ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

救国の経済学7~丹羽春喜氏

2011-05-22 08:40:08 | 経済
●日本からケインズ革命を完成させる
 
 丹羽氏は、平成21年(2009)刊行の『政府貨幣特権を発動せよ。』を、「ケインズ革命を真に完成・成就させる秘伝」を述べ示す書であると自負する。
 先に掲載したケインズ革命による政策体系を稼動させるための必要条件は、三つあった。①の「デフレ・ギャップ、インフレ・ギャップの計測と確認」については、丹羽氏によるグラフ(先に別掲)とその説明文によって示されている。②の「『有効需要の原理』(乗数効果)の作動状況の把握」については、わが国の経済において、有効需要の原理が確実に、ゆるぎなく作動していることが実証されている。最後の③「『国(政府)の貨幣発行特権』の確立と、その財政財源への活用」こそ最も重要な必要条件だが、丹羽氏はこれまで多くのノーベル賞受賞経済学者が提案してきた「政府の貨幣発行特権」を発動するための「スマートで具体的な手法」を考案したとして、これを発表している。それゆえ、三つの必要条件は、この日本において充足されると丹羽氏は主張する。
 ケインズ革命に基づく経済政策を実行する体制の構築は、「為政者の決断次第で、容易になしうる」と丹羽氏は言う。わが国では、「真正のケインズ革命」が達成できる。「本格的なケインズ的政策の大規模な発動」が可能であり、「経済と国威の力強い飛躍的興隆」をもたらしうる。「世界的な金融の大混乱や諸外国の景気後退が、どんなに激甚であろうとも、理論上、そのことは十分に可能なことであり続けるはずである。主要諸外国も、これにならい始めるものとするならば、それは全人類文明の輝かしい繁栄を約束する重要な契機となるにちがいない」と丹羽氏は主張するのである。

●現状を打破する決起に期待する

 では、わが国の現状はどうか。丹羽氏は、同書で次のように言う。
 「過去20年あまりというものは、わが政府当局(とくに旧経済企画庁ならびに現内閣府)は、この3つの必要条件にぴったりと狙いを定めて、この①②③を、あるいは否認し、あるいは秘匿し、さらには、まぎらわしいミス・リーディングな数値を弄して隠蔽・糊塗をはかるなど、悪質な欺瞞情報オペレーションを徹底して駆使することによって、わが国において『ケインズ革命』が成就されて『ケインズ主義の復権』がなされることを、頑強に阻み続けてきているのである。
 このような頑迷固陋な経済官僚たちによる欺瞞情報オペレーションは、現在では、まさに、わが国の社会全般におよぶところの『反ケインズ主義』イデオロギーそのものによる強固きわまる思想統制システムとなりおおせてしまっている。これこそが、わが国の経済における異常に長引く不況・停滞と、国威の衰退・低落の主要原因をなしているのである」と。
 そして。次のように訴えている。
 「わが国の論壇人・言論人は、この危機的な真実の事態に目をふさぎ、それを直視しようとはせずにすごしてきた怯堕・小心な従来のスタンスを、今こそ、真摯に反省し、懺悔すべきである。そして、この不条理かつグロテスクな思想統制の鉄鎖を、なんとしてでも打ち砕かねばならぬと、断固として決意すべきである。しかも、そのことを為しうるのは、他でもない、結局のところ、知識人たち自身である。憂国の言論人たちが、志を同じくする編集者やメディア経営者たちと一丸となって、論壇の総力をあげて闘い続けるほかはないのである。知識人たち、言論人たちの決起に期待すること、真に切なるものがあると言わざるをえない」と。(「ケインズ主義の復活なくして日本の復活なし」)

 次回に続く。