ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

オバマVSロムニー3~ネオコン

2012-06-20 08:50:35 | 国際関係
●共和党を変えたネオコン

 共和党には近年明らかな変化が見られ、グローバリズムを志向する勢力が目立つようになっている。この変化のきっかけは、民主党から共和党に移籍したグループによる。新保守主義者(ネオ・コンサーバティスト)、略称ネオコンという。
 ネオコンの源流は、1930年代に反スターリン主義の左翼として活動したトロツキストである。彼らは「ニューヨーク知識人」と呼ばれるユダヤ人の集団だった。そのうちの一部が、第二次世界大戦後、民主党に入党し、最左派グループとなった。
 彼らは、民主党カーター大統領の人権外交に不満を持った。そして、共和党のレーガン大統領がソ連に対抗して軍拡を進め、共産主義を力で克服しようとしたことに共感し、1980年代に共和党に移った。反スターリン主義が反共産主義へと徹底されたわけである。彼らは、もともと共和党を支持していた伝統的な保守とは違うので、ネオコンという。
 ネオコンは、自由とデモクラシーを人類普遍の価値であるとし、その啓蒙と拡大に努める。西洋近代的な価値観を、西洋文明以外の文明に、力で押し付けるところに、闘争性がある。その点では、戦闘的な自由民主主義と言えるが、そこにユダヤ=キリスト教の世界観が結びつき、イスラエルを擁護するところに、顕著な特徴がある。
 ネオコンは、ブッシュ子政権において、政権の中枢に多く参入した。そして、グローバリズムの思想に基づいて、力による覇権を目指す世界戦略を展開した。ネオコンには、ユダヤ系の知識人が多く、アメリカ=イスラエル連合というべき関係を強固なものとした。
 共和党のブッシュ子から民主党のオバマに大統領が変わった後、ネオコンの勢力は大きく後退したように見える。来る大統領選挙の共和党候補者ロムニーは、中道派・穏健派と呼ばれるが、外交・安全保障のブレーンやスタッフにはネオコンの戦略家や実務家がいる。そして、重要なのは、グループとしてのネオコンより、その背後にある勢力である。すなわち、イスラエル・ロビーと呼ばれる勢力であり、また彼らを支える巨大国際金融資本である。

●共和党・民主党とも動かすイスラエル・ロビー

 今日、アメリカでは、イスラエル・ロビーが最大のロビー団体となり、アメリカの外交政策に強い影響を与えている。アメリカ合衆国は、世界最大のユダヤ系人口を持つ国家であり、ユダヤ系米国人の多くが、親イスラエルの思想・感情を持つ。またユダヤ系米国人には、政治・経済・科学・文化・芸術・教育等で活躍している知識人や有力者が多い。ユダヤ系米国人やイスラエルを宗教的な信仰によって擁護するキリスト教右派等を中心に、イスラエルを支持・擁護し、米国の政治・外交をイスラエルに有利なものにしようと政治家や議会に働きかける団体が、イスラエル・ロビーである。
 イスラエル・ロビーは政府・議会・政治家に積極的に働きかけ、アメリカの政策をイスラエルに有利なものに誘導している。彼らの活動の目的は、アメリカの政治・外交をイスラエルに有利なものに導くことである。そして、イスラエル・ロビーはアメリカ=イスラエル連合を絶ち難いまでに確固としたものすることに成功している。
 こうした状態を危惧するアメリカ国民の中から、合衆国政府はアメリカの国益よりもイスラエルの国益を優先しているという批判が上がっている。高名な国際政治学者ジョン・ミアシャイマーとステファン・ウォルトによる『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策』(講談社、2007年)は、言論界に一石を投じた。著者たちは、イスラエル・ロビーの強い影響力により、アメリカの政策論議は合衆国の長期的安全保障を損なう方向に向かっていると主張する。イスラエル・ロビーの団体は、極右政党リクードに近い団体・個人で構成されていると指摘。他の団体・個人との境界線は曖昧で、多くの学者、シンクタンク、政治活動委員会、ネオコン・グループ、キリスト教団体等がロビー活動を支援しているという。
 具体的には、アメリカ政府は政権が共和党・民主党の違いに関わらず、イスラエルに大規模な無償の軍事援助を行っている。2007年から10年間、毎年30億ドル、合計300億ドルの援助を行う予定である。また、国連安全保障理事会でイスラエルに不利な提案が出されると、アメリカは必ず拒否権を発動している。イスラエル・パレスチナ問題においては、イスラエル側に立って関与しており、アラブ諸国の批判を受けている。
  イスラエル・ロビーは、ロックフェラー家やロスチャイルド家、ユダヤ系金融資本家等を資金源とし、潤沢な資金を持つ。また、そこにはユダヤ人の優秀な頭脳が集まっている。彼らによってイスラエルを批判しているとみなされた者は、選挙で落とされる。そのため、いまやアメリカのほとんどの政治家は、共和党・民主党にかかわらず、イスラエル・ロビーの主張に同調したり、イスラエルの外交政策を支持したりするようになっている。
 2008年(平成20年)の大統領選挙において、有力候補者たちは、早々にイスラエル支持を表明した。共和党のジョン・マケイン、ルドルフ・ジュリアーニ、ミット・ロムニーら、民主党のバラク・オバマ、ヒラリー・クリントン、ジョン・エドワーズら、みなそうだった。選挙は彼らのうちマケインとオバマの戦いになり、オバマが勝った。今度の2012年の選挙はオバマとロムニーの戦いになる。だが、二人のうちどちらが勝っても、イスラエル支持という点では変わらない。

 次回に続く。