ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

台湾の自由と民主主義を支援しよう6

2020-02-13 11:38:12 | 国際関係
●台湾人に伝わる日本精神

 米国にとっての台湾は、米国の世界戦略における地政学的に重要な地域であり、それにすぎない。だが、日本にとっての台湾は、単に政治・外交・安全保障という観点からだけではない重要性がある。日本は、日清戦争で清に勝利し、清から台湾を割譲され、以後50年間統治した。この間、大東亜戦争で日本が敗れるまで、台湾人は日本国民だった。そして、現在、台湾人の多くは、旧日本国民である。そこに、米国と台湾の関係とは異なる日本と台湾の関係がある。
 日本は台湾統治時代に、台湾の開発に努め、教育・衛生・建設・食糧生産などで、さまざまな貢献をした。それを通じて、台湾人に日本精神を伝えた。日本人から日本精神を学んだ世代の台湾人は、今も日本精神を高く評価し、またそれを保ち続けている。
 台湾が日本の領土だった時代に、台湾で日本人から教育を受けた人に、蔡焜燦(さいこんさん)氏がいる。蔡氏は現在、ハイテク企業等、数社を経営する台湾財界の著名人である。氏は、次のように語っている。
 「私の経営理念の根底には、日本統治時代の教育精神がありました。日本人の教師たちは、われわれ台湾人に『愛』をもって接し、『公』という観念を教えてくれました。 私は、会社経営にあたっては、常にこの『日本精神』で臨み、『大和魂』で艱難辛苦を乗り越えてきました。それは、きっとこれからの台湾の国づくりにも不可欠の精神だと思います。
 日本の台湾への最大の贈り物は、この精神を残してくれたことです。公の意識とそれに殉ずる精神、武士道の心です。今、私たちはこのサムライ精神で大陸と対峙し、台湾人のための台湾づくりに向っているのです。
 『日本精神』は台湾語で『リップンチェンシン』と発音し、これはすべて良いものという意味の普通名詞となっています」(『日本の息吹』平成12年6月号)
 蔡焜燦氏には『台湾人と日本精神~日本人よ胸を張りなさい』(小学館)という著書がある。この本は、戦前の台湾で、日本人がいかに立派なことを行ったかを、台湾人の立場で記している。そして、台湾の人々が、日本統治時代に日本人から教育された「日本精神」を、今日も大切に持ち続けていることを伝えている。
 蔡氏と同じく台湾人の金美齢氏は、「日本精神」とは、次のようなものだと言う。
 「台湾には今でも『日本精神』という言葉が残っている。日本語でも通じる漢字の表記であるが、台湾語で『リップンチェンシン』と言う。『日本精神(リップンチェンシン)』ーー台湾では生きている言葉でも、日本では聞かれなくなった言葉であろう。今の日本人は誰も『日本精神』などと言わない。
 台湾における『日本精神』は、勤勉、向学心、滅私奉公、真面目、約束事を守る、時間を守るといった諸々の価値を包括している。それはたとえば『この人は〝日本精神″で店を経営している』と言われる商店主は、大いに信用できるということなのである」
 「『日本精神』とは偏狭なモラルではない。世界に通じる、人間が真っ当に生きてゆくための基本的なルールであると言っていいだろう。かつての多くの日本人はそれを持っていた。自らの大切な伝統、価値観としてそれを連綿と伝え、さらにはそれを植民地にまで持っていって実践してみせた。台湾はそれを受け入れたのである。50年にわたる植民地時代にそれを自分たちの言葉とし、大切にし、今でも懐かしがっている」(月刊『日本』 平成10年5月号)
 元台湾総統・李登輝氏は、月刊誌「VOICE」平成18年5月号(PHP研究所)に「『日本精神』こそ世界の指針」という文書を寄稿した。
 李氏は戦前、日本統治下の台湾で教育を受けた。「当時の日本の教育システムはじつに素晴らしいもので、古今東西の先哲の書物や言葉に接する機会を、私たちにふんだんに与えてくれるものでした」といい、「『人間はどのように生きるべきか』という哲学的命題から『公』と『私』の関係についての指針が明確に教えられていました」と書いている。
 李氏は、このような教育を受ける中で新渡戸稲造の著書『武士道』と出会った。李氏は、「世界に誇る日本精神の結晶というべき『武士道』」について、新渡戸の論を次のように理解している。武士道の形成は、「日本で営々と積み上げられてきた歴史、伝統、風俗、習慣があったからこそ」であり、儒教の影響も挙げられるが、「中国文化の影響を受ける以前からの、大和民族固有のもの」である、と。そして、李氏は、「彼(新渡戸)によって再発見された『武士道』は、日本人の“不言実行あるのみ”の美徳であり、『公』と『私』を明確に分離した『公に奉じる精神』といってもよいでしょう。もちろんそれは中国文化とはまったく異質なものです」と述べる。
 李氏は、武士道は「日本人の血となり肉となって定着していた」ととらえる。その観点から、次のように言う。「そうであるからこそ私は、終戦後における日本人の、価値観の百八十度の転換を非常に前年に思うのです。今日の日本人は一刻も早く戦後の自虐的価値観から解放されなければならないと思うのです。そのためには日本人はもっと自信をもつことです。かつて武士道という不文律を築き上げてきた民族の血を引いていることを誇るべきなのです。そうすることで初めて、日本は世界のリーダーとしての役割を担うことができるのです」と。
 大東亜戦争の敗戦後、日本人は自己本来の日本精神を失ってきている。そのため、家庭、社会、国家等、あらゆる面に問題が噴出している。そうした日本人に対して、元日本国民である台湾人が日本人は日本精神を取り戻すべきだと訴えているのである。そうした人々のいる台湾を軽視し、中国との間の利害得失を第一に追い求めて来た日本人は、これまでの自己のあり方を反省し、まず自己本来の日本精神を取り戻すこと、そして台湾及び中国との関係を再構築すべきである。

関連掲示
・拙稿「李登輝は『日本精神』の復興を訴えている」
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion04b.htm

●結びに~日本精神の復興で国家の再建、共存共栄へ

 中国の習近平政権は「祖国の統一」を必達の目標としており、民主的かつ合法的な方法では「統一」ができないと判断すれば、台湾に対して武力を行使するだろう。
 中国共産党が台湾に固執するのは、「祖国の統一」が共産党政権の正統性を維持するために必須の課題だからである。また、中国の覇権拡大のために、台湾が台湾の戦略的地政学的に重要な位置にあるからでもある。
 台湾は中国が太平洋に進出するために、重要なカギとなる位置に存在する。台湾は東シナ海と南シナ海の間に位置し、渤海・黄海・東シナ海と南シナ海を二分する位置にある。もし中国が台湾を併合できれば、中国は太平洋に面した国になる。それが達成されれば、アジア、太平洋への覇権確立は可能になり、インド洋への戦力拡大も可能になる。逆に台湾を確保しなければ、中国の勢力は海に進出できない。だから台湾併呑は中国にとり、自らの生存にかかわる大きな課題となっている。
 今後、もし台湾の自主自立勢力が後退し、親中派・統一派が政権に就いて、台湾と中国と一体化していくならば、わが国の安全保障は極めて厳しいものとなる。中国は、台湾に武力攻撃の恫喝をかけながら、経済の力で親中派を支持している。中国の資本は台湾のマスコミの8割を買収し、親中的な世論の醸成を行なっている。民主的かつ合法的な併合であれば、アメリカも手出しできない。アメリカと戦火を交えることなく、国際社会の非難を受けることもなく、目的を達成できる。
 もし中国と台湾が武力でぶつかり合えば、東シナ海が戦場になる。タンカーなどの海上輸送に影響が出るだろう。仮に台湾が独立を宣言し、これに中国が武力を行使して、国際社会がそれを黙認したならば、世界の秩序はびん乱する。そして、石油と食糧をめぐる新たな資源争奪戦が繰り広げられ、修羅場のような世界が再現されかねない。
 戦前の日本では、満蒙はわが国の「生命線」と呼ばれた。今日、台湾はわが国の新たな「生命線」となっている。わが国の産業も国民生活も、石油なしには成り立たない。中東と日本を結ぶシーレーンの要に台湾がある。中国が台湾を併合すれば、日本は台湾海峡・バシー海峡というシーレーンの重要な拠点を押さえられたことになる。バシー海峡は、台湾とフィリピンの間の海峡である。
 台湾が中国の掌中に入れば、わが国の運命は中国の手に握られる。だから、台湾問題は、日本自体の問題でもある。日本国民は、中台関係を踏まえ、わが国の国家安全保障を真剣に考えなければならない。日本が東アジアで自由民主主義を守り、共存共栄の道を示すことが、アジアの平和と繁栄、世界の平和と繁栄につながり、なにより日本自体の存立にかかっていることを認識すべきである。
 ここで真剣に考えなければいけないのは、わが国は、未だ日本人自らの手による憲法の改正ができておらず、国家の再建ができていないことである。わが国は、戦後、外国から憲法を押しつけられ、それを今日まで改正できずに来ている。戦勝国によって国防に規制がかかられ、自国の存立を他国に委ねさせられている。国民には、国家への忠誠や国防の義務がない。そのため、日本は独立主権国家としての要件を欠いており、日本人は国家・国民の意識が薄弱となっている。また、国を守ろうという意思が失われている。日本の安全と繁栄のためには、この憲法を改正して、国のあり方を根本から立て直すことがどうしても必要である。
 中台関係が極めて重要な段階に来ているなか、わが国はこうした国際環境を踏まえ、憲法の改正を急ぎ、国のあり方を根本から立て直さなくてはならない。先に書いた台湾関係法も、それだけでは真に有効なものにはならない。現行憲法の下で台湾関係法の制定は可能だが、日本人自身の手で新しい憲法を制定してこそ、こうした法律が真に有効なものとなる。自衛隊の明記、緊急事態条項の新設等だけでなく、憲法の全面的な改正が急務である。
 憲法を改正して、国家を再建し、新たな国際関係を築くために、最も必要なことは、日本人が日本精神を取り戻すことである。現在の日本の国家的な危機は、大東亜戦争の敗戦後、日本人が日本精神を失って来たことの結果、生み出されたものである。そのことに気づいて、自己本来の精神を取り戻す時、はじめて憲法の改正が可能となり、また日本の再建を成し遂げられる。またそれによって、中国・台湾との国際関係を改善し、東アジアに自由と民主主義を尊重する共存共栄の国際社会を実現することができるだろう。(了)

関連掲示
・マイサイトの「日本の心」のページ
http://khosokawa.sakura.ne.jp/j-mind.htm
・マイサイトの「日本精神」のページ
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion04.htm
・拙稿「日本国憲法は亡国憲法――改正せねば国が滅ぶ」
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion08c.htm
・拙稿「日本再建のための新憲法――ほそかわ私案」
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion08h.htm
・拙稿「いまこそ憲法を改正し、日本に平和と繁栄を~9条と自衛隊」
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion08q.htm

************* 著書のご案内 ****************

 『人類を導く日本精神~新しい文明への飛躍』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/cc682724c63c58d608c99ea4ddca44e0
 『超宗教の時代の宗教概論』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/d4dac1aadbac9b22a290a449a4adb3a1

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