 | 時事
●現在の台湾

 台北に政府を移した中華民国は、1950年(昭和25年)以降、大陸の統治権を失い、台湾島の他、中国福建省隣接の島嶼を実効支配している。
 台湾本島の面積は、九州と同じくらいである。海洋国家であり、日本、フィリピン、中国と領海を接する。
 人口は、2018年月現在で約2,357万人。日本の人口約1億2,700万人の18.56%。5分の1弱である。
 政体は、中華民国の建国の父・孫文の三民主義(民族独立,民権伸長,民生安定)に基づく共和制の議会制民主主義国家である。中華民国憲法を持つ。総統を国家元首とする。蒋介石を初代総統とし、蔡英文総統は第7代である。孫文の五権分立論に基づいて、立法院・行政院・司法院・考試院・監察院を国家機関として持つ。立法院は一院制の立法機関で、日本の国会に当たる。また国会議員に当たるのが、立法委員である。経済体制は、自由主義的資本主義である。
 国連脱退後、多くの国は台湾を国家として承認していない。また近年、承認国は減少傾向にあり、2020年1月現在、台湾を正式に中華民国という国家として承認している国は15ヶ国となっている。内訳は、大洋州の島嶼国4か国、欧州はバチカン市国1カ国、中南米・カリブの9カ国、アフリカ1カ国で、先進国や新興経済国は1カ国もない。日本は、台湾を中華民国とうう国家として承認しておらず、「台湾」と表記している。他の国家と合わせて数える時は「地域」としている。
 だが、台湾は、国連脱退後も、以前の国交を結んでいた国々と実質的な外交関係を保ち、経済的・文化的な交流を活発に行っている。日本、米国、西欧諸国等には、実質的な大使館と言える台北経済文化代表処が置かれている。

●共産中国の台湾への姿勢

 共産中国は、台湾を「中国の不可分の領土」だと一方的に主張している。そして、「一つの中国」を標榜し、台湾を独立国家と認めていない。
 中国は、台湾の自主自立や独立を望む勢力に圧力をかけ、親中派、大陸との統一派を後押しし、戦わずして統一を勝ち取る作戦を展開している。だが、台湾では、1988年(昭和63年)に李登輝が総統になって以降、自主や独立を望む勢力が伸長している。李登輝に続いて、2000年(平成12年)に政権に就いた民進党の陳水扁は自主路線を取った。その後、2008年(平成20年)に政権に就いた国民党の馬英九は親中派で中国寄りとなったが、2016年(平成28年)に再び自主路線の民進党の蔡英文政権となり、自主や独立を望む勢力の支持を拡大している。
 この間、陳水扁政権の時に、2005年(平成17年)3月、中国で「反国家分裂法」が制定された。同法は台湾が独立に動けば非平和的手段、すなわち武力を行使するとしている。台湾進攻に自国内の法的根拠を与えるものである。
 「反国家分裂法」は、20世紀前半の世界を覆った帝国主義ないしファシズムの発想に近い思想によるものである。台湾は民主的な総統や議会を持ち、実質的に独立国として機能している。なにより台湾人の多数は「統一」を望んでいない。そもそも中華人民共和国が台湾を領有したことは一度もない。中華人民共和国は、清朝や中華民国の後にできた国である。それなのに中国が台湾を自国領だと主張するのは、覇権主義的・ファシズム的な領土拡張の野望によるものである。
 1979年(昭和54年)1月1日、中国の全国人民代表大会常務委員会は、「台湾同胞に告げる書」を発表し、台湾政府に対して、中国本土との分裂局面を終わらせる平和統一を呼びかけた。その40年後となる2019年(平成31年)1月2日、中国の習近平国家主席は、「台湾同胞に告げる書」の40周年記念イベントで、「一国二制度」による台湾統一の考えを示した。
 習主席は「祖国統一は必須であり必然だ」とした上で、一つの国家に異なる制度の存在を認める「一国二制度」の具体化に向けた政治対話を台湾側に迫った。制度の具体化にあたっては「台湾同胞の利益と感情に十分配慮する」とし、私有財産や宗教信仰の自由などは「十分に保障される」と主張した。さらに「一つの中国」原則を基礎として、「台湾の各党派や団体」との間で中台間の政治問題や平和統一のプロセスに関する対話を実施する意向を示した。
 だが、その一方、習氏は「武器の使用は放棄せず、あらゆる必要な措置をとる選択肢を残す」と述べ、「外部勢力の干渉や台湾独立分子」に対しては武力行使を辞さない姿勢を改めて強調した。また、「台湾問題は中国の内政で、中国の核心的利益と民族感情に関わることであり、いかなる外部の干渉も許さない」と米国のトランプ政権を牽制した。
 この習主席の演説の同じ日、台湾の蔡英文総統は、総統府で開かれた臨時記者会見において、「台湾は決して一国二制度を受け入れられない。台湾の絶対的多数の住民は一国二制度に断固として反対している。これは台湾のコンセンサスだ」と強く反発した。
 中国と台湾の間では、1992年(平成4年)香港で「一つの中国」問題に関して当局者間で協議が行われ、一定の合意がされた。2000年(平成12年)4月に台湾の行政院大陸委員会主任委員・蘇起が、九二共識(きゅうにきょうしき)と名付けて公表した。だが、合意されたとう内容について、双方で解釈が異なる。台湾側は「双方とも『一つの中国』は堅持しつつ、その意味の解釈は各自で異なることを認める」(「一中各表」)という見解であり、中国側は「双方とも『一つの中国』を堅持する」(「一中原則」)という見解である。蔡英文総統は、2016年(平成28年)の就任以来、九二共識を受け入れない立場を取っている。今回の「一国二制度」への断固反対は、この基本姿勢に基づくものである。

 次回に続く。

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 『人類を導く日本精神~新しい文明への飛躍』(星雲社)
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中共は新型コロナウイルスを米国による生物兵器戦争だと主張

2020-02-08 08:54:43 | 国際関係
 新型コロナウイルス問題。中国共産党は新型コロナウイルスは人工合成の産物であると事実上認め、これを米国による生物兵器であり、米国が中国に生物戦を仕掛けたものだと主張し始めたようです。これは単に相手に責任をなすりつけるヤクザの喧嘩口調ではなく、中共一流のプロパガンダ戦術の開始だと思います。 これに対して、米国の政府、国連及び各国の感染症・遺伝子工学等の専門家等は、確かな証拠をもとに反論し、真実を明らかにすべきです。
 あえてリンク先の全文を転載します。

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看中国 Vision Times
2020.2.3
https://www.visiontimesjp.com/?p=4490&fbclid=IwAR0i5l_aF3EraTPn8NZ0tiEXaGOukd9iJPJiMtfSnRzRCC0wNc1ODGeSs1k

 米国に亡命した中国の実業家・投資家である郭文貴氏は2月3日、中国共産党が武漢肺炎ウイルスは人工合成の産物であると事実上認めたことを明らかにした。その根拠は、中国共産党の公式軍事ポータルサイト「西陸網」が、武漢の肺炎を引き起こす新型コロナウイルスが人工的に合成されたものであることを認めており、コウモリウイルスによる自然突然変異は不可能だと主張していることだ。
 郭文貴氏は次のように述べた。中国共産党軍の最高権力機関である中央軍事委員会のウェブサイト「西陸網」で発表される情報は極めて重要で、最高位層の首肯を得たものだ。そのようなサイトが武漢肺炎の爆発を米国になすり付けた」。
 「西陸網」は1月26日に「武漢ウイルスの4つの主要蛋白質が交換され、中国人を正確に狙い撃ちできる」という文章を発表した。この文章には、武漢肺炎ウイルスが人工合成であることが書かれていた。
 文章の要点はこうだ。
「『武漢新型コロナウイルスは4つの重要な蛋白質を取り替えた』ことである。その目的は第一に、SARSウイルスに偽装し、医療関係者を欺くことで、治療の時間を遅らせることである」
「第二に、『人への感染力が強力』であるため急速に蔓延させ、伝染させることができる。人間を絶滅させるこの生物技術はコウモリやアケビが生み出したのでしょうか」
「これほど正確な『4つの鍵となるタンパク質』の『交換』は、自然界では1万年たっても不可能だ」
「これらの事実から導かれる結論は、武漢ウイルスは実験室が製造と生産に関与していることだ」

米国になすり付ける

 続いて、この中国共産党の権威ある軍事サイトの文章は米国に矛先を向け、「SARSから武漢新型肺炎まで、米国の人種絶滅計画を見る」という小見出しで、米国が生物兵器を製造し、中国人を攻撃できるようになったと非難した。
 文章のもう1つのゴシック体の小見出しは「もっぱら中国人を選んで殺している。このウイルスで死んだのは96%が中国人だ」と書かれている。
 文章は武漢ウイルスが生物戦であることを暗示し、「生物戦というこつの文字は消えることはない」
 「原爆は強いでしょう。生物兵器の前では、原爆でも水素爆弾でも、まったく武器にはならないかもしれない」
 動画でこの文章のスクリーンショットを写したあと、郭文貴氏は、アメリカ人はまだ中共がどのような悪の政権であるかを意識していない。米国人は金銭を信じ、マスコミを信じている。しかし彼らのメディアの中でどれほど多くの人がすでに中国共産党に買収・浸透されているか思いもよらないだろう。その中で何人が民衆の側に立っているのか?真実の側に立っているのか?そのため、トランプ大統領が正しい行いをすると、アメリカのメディアはでたらめな偽ニュースを流す。
 また、「西陸網」は1月22日に邱崇畏という人物の文章「武漢新型肺炎は米国の生物戦の匂いがする」を掲載した。同様に、武漢の疫病発生の責任を米国に転嫁した。
 この文章では、「米国は中国に対してもっと極端な手段に出るかもしれない」「米国はサイバー戦や宇宙戦を始めるかもしれない。しかし、皆さんが本当に無視できないのは『生物戦』です」と対立を煽動した。
 郭文貴氏は次のようにまとめた。「今は、米国人が目覚めるかどうかの歴史上最も重要な瞬間であり、現在武漢の疫病はまさに戦争である。この戦争は国賊である中国共産党と14億人の中国国民の戦争だ。そして中国共産党は14億中国国民を煽動して米国に戦争を仕掛けようとしているのだ。」
(翻訳・柳生和樹)
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台湾の自由と民主主義を支援しよう2

2020-02-07 09:49:27 | 国際関係
●台湾と中華民国

 台湾はもともと、シナ大陸の一部ではなく、シナの支配を受けたこともなかった。日本と清が日清戦争で戦い、勝った日本は、台湾を割譲され、以後50年間統治した。この間、日本は台湾の開発に努め、教育・衛生・建設・食糧生産などで、さまざまな貢献をした。
 日本が大東亜戦争に敗れた後、台湾の帰属は保留となった。シナ大陸では、1946年(昭和21年)から国民党軍と共産党軍による国共内戦となった。
 ここで国民党軍というのは本来、中華民国の正規の軍隊である。中華民国は1912年にシナ大陸で建国され、蒋介石政権は、シナ大陸を統治する正統な政府だった。中華民国は、第2次世界大戦では連合国に加盟した。その政府軍に対して、共産党軍は反政府軍である。
 内戦は共産党軍が優勢に戦いを進め、1949年(24年)5月、共産党軍は国民党軍を大陸から追い出した。中華民国総統の蒋介石は、大陸を脱して台湾に移った。蒋介石は、中華民国政府を台北に置いた。その結果、台湾は大陸から侵入した中華民国政府に支配されることになった。
 蒋介石の国民党政権は、台湾人を一方的に搾取し、殺戮し、暴虐の限りを尽くした。外来のシナ人による支配は、台湾人を抑圧し、民族的アイデンティティを奪うものだった。
 中華民国は、第2次世界大戦後、連合国が常設的な組織を作ると、「連合国=国際連合」の一員として、安全保障理事会の構成員となった。
 1949年(昭和24年)10月、シナ大陸では、中国共産党が中華人民共和国を建国した。中華人民共和国は、ソ連の支援を受けてできた国であり、1950年(昭和25年)にソ連と中ソ友好同盟相互援助を締結した。アメリカは台湾に逃れた中華民国を支持し、台湾海峡を挟んで東西両陣営がにらみ合う構図となった。
 1950年(昭和30年)6月、朝鮮戦争が勃発した。アメリカ政府はそれまで国民党のあまりの腐敗ぶりに呆れ、台湾が共産化されてもやむなしと見放しかけていた。しかし、朝鮮戦争でアメリカ政府は態度を一変させた。朝鮮半島が共産化され、台湾も中国によって共産化されたら、アメリカは東アジアで決定的に後退してしまう。そこでアメリカは台湾の中華民国を支持し、台湾を防衛する方針を固めたのである。
 この結果、台湾海峡を挟んでアメリカと中ソという東西の両陣営がにらみ合う構図となった。台湾の立場で言えば、東アジアで冷戦構造が固定したので、アメリカの後ろ盾を得て、共産中国に併合されずに独自の道を歩むことができたのである。
 中華人民共和国は、建国後、核兵器の開発に力を注いだ。中国が国際社会で影響力を増すと、アメリカは、それまでの反共政策を改め、台湾より共産中国を重んじる方針に転じた。それまで中国の国連加盟を阻止していたアメリカが中国の加盟に賛成し、強く後押しした結果、中国は、1971年(昭和46年)に国連に加盟を許された。この時、蒋介石政権は、国連から脱退した。脱退したのは、厳密には蒋介石政権であって、中華民国そのものではない。しかし、実質的に台湾は国連から追放されたに等しい。国連の代表権は、中華民国から中華人民共和国に移った。また、共産中国は、台湾に代わって国連安保理の常任理事国となった。
 中華人民共和国の国連加盟の翌年1972年(昭和47年)2月、アメリカのニクソン政権は、キッシンジャー外交によって、電撃的な米中国交回復を行った。中ソ対立が激化する中、アメリカは中ソを分断することに成功した。アメリカは、中華人民共和国と国交を回復する一方、中華民国とは国交を断絶した。
 米中国交回復は日本の頭越しだった。日本はアメリカに追従するしかなく、1972年(昭和47年)9月、日中国交回復とともに台湾との断交を選択した。独自の国防力を持たないわが国は、国家存立のために日米同盟に頼らざるを得ず、外交もまたすべて対米関係を軸とするしかなかった。
 日本は、米国等とサンフランシスコ講和条約を結んだが、中華人民共和国と中華民国は、ともに講和会議に招かれなかった。日本は、中華民国とは、別途交渉を行ない1952年(昭和27年)4月に日華平和条約を結んだ。中華民国は同条約で、「日本国民に対する寛厚と善意の表徴として」賠償請求権を放棄した。わが国の政府は、1972年(昭和47年)年9月に行なわれた日中国交正常化で、日華平和条約は「終了」したとしている。

 次回に続く。

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新型コロナウイルスは生物兵器で、死者は2万4589人?

2020-02-06 09:43:20 | 国際関係
 1月29日、私はブログに次のように書きました。
 「1月28日現在、新型コロナウイルスによる肺炎による死者は106人、感染者は4500人以上と報道されています。この数字を基にすると、致命率は2.36%です。SARS(重症急性呼吸器症候群)は致命率9.6%、MERS(中東呼吸器症候群)は致命率34.4%でしたから、これらと比べると、現在のところ、新型コロナウイルスは、広まるのは早いが、致命率は低いと見られます。
 ただし、WHOでSARSの対応にあたったという専門家によると、ウイルスは人体で増殖する、その際、コピーミスで変異が起こり、病毒が増す可能性があるとのことです。
 なお、実際の感染者は10万人以上とか25万人以上ではないかという専門家たちの推測があり、また、武漢市から4人に1人が重症化と伝える医師がいるなど、様々な情報があり、報道がどの程度、実態を伝えているかは、わかりません。」
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/e0e40b9bbcbfebf3179f944a10481c13

●感染は猛烈に拡大している

 ジャーナリストの河添恵子氏が最前線の情報をリポートしています。

・英米の感染症生物学者による1月31日時点の予想:
「2月4日には、新型ウイルスが発生した湖北省武漢市で13万人から27万人以上の感染者が予測される。ほかに最大規模の感染者が予想される中国の都市は、上海、北京、広州、重慶、成都だ」「飛行機での移動を通じて感染拡大の危険性が高い国や特別行政区は、タイと日本、台湾、香港、韓国である」

・ BBCの1月31日の報道:
「チベットでも感染者が確認されたことは、中国すべての地域にウイルスが到達したことを意味する」

・河添氏:
「上海では先月末までに、市内201カ所の公園が閉鎖された。上海で最も有名な繁華街『南京路』が“無人状態”となっている」

●生物兵器説が強まる

 先述のブログ記事には、英紙デイリーメールは武漢国立生物安全実験室から漏れたウイルスが今回のパンデミックの原因だと報じ、米紙ワシントンタイムズも同様の見方の記事を流したと書きました。
 河添恵子氏は、次のように書いています。
「中国内外からは、『武漢市の海鮮市場からウイルス感染が広がったのではなく、SARS(重症急性呼吸器症候群)や、エボラ出血熱といった危険な病原体を研究するために指定された中国唯一の研究室“武漢P4研究室”から生物化学兵器が漏れた』という説とともに、犯人捜しがヒートアップしている」
「『習政権は、昨秋から戦争の準備をしていた』とか、『9月には、すでに新型コロナウイルスが存在していた』という話も、フェイクとは言い切れなくなった。なぜなら、武漢天河国際空港の税関で『コロナウイルスの感染が1例検出された』という想定での緊急訓練活動が昨年9月18日に実施されたことを、湖北省の官製メディアが報じているからだ」
 また河添氏によると、ブッシュJr政権時代、バイオテロ法の米国内法と国際法を起草したハーバード大学法科大学院で博士号を取得し、アムネスティ・インターナショナル理事でもあるフランシス・ボイル博士は「新型コロナウイルスは、武漢P4研究所から漏れた生物兵器」とインタビューで明らかにしたとのことです。
 こうした専門家の見方が国連や対中外交の場面で、いつ公に発表されるかです。
 もし生物兵器だったとすれば、中国共産党は極めて危険な人工ウイルスの管理に失敗し、大規模な自爆事故を起こしたことになります。

●死者の実態は?

 2月1日新型コロナウイルスによる死者は2万4589人という情報が、中国で流れました。その時点で公式発表されている死者の数を二桁上回ります。

 台湾人クリスさんのツイートから。

☆Chris*台湾人☆@bluesayuri
中国の騰訊メディア、今朝、新型肺炎の真実数字をうっかりアップした、1秒ですぐ変えたが、画面はすぐネット民にfocusされた。
真実な死亡数24589人!感染確認154023人!
中国の隠蔽、ウソは極めて残酷非道、沢山の中国人が害された。
https://tw.news.yahoo.com/…/%E5%BF%AB%E6%96%B0%E8%81%9E-%E8…

 フェイクニュースか、放送事故か、意図的な情報提供か。
 感染者が15万4023人で、死亡者が2万4589人という数字がもし正確であれば、致命率は15.96%になります。
 SARSは致命率9.6%、MERSは致命率34.4%でしたから、この情報で仮定する場合、新型コロナウイルスの致命率は、SARSより高く、MERSより低いということになります。ただし、感染が非常に速いのが特徴です。
 致命率は10%台だが感染率が高いというのは、スペイン風邪を想起させます。1918~1919年のスペイン風邪は、当時の世界人口が推計18~20億人のうち、感染者が5億人以上、死者が5千万人から1億人、致命率は10~20%であると推定されています。医療・栄養・衛生・国際協力体制等、現在とは条件が大きく異なりますので、単純な比較はできませんが、国際社会は総力を挙げて感染拡大を防がねばなりません。

 なお、上記のニュースを流した騰訊(テンセント、Tencent)は、ネット上の情報によると、中国広東省深圳市に本拠を置く持株会社で、インターネット関連の子会社を通して、SNS、インスタントメッセンジャー、Webホスティングサービスなどを提供しており、アリババ集団とアジア企業ナンバーワンを争うとのことです。
 そういう企業の情報発信会社から、上記の情報が流れたということは、中国社会の大きな変動の兆しかもしれません。

台湾の自由と民主主義を支援しよう1

2020-02-05 13:29:17 | 国際関係
 香港では、昨年(2019年)逃亡犯条例への反対運動が高まり、中国共産党政府は、民主化運動を厳しく鎮圧している。台湾では、もし台湾にも「一国二制度」が導入されれば、今の香港のようになると危機感が強まった。中国から台湾の自由や民主主義を守ろうという人々が増え、本年(2020年)1月11日の総裁選では、蔡英文氏が再選された。ひとまず台湾が中国の影響下に置かれることは避けられた。だが、中国は、軍事力で台湾の支配を図る意志を表している。もし台湾が中国に支配されたら、日本に石油等を運ぶシーレーンが中国に抑えられ、日本は中国の意思に従わざるを得なくなる。
 それゆえ、台湾問題は、日本自体の問題でもある。日本国民は、中台関係を踏まえ、わが国の国家安全保障を真剣に考えなければならない。日本が東アジアで自由民主主義を守り、共存共栄の道を示すことが、アジアの平和と繁栄、世界の平和と繁栄につながり、なにより日本自体の存立にかかっていることを認識すべきである。
 5回の予定で短期連載する。

●香港危機の中で蔡英文総統が再選

 2020年(令和2年)1月11日、台湾で総統選挙が行われた。
 現職の総統である蔡英文候補は、総統選挙の前日の演説で、次のように訴えた。
 「今は合法である限り、いかなる人もデモ・集会の権利を警察に守ってもらえる。警察に放水砲や催涙弾を撃たれる心配はない。盾を持った警察が急に駆け寄ってきて、警棒で殴られ、血まみれになる心配もない。これが民主主義です。若い皆さん、台湾は民主主義という道を長い時間歩んできた。その過程はとても辛かった。民主主義は空から降ってきたものではなく、無数の抗争と多くの人々の命がけの奮闘により、この地に根付いたもの。そのおかげで我々は民主的な生活が出来る。皆さんがこの道をどう歩んでいくのか、全世界の人々、とりわけ香港の若い方達に注目されている。香港の若い方達は、命と血と涙で、我々に「一国二制度」は通ってはならぬ道だと示してくれた。若い台湾の皆さん、民主的自由の価値は、いかなる困難をも克服できることを、明日香港の人々に示そう」
 自由と民主主義とは、どういうものであるか。日本人が学ぶべき、素晴らしい演説である。
 台湾の選挙戦を現地取材した、作家でジャーナリストの門田隆将氏は、産経新聞の電話取材に応えて、「まさに、『自由』と『民主』『人権』を守る戦いだった。香港に続き、台湾でも若者らが命懸けで戦い、勝った。蔡氏の勝利宣言を聞きながら、台湾の若者たちが泣いていた。子孫に対して自分の責任を果たしたことへの安堵感だろう。ぜひ、日本の若者にも見せたかった」と語っている。
 また、門田氏は「北京政府は今後も台湾を圧迫するだろう。そして、日本でも中国の浸透工作が進んでいる。覇権主義を前面に出し、沖縄・尖閣諸島をも奪取しようとするだろう」と予想している。IR(統合型リゾート)をめぐる贈収賄事件では、与野党議員がチャイナ・マネーを受け取っていた。北海道では、中華人民共和国(中国)の資本によって土地が買い占められ、沖縄にも中国の手が深く入り込んでいる。門田氏は「政治家の使命は、国民の生命と財産、国土を守ることだが、日本は『平和ボケ』で、すっかり忘れている。早急に、日本の国土を守る法整備をすべきだ。台湾総統選を見て、『日本人よ、目を覚ませ、危機意識を持て』と思った」と語っている。
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/200114/for2001140003-n1.html?fbclid=IwAR1k0lfc4WcThXAUIyzsWzUDzvUshwi5k7XYZVbsQf2gs_IH3OogEijxtcs
 蔡英文総統は、再選後BBCのインタビューに応じ、次のように語った。
 「われわれには独立国家を宣言する必要はない」「私たちはすでに独立国家であり、中華民国や台湾と呼んでいる」「われわれは独自のアイデンティティーを持っている。この国は私たちの国だ」「われわれには、成功した民主主義とかなり妥当な経済がある。中国から敬意を受けるに値する」と蔡氏は述べた。さらに蔡氏は中国政府による軍事行為を警告し、「台湾を侵略するならば、中国は非常に大きな代償を払うだろう」とも話した。
 もし台湾が共産中国に支配されたら、日本に石油等を運ぶシーレーンが中国に抑えられることになる。日本は中国の意思に従わざるを得なくなる。台湾が自由と民主主義を国是とする独立国家であり続けることは、日本の存立に関わる重要な事柄である。わが国は、米国の台湾関係法を参考にして、中華民国(台湾)に関する政策の基本を定め、台湾との関係を強化すべきである。

 次回に続く。

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インド49~如来蔵の思想

2020-02-04 09:38:49 | 心と宗教
◆如来蔵または仏性の思想

・如来蔵
 大乗仏教の中期に、すべての人間のうちには仏陀(如来)になり得る可能性があると説く如来蔵または仏性の思想が現れた。
 如来蔵は、サンスクリット語のタターガタ・ガルバの漢訳である。原語は「如来の胎児」を意味する。
 如来蔵思想は、『如来蔵経』に始まる。この経典は、衆生を「その胎に如来を宿すもの」と呼んだ。それは、心は本来清浄なものだとする自性清浄心(しょうじょうしん)と、それが一時的に煩悩が付着して汚れているとする客塵煩悩染(ぼんのうぜん)という考え方による。
この思想は、『勝鬘経』、『涅槃経』等に受け継がれて発展した。『勝鬘経』は、在家信仰を鼓吹する立場から如来蔵法身を説いた。『涅槃経』は『大乗涅槃経』ともいい、釈迦の入滅について語りながら仏陀の永遠の生命を説き、それとの関係で如来蔵思想を表した。
 こうした展開を受けて、如来蔵思想は、4~5世紀にインドで成立した究竟一乗宝性論(宝性論)で組織化して説かれた。宝性論は、如来蔵を三つの意味に解釈する。すなわち、(1)如来の法身が衆生に遍満すること、(2)衆生は如来と同じく真如を本性とすること、(3)衆生は将来、如来となる因を持つことである。如来蔵は、あらゆる穢れに染まらない清浄なものだが、煩悩によって覆い隠されている。煩悩を滅することができれば、誰もが悟りを得られるとする。
 如来の法身はそれ自体で存する実体、真如の本性は永遠不変の本質と理解することができるから、釈迦のもともとの教えとは、大きく異なっている。だが、釈迦の説にとどまれば、衆生が如来になり得る可能性は基礎づけられない。そこに如来蔵思想が発生し、発達した理由がある。
 如来蔵思想は、唯識説の阿頼耶識思想と最初は対立したが、やがて融合するようになった。唯識説では、悟りに到達すれば、迷いを生み出す阿頼耶識が大円鏡智すなわち完全なる仏の智慧に転換すると説く。それには、この転換が起こり得る可能性がもともと衆生に内在していなければならない。その可能性を確保するのが如来蔵思想という関係になる。
 如来の胎児は、どこに宿っているのか。阿頼耶識自体が胎児なのか、それとも阿頼耶識は母胎でそこに宿るのか。私見を述べると、唯識説はアートマン(我)を否定し、阿頼耶識が輪廻転生の主体だとするが、唯識説が融合した如来蔵思想は、『ウパニシャッド』の梵我一如説と同じ構造を持っている。
 如来を梵(ブラフマン)、如来の胎児を我(アートマン)と対比してみよう。仏教は無我説を説くから、如来の胎児を我(アートマン)とは呼ばないが、如来の胎児は、迷いの我ではない真如の我、真の自己ととらえることが可能である。真如の我、真の自己とは、われわれが通常考えているような我、自己ではない。如来(梵、ブラフマン)と同じ本性を持つ如来蔵(我、アートマン)は、煩悩によって覆い隠されてしまい、自ら見失っている本来の自己であるということができる。
 如来蔵思想は、インドにおける密教の成立に大いに寄与した。密教は、仏教のヒンドゥー化が最高度に進んだものである。その思想は、仏教の概念を用いて、『ウパニシャッド』の梵我一如説を説いているといっても過言ではない。
 如来蔵思想は、シナ・日本の仏教に深い影響を与えた。『法華経』の一乗思想と融合し、多くの宗派の基本思想となっている。

 次回に続く。

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