ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

改憲論17~安保法制で何が改善されたか

2018-05-31 13:26:47 | 憲法
5.安全保障関連法制による改善

(1)安保法制で何が改善されたか

 安全保障関連法制は、国会での激しい論議の末、平成27年(2015年)9月30日に成立した。平和安全法制とも呼ばれる。安全保障関連法制は、平和安全法制整備法と国際平和支援法の総称である。以下、安保法制と略称する。
 安保法制は、安全保障に関する10の既存法を改正し、1の新法を制定したものである。以前の既存法は、つぎはぎのため切れ目があり、一貫性・整合性がなかった。そこで既存法を一括して改正する平和安全法制整備法案を提示した。また、それまで国際平和活動は特措法で対処してきたのを改め、恒久法とする国際平和支援法案も同時に提示した。これらを合わせた安保法制が、国会で賛成多数で成立した。
 こうしてできた安保法制の内容は、日本の平和と安全に関するものと、世界の平和と安全に関するものに分けられる。主な事柄を挙げる。

①日本の平和と安全に関するもの。

<1> 有事への対処
 自衛権を行使するのは、「我が国に対する武力攻撃が発生したこと、又は我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」事態に限るとした。これを「存立危機事態」と呼ぶ。
 わが国への武力攻撃には従来通り、個別的自衛権を行使するが、新たに、日本が中国等に侵攻された時や朝鮮半島等で戦争が起こった時を想定し、集団的自衛権を限定的に行使できるようにした。それによって、戦争抑止力を高めることを狙っている。
 集団的自衛権の限定的行使として武力を行使するのは、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃」が発生した場合で、わが国にとって「明白な危険」があるとともに、「他に適当な手段がない」こと、「必要最小限度」の範囲であることという三つの要件を満たす必要があるとした。それゆえ、この場合の武力行使は厳しく限定されている。

<2> 有事でも平時でもない中間的事態への対処
 警察・海上保安庁が警察行動を行う平時でも、自衛隊が防衛出動する有事でもない中間的な事態に対処できるようにした。

<2-1> グレーゾーン事態への対処
 武力攻撃を受けるまでには至っていないが、国家の主権が侵害されている事態をグレーゾーン事態と呼ぶ。漁民を装った武装集団が離島へ上陸した場合などがこれにあたる。こうした事態では緊急な判断が必要であるとして、速やかな臨時閣議開催が困難なときは、首相の主宰により、電話等により各閣僚の了解を得て閣議決定することとした。

<2-2> 重要影響事態への対処
 日本有事や周辺有事ほど深刻ではないが、放置すれば日本の平和と安全に重要な影響を与える事態を、「重要影響事態」と呼ぶ。従来の「周辺事態」を「重要影響事態」に改め、「日本周辺」の概念を外した。自衛隊が地理的な制約なしに活動でき、また米軍以外の国々の軍隊をも後方支援できるようにした。

<3> 平時の活動
 海外でテロに襲われた日本人を自衛隊が救出に行けるようにした。当該国の同意があれば、その国の警察・軍隊とともに救出活動を行う。

②世界の平和と安全に関するもの。

<1> 国際平和共同対処事態
 国際社会の平和と安全を脅かし、日本が協力する必要がある事態を「国際平和共同対処事態」と呼ぶ。国際平和共同対処事態では、「国際平和支援」の活動のため、自衛隊が多国籍軍などを後方支援することができるようにした。自衛隊の派遣は、国連総会か国連安全保障理事会の決議を要件とした。

<2> 駆けつけ警護
 日本人NPO職員・他国軍等に対する「駆けつけ警護」ができるようにした。従来、武器使用は正当防衛・緊急避難による自己保存目的に限っていたが、任務遂行目的の使用を可能にした。

<3> 人道復興支援
 人道復興支援は、国連決議がない場合でも、EU等の国際機関の要請があれば、自衛隊を派遣するとした。

 以上が安保法制の主な内容である。

 次回に続く。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿