検察審査会の2度の議決を受けて、小沢一郎氏が強制起訴された。
私はこれまで「民主党に自浄能力があるならば、すみやかに小沢氏に離党勧告をすべきである。小沢氏が勧告を受け入れない場合は、除名処分にし、政党としての規律を示すことを期待する」という意見を述べてきた。
同党は依然としてそうした対応をせず、小沢氏強制起訴という段階を迎えた。ここで離党勧告ないし除名を決定できるかどうか、民主党自体の政治倫理が問われている。
自民党を中心とする野党は、小沢氏の証人喚問を求めている。司法とは別に国会は氏を証人喚問し、事実関係を明らかにすべきである。小沢氏は、これに応じなければならない。裁判は裁判、国会は国会である。
刑事被告人・小沢氏一郎氏の政治家としての身の処し方には、①現状の地位の維持、②単独離党、③小沢擁護の議員とともに集団離党、④議員辞職の4つがある。現在のところ、小沢氏は、①すなわち民主党に所属し、かつ国会議員という地位を保ちながら、裁判に臨むという姿勢を表明している。そして、裁判で真実を語り無実を明らかにするという。
だが、私には、小沢氏の姿勢は、自己の保身と権力への執着にしか見えない。自分への嫌疑が本当に根拠なきものと確信しているなら、小沢氏は、とうにメディアを通じて国民への説明責任を果たし、また衆院政治倫理審査会でも証人喚問でも自ら積極的に出て、堂々と弁明しているだろう。それをせずに、強制起訴されたから裁判で争うというのは、そもそも政治家として正しい姿勢ではない。
小沢氏の政治の師、田中角栄氏は昭和51年、ロッキード事件で逮捕されると、自民党を単独離党した。私は、田中氏なりの倫理があったと思う。田中氏は、離党後外部から自民党に強い影響力を振るい、「闇将軍」と呼ばれた。小沢氏のもう一人の政治の師、金丸信氏は平成4年、東京佐川急便事件で略式起訴された。それをきっかけに金丸氏は議員辞職に追い込まれ、脱税容疑で逮捕された。辞職から3年半後、法廷闘争中に亡くなった。
小沢氏は田中氏・金丸氏の例を思い返し、自分に最も有利な道を取ろうと考えているに違いない。私は、小沢氏は単独なり集団なりで離党しても、政界を再編して政治を動かす力は残っていないと思う。また「闇将軍」となって民主党を外から操作する力も持っていない。新進党・自由党の時代の小沢氏は、今回明らかになったような手法で資金を集め、資産を増やし、そのカネの力で議員を束ね、動かしていた。しかし、現在の小沢氏は、もはやその手法を使えない。カネの力を失った小沢氏に、他に何の力が残っていると言うのか。権力のためには政治理念や政策を変えて恥じない金権政治家は、カネの力を失ったら、何の力も残りはしないのである。
今朝の全国紙は4紙とも社説で本件について書いている。読売は、小沢氏に議員辞職や自発的な離党を「真剣に検討すべき」と述べ、産経は「自ら進んで議員辞職すべきだ」、毎日は「最低限離党して、与党と一線を引くのが筋」、朝日は「自らしかるべく身を処すのが筋」と書いている。こうした各紙の見解は、国民の大多数の意見を反映したものだろう。
しかし、今なお小沢氏に対し、強いリーダーシップで混迷の日本を導いてくれるのではないかという期待を持っている人がいる。小沢氏ならアメリカに対抗して日本の国益を守ってくれるのではないか、国民の生活を第一とした政治をしてくれるのではないか、等々。これらは弱き大衆の願望に過ぎず、根拠なき幻想に過ぎない。
小沢氏はアメリカに対して多少は物申すだろうが、中国に対しては従中外交をするだろう。約600人を引き連れて訪中した際、民主党議員に胡錦濤主席と握手・撮影をさせ、自分は、人民解放軍の「野戦軍司令官」だと称した。小沢氏には、日本人としての誇りがない。中国の次期最高指導者と目された習近平氏の訪日においては、天皇陛下の特例会見をゴリ押しした。この不敬・横暴について、現在も全く反省がない。国民の生活が第一というのは、政権を取るために大衆をひきつけるキャッチフレーズに過ぎない。それほど国民の生活を思う政治家なら、国民の税金を原資としたカネを政党から政党へと持ち歩かないだろう。
小沢氏への幻想は、捨てるべきである。
民主党は、すみやかに小沢氏に離党勧告をすべし。小沢氏が勧告に応じなければ、除名とすべし。小沢氏は、国会議員の地位にとどまりたいのであれば、証人喚問に応じるべし。喚問に応じないならば、議員辞職すべし。
以下は、今朝の全国紙社説のうち、読売と産経のもの。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
●読売新聞 平成23年2月1日
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20110131-OYT1T01145.htm?from=any
小沢氏強制起訴 政治的なけじめをつける時だ(2月1日付・読売社説)
元秘書3人に加え、自らも刑事責任を問われる事態は、極めて重大だ。民主党の小沢一郎元代表には、政治家としてのけじめが求められよう。
小沢氏の資金管理団体「陸山会」の土地取引を巡る事件で、裁判所から検察官役に指定された弁護士が、小沢氏を政治資金規正法違反で強制起訴した。
検察の不起訴処分に対し、検察審査会が2度にわたり「起訴すべきだ」と議決したことによる。政治家の強制起訴は初めてだ。
小沢氏の起訴事実は、2004年に陸山会が都内の土地を購入した際の原資の4億円を政治資金収支報告書に記載しないなど、虚偽の記載をしたというものだ。
実際に会計処理をしたのは石川知裕衆院議員ら元秘書だが、小沢氏も事前に報告を受けて了承しており、共謀が成立する、というのが指定弁護士の主張である。
◆道義的な責任は重い◆
これに対し、小沢氏は強制起訴後、「何一つやましいことはない」と記者団に語り、法廷で無実を主張し、争う方針を表明した。「引き続き民主党国会議員として誠心誠意取り組む」とも述べ、離党や議員辞職を否定した。
強制起訴について小沢氏は、「検察によって有罪の確信を持って行われる起訴とは全く異質なものだ」と主張した。
刑事裁判の「無罪推定の原則」が通常の起訴よりも強く働き、政治活動の自由がより保障されるべきだ、という独自の論法だ。
しかし、現職の国会議員が法廷に立たされることは重い意味を持つ。刑事被告人が政権党の中で、隠然と影響力を行使することが果たして許されるのか。各種世論調査で、多くの国民は強い疑問を示している。
特に小沢氏の場合、石川議員を含む元秘書3人が政治資金規正法違反で起訴されている。その政治的かつ道義的な責任は重い。
石川議員は起訴後、民主党を離党した。小沢氏についても、菅首相が「政治家としての出処進退を明らかにすべきだ」と語るなど、党内外には、議員辞職や自発的な離党を求める声が少なくない。
小沢氏は、そうした政治的なけじめをつけることを真剣に検討すべき時ではないか。
小沢氏がこれまで、国会での説明責任を果たそうとしてこなかったことも、問題である。
小沢氏は昨年末、自ら記者会見し、衆院政治倫理審査会への出席を表明した。ところが、「予算成立が一番大事で、国会審議を促進するなら」といった条件を付け、出席を先送りし続けている。
結局、自己保身の論理を優先したということだ。
民主党執行部の対応も、厳しく問われている。
◆証人喚問が欠かせない◆
菅首相や岡田幹事長は、通常国会召集前の政倫審開催の議決を目指したが、小沢氏を支持する民主党議員らの抵抗などで、断念せざるを得なくなった。
小沢氏の国会招致は昨年6月の菅政権発足以来の懸案だ。首相は今年の年頭記者会見でも、「政治とカネの問題にけじめをつける年にする」と明言している。
それなのに、党内の意思統一さえ図れず、政倫審を開けないようでは、まさに「有言不実行」である。政権としての問題解決能力に疑問符がつく。
小沢氏が政倫審出席という民主党の方針に従わない以上、菅首相は、野党の要求する小沢氏の証人喚問に同意し、国会招致の実現に積極的に動くべきだ。小沢氏に対する離党勧告などの重い処分も、検討に値しよう。
小沢氏の公判の焦点は、捜査段階で小沢氏の関与を認めた石川議員らの供述調書の評価だ。検察は「具体性に欠ける」と評価しなかったが、検察審査会は「信用性がある」と、起訴議決の根拠として重視している。
これに対し、石川議員らは「取り調べで誘導があった」と主張し、調書の任意性や信用性を徹底的に争う構えを見せている。
◆法廷で真実を語れ◆
検察官役の指定弁護士は、供述を補強する状況証拠を積み重ね、示していく必要があろう。
小沢氏は、検察審査会について「秘密のベールに包まれ、民主主義国家の中で特異な制度だ」などと繰り返し批判している。
だが、検察審査会は、審査補助員の弁護士の助言を受け、法と証拠に基づいて判断している。3人の指定弁護士も、3か月にわたり補充捜査を重ねてきた。
小沢氏の批判は、検察審査会制度の趣旨を理解しないもので、行き過ぎだろう。
小沢氏の公判は、夏以降に始まると予想される。小沢氏は「公開の法廷で全国民が分かるまで真実を述べる」と明言した。その言葉を誠実に実行すべきだ。
(2011年2月1日01時19分 読売新聞)
●産経新聞 平成23年2月1日
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110201/stt11020103100003-n1.htm
小沢氏強制起訴 やはり議員辞職しかない 国民代表の結論無視するな
2011.2.1 03:09
小沢一郎・元民主党代表が強制起訴された。自らの資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる政治資金規正法違反(虚偽記載)罪による。
国会で疑惑への説明責任を果たさず、政治的かつ道義的責任にも真摯(しんし)に向き合おうとしなかった。国民の判断で刑事訴追されたことを小沢元代表は重く受け止め、自ら進んで議員辞職すべきだ。
強制起訴は東京第5検察審査会の起訴議決を受けて検察官役の指定弁護士が行った。強制起訴について元代表は「一般の検察、捜査当局の起訴とは異質だ。引き続き民主党の国会議員として誠心誠意取り組む」と述べ、離党や議員辞職を否定した。だが、強制起訴は通常の検察官による起訴と法律上何ら差異はない。
◆検審制度批判は問題だ
陸山会事件で、元代表の秘書だった石川知裕衆院議員は起訴後に民主党を離党したほか、加藤紘一元自民党幹事長は事務所代表の所得税法違反事件の責任をとって離党、議員辞職した。こうした責任の取り方は政治家として最低限の義務である。
菅直人首相や民主党は小沢元代表に議員辞職を促すなどし、「政治とカネ」の問題に厳正に対処する姿勢を示さねばならない。
検審制度は検察官が独占する起訴の権限に民意を反映させる目的で設けられた。強制起訴を可能にする改正検察審査会法は平成21年5月に施行された。民主党も賛成したことを忘れてはならない。
小沢元代表は検審制度を軽んじる発言を繰り返してきた。昨年9月の民主党代表選では「強制力を持った当局が捜査して何もなかったということについて、一般の素人がいいとか悪いとか言う検審の仕組みがいいのか」と語った。
明らかな制度批判である。なかでも、国民から無作為に抽出された検審審査員を「一般の素人」と言い切ったのは、国民軽視の発言というほかない。審査員は検察庁から提供されたすべての捜査資料を読み込み、精査し、真剣に討議を重ねたうえで「起訴議決」の極めて重い結論を導いた。決して軽んじられる存在ではない。
検審は、検察の取り調べを「形式的で、十分な再捜査が行われたとは言い難い」と批判した。「有罪判決を得られる高度の見込みがあることが必要」とする検察側の説明にも「こうした基準に照らしても、本件で嫌疑不十分として不起訴処分とした検察官の判断は首肯し難い」と断じた。これが国民の代表の結論だった。
今回の事件では虚偽記載が20億円を超えるなどしており、検察の存在意義が問われたことも東京地検特捜部は認識すべきだ。
検審はさらに、土地購入の原資となった「小沢元代表からの借入金4億円」を平成16年分の収支報告書に記載しなかったことも「犯罪事実」に加え、元代表の説明について「著しく不合理で到底信用できない」と指摘した。
「4億円」は指定弁護士による起訴事実にも犯罪事実として盛り込まれた。審査員が「信用できない」とした4億円について、納得のいく説明が求められる。
◆証人喚問には応じよ
加えて小沢元代表には、起訴事実以外にも説明責任を果たす必要がある。例えば一昨年の衆院選で、元代表は陸山会を通じ、民主党の立候補予定者91人に計4億4900万円を資金提供したことが政治資金報告書から判明した。旧新生党の資金が原資に充てられたとみられているが、この疑問にも答えていない。
政治家としての倫理に時効はなく、法解釈の抜け道もない。今後進められる刑事裁判だけが求められる真相解明の場ではない。議員の立場であろうがなかろうが、証人喚問などで説明責任を果たすことが引き続き求められる。
元代表は「公開の法廷で真実を述べる」と、証人喚問などには消極姿勢を示した。岡田克也幹事長は党の処分について「元代表自らの判断が前提」と語った。議員辞職どころか離党勧告さえ躊躇(ちゅうちょ)するなら、自浄努力のなさを証明するようなものである。
問題は菅首相だ。首相は年頭会見で小沢元代表の強制起訴に言及し、「裁判に専念されるべきだ」と述べたが、31日夜には「岡田幹事長を中心に協議する」と語った。自発的に議員辞職を促したことも忘れているようでは、国民は首相に信を置けない。
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関連掲示
・拙稿「小沢氏には最低の倫理もない」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/d/20101010
・拙稿「尖閣~小沢氏の不敬・従中が影響」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/d/20101118
私はこれまで「民主党に自浄能力があるならば、すみやかに小沢氏に離党勧告をすべきである。小沢氏が勧告を受け入れない場合は、除名処分にし、政党としての規律を示すことを期待する」という意見を述べてきた。
同党は依然としてそうした対応をせず、小沢氏強制起訴という段階を迎えた。ここで離党勧告ないし除名を決定できるかどうか、民主党自体の政治倫理が問われている。
自民党を中心とする野党は、小沢氏の証人喚問を求めている。司法とは別に国会は氏を証人喚問し、事実関係を明らかにすべきである。小沢氏は、これに応じなければならない。裁判は裁判、国会は国会である。
刑事被告人・小沢氏一郎氏の政治家としての身の処し方には、①現状の地位の維持、②単独離党、③小沢擁護の議員とともに集団離党、④議員辞職の4つがある。現在のところ、小沢氏は、①すなわち民主党に所属し、かつ国会議員という地位を保ちながら、裁判に臨むという姿勢を表明している。そして、裁判で真実を語り無実を明らかにするという。
だが、私には、小沢氏の姿勢は、自己の保身と権力への執着にしか見えない。自分への嫌疑が本当に根拠なきものと確信しているなら、小沢氏は、とうにメディアを通じて国民への説明責任を果たし、また衆院政治倫理審査会でも証人喚問でも自ら積極的に出て、堂々と弁明しているだろう。それをせずに、強制起訴されたから裁判で争うというのは、そもそも政治家として正しい姿勢ではない。
小沢氏の政治の師、田中角栄氏は昭和51年、ロッキード事件で逮捕されると、自民党を単独離党した。私は、田中氏なりの倫理があったと思う。田中氏は、離党後外部から自民党に強い影響力を振るい、「闇将軍」と呼ばれた。小沢氏のもう一人の政治の師、金丸信氏は平成4年、東京佐川急便事件で略式起訴された。それをきっかけに金丸氏は議員辞職に追い込まれ、脱税容疑で逮捕された。辞職から3年半後、法廷闘争中に亡くなった。
小沢氏は田中氏・金丸氏の例を思い返し、自分に最も有利な道を取ろうと考えているに違いない。私は、小沢氏は単独なり集団なりで離党しても、政界を再編して政治を動かす力は残っていないと思う。また「闇将軍」となって民主党を外から操作する力も持っていない。新進党・自由党の時代の小沢氏は、今回明らかになったような手法で資金を集め、資産を増やし、そのカネの力で議員を束ね、動かしていた。しかし、現在の小沢氏は、もはやその手法を使えない。カネの力を失った小沢氏に、他に何の力が残っていると言うのか。権力のためには政治理念や政策を変えて恥じない金権政治家は、カネの力を失ったら、何の力も残りはしないのである。
今朝の全国紙は4紙とも社説で本件について書いている。読売は、小沢氏に議員辞職や自発的な離党を「真剣に検討すべき」と述べ、産経は「自ら進んで議員辞職すべきだ」、毎日は「最低限離党して、与党と一線を引くのが筋」、朝日は「自らしかるべく身を処すのが筋」と書いている。こうした各紙の見解は、国民の大多数の意見を反映したものだろう。
しかし、今なお小沢氏に対し、強いリーダーシップで混迷の日本を導いてくれるのではないかという期待を持っている人がいる。小沢氏ならアメリカに対抗して日本の国益を守ってくれるのではないか、国民の生活を第一とした政治をしてくれるのではないか、等々。これらは弱き大衆の願望に過ぎず、根拠なき幻想に過ぎない。
小沢氏はアメリカに対して多少は物申すだろうが、中国に対しては従中外交をするだろう。約600人を引き連れて訪中した際、民主党議員に胡錦濤主席と握手・撮影をさせ、自分は、人民解放軍の「野戦軍司令官」だと称した。小沢氏には、日本人としての誇りがない。中国の次期最高指導者と目された習近平氏の訪日においては、天皇陛下の特例会見をゴリ押しした。この不敬・横暴について、現在も全く反省がない。国民の生活が第一というのは、政権を取るために大衆をひきつけるキャッチフレーズに過ぎない。それほど国民の生活を思う政治家なら、国民の税金を原資としたカネを政党から政党へと持ち歩かないだろう。
小沢氏への幻想は、捨てるべきである。
民主党は、すみやかに小沢氏に離党勧告をすべし。小沢氏が勧告に応じなければ、除名とすべし。小沢氏は、国会議員の地位にとどまりたいのであれば、証人喚問に応じるべし。喚問に応じないならば、議員辞職すべし。
以下は、今朝の全国紙社説のうち、読売と産経のもの。
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●読売新聞 平成23年2月1日
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20110131-OYT1T01145.htm?from=any
小沢氏強制起訴 政治的なけじめをつける時だ(2月1日付・読売社説)
元秘書3人に加え、自らも刑事責任を問われる事態は、極めて重大だ。民主党の小沢一郎元代表には、政治家としてのけじめが求められよう。
小沢氏の資金管理団体「陸山会」の土地取引を巡る事件で、裁判所から検察官役に指定された弁護士が、小沢氏を政治資金規正法違反で強制起訴した。
検察の不起訴処分に対し、検察審査会が2度にわたり「起訴すべきだ」と議決したことによる。政治家の強制起訴は初めてだ。
小沢氏の起訴事実は、2004年に陸山会が都内の土地を購入した際の原資の4億円を政治資金収支報告書に記載しないなど、虚偽の記載をしたというものだ。
実際に会計処理をしたのは石川知裕衆院議員ら元秘書だが、小沢氏も事前に報告を受けて了承しており、共謀が成立する、というのが指定弁護士の主張である。
◆道義的な責任は重い◆
これに対し、小沢氏は強制起訴後、「何一つやましいことはない」と記者団に語り、法廷で無実を主張し、争う方針を表明した。「引き続き民主党国会議員として誠心誠意取り組む」とも述べ、離党や議員辞職を否定した。
強制起訴について小沢氏は、「検察によって有罪の確信を持って行われる起訴とは全く異質なものだ」と主張した。
刑事裁判の「無罪推定の原則」が通常の起訴よりも強く働き、政治活動の自由がより保障されるべきだ、という独自の論法だ。
しかし、現職の国会議員が法廷に立たされることは重い意味を持つ。刑事被告人が政権党の中で、隠然と影響力を行使することが果たして許されるのか。各種世論調査で、多くの国民は強い疑問を示している。
特に小沢氏の場合、石川議員を含む元秘書3人が政治資金規正法違反で起訴されている。その政治的かつ道義的な責任は重い。
石川議員は起訴後、民主党を離党した。小沢氏についても、菅首相が「政治家としての出処進退を明らかにすべきだ」と語るなど、党内外には、議員辞職や自発的な離党を求める声が少なくない。
小沢氏は、そうした政治的なけじめをつけることを真剣に検討すべき時ではないか。
小沢氏がこれまで、国会での説明責任を果たそうとしてこなかったことも、問題である。
小沢氏は昨年末、自ら記者会見し、衆院政治倫理審査会への出席を表明した。ところが、「予算成立が一番大事で、国会審議を促進するなら」といった条件を付け、出席を先送りし続けている。
結局、自己保身の論理を優先したということだ。
民主党執行部の対応も、厳しく問われている。
◆証人喚問が欠かせない◆
菅首相や岡田幹事長は、通常国会召集前の政倫審開催の議決を目指したが、小沢氏を支持する民主党議員らの抵抗などで、断念せざるを得なくなった。
小沢氏の国会招致は昨年6月の菅政権発足以来の懸案だ。首相は今年の年頭記者会見でも、「政治とカネの問題にけじめをつける年にする」と明言している。
それなのに、党内の意思統一さえ図れず、政倫審を開けないようでは、まさに「有言不実行」である。政権としての問題解決能力に疑問符がつく。
小沢氏が政倫審出席という民主党の方針に従わない以上、菅首相は、野党の要求する小沢氏の証人喚問に同意し、国会招致の実現に積極的に動くべきだ。小沢氏に対する離党勧告などの重い処分も、検討に値しよう。
小沢氏の公判の焦点は、捜査段階で小沢氏の関与を認めた石川議員らの供述調書の評価だ。検察は「具体性に欠ける」と評価しなかったが、検察審査会は「信用性がある」と、起訴議決の根拠として重視している。
これに対し、石川議員らは「取り調べで誘導があった」と主張し、調書の任意性や信用性を徹底的に争う構えを見せている。
◆法廷で真実を語れ◆
検察官役の指定弁護士は、供述を補強する状況証拠を積み重ね、示していく必要があろう。
小沢氏は、検察審査会について「秘密のベールに包まれ、民主主義国家の中で特異な制度だ」などと繰り返し批判している。
だが、検察審査会は、審査補助員の弁護士の助言を受け、法と証拠に基づいて判断している。3人の指定弁護士も、3か月にわたり補充捜査を重ねてきた。
小沢氏の批判は、検察審査会制度の趣旨を理解しないもので、行き過ぎだろう。
小沢氏の公判は、夏以降に始まると予想される。小沢氏は「公開の法廷で全国民が分かるまで真実を述べる」と明言した。その言葉を誠実に実行すべきだ。
(2011年2月1日01時19分 読売新聞)
●産経新聞 平成23年2月1日
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110201/stt11020103100003-n1.htm
小沢氏強制起訴 やはり議員辞職しかない 国民代表の結論無視するな
2011.2.1 03:09
小沢一郎・元民主党代表が強制起訴された。自らの資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる政治資金規正法違反(虚偽記載)罪による。
国会で疑惑への説明責任を果たさず、政治的かつ道義的責任にも真摯(しんし)に向き合おうとしなかった。国民の判断で刑事訴追されたことを小沢元代表は重く受け止め、自ら進んで議員辞職すべきだ。
強制起訴は東京第5検察審査会の起訴議決を受けて検察官役の指定弁護士が行った。強制起訴について元代表は「一般の検察、捜査当局の起訴とは異質だ。引き続き民主党の国会議員として誠心誠意取り組む」と述べ、離党や議員辞職を否定した。だが、強制起訴は通常の検察官による起訴と法律上何ら差異はない。
◆検審制度批判は問題だ
陸山会事件で、元代表の秘書だった石川知裕衆院議員は起訴後に民主党を離党したほか、加藤紘一元自民党幹事長は事務所代表の所得税法違反事件の責任をとって離党、議員辞職した。こうした責任の取り方は政治家として最低限の義務である。
菅直人首相や民主党は小沢元代表に議員辞職を促すなどし、「政治とカネ」の問題に厳正に対処する姿勢を示さねばならない。
検審制度は検察官が独占する起訴の権限に民意を反映させる目的で設けられた。強制起訴を可能にする改正検察審査会法は平成21年5月に施行された。民主党も賛成したことを忘れてはならない。
小沢元代表は検審制度を軽んじる発言を繰り返してきた。昨年9月の民主党代表選では「強制力を持った当局が捜査して何もなかったということについて、一般の素人がいいとか悪いとか言う検審の仕組みがいいのか」と語った。
明らかな制度批判である。なかでも、国民から無作為に抽出された検審審査員を「一般の素人」と言い切ったのは、国民軽視の発言というほかない。審査員は検察庁から提供されたすべての捜査資料を読み込み、精査し、真剣に討議を重ねたうえで「起訴議決」の極めて重い結論を導いた。決して軽んじられる存在ではない。
検審は、検察の取り調べを「形式的で、十分な再捜査が行われたとは言い難い」と批判した。「有罪判決を得られる高度の見込みがあることが必要」とする検察側の説明にも「こうした基準に照らしても、本件で嫌疑不十分として不起訴処分とした検察官の判断は首肯し難い」と断じた。これが国民の代表の結論だった。
今回の事件では虚偽記載が20億円を超えるなどしており、検察の存在意義が問われたことも東京地検特捜部は認識すべきだ。
検審はさらに、土地購入の原資となった「小沢元代表からの借入金4億円」を平成16年分の収支報告書に記載しなかったことも「犯罪事実」に加え、元代表の説明について「著しく不合理で到底信用できない」と指摘した。
「4億円」は指定弁護士による起訴事実にも犯罪事実として盛り込まれた。審査員が「信用できない」とした4億円について、納得のいく説明が求められる。
◆証人喚問には応じよ
加えて小沢元代表には、起訴事実以外にも説明責任を果たす必要がある。例えば一昨年の衆院選で、元代表は陸山会を通じ、民主党の立候補予定者91人に計4億4900万円を資金提供したことが政治資金報告書から判明した。旧新生党の資金が原資に充てられたとみられているが、この疑問にも答えていない。
政治家としての倫理に時効はなく、法解釈の抜け道もない。今後進められる刑事裁判だけが求められる真相解明の場ではない。議員の立場であろうがなかろうが、証人喚問などで説明責任を果たすことが引き続き求められる。
元代表は「公開の法廷で真実を述べる」と、証人喚問などには消極姿勢を示した。岡田克也幹事長は党の処分について「元代表自らの判断が前提」と語った。議員辞職どころか離党勧告さえ躊躇(ちゅうちょ)するなら、自浄努力のなさを証明するようなものである。
問題は菅首相だ。首相は年頭会見で小沢元代表の強制起訴に言及し、「裁判に専念されるべきだ」と述べたが、31日夜には「岡田幹事長を中心に協議する」と語った。自発的に議員辞職を促したことも忘れているようでは、国民は首相に信を置けない。
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関連掲示
・拙稿「小沢氏には最低の倫理もない」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/d/20101010
・拙稿「尖閣~小沢氏の不敬・従中が影響」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/d/20101118
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